見出し画像

酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第49回「昼酒の仕上げに寄った浜松町の名酒場」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

一人酒ができなくなって幾歳月・・・ついに再開の日を迎えた。が、本当の一人酒はこれからだ。さあ、体験談エッセイを書こう。タイトルは、酔いどれ男のさま酔い飲み歩記。第49回「昼酒の仕上げに寄った浜松町の名酒場」である。


はじめに

東京二十三区は広い。酒場は数限りなくある。店もピンからキリで、入ってみなければわからないが、名酒場と呼ぶ店は数少ない。その一つが浜松町にある。東京モノレールの始発駅というだけで寄っていたまちだったが・・・

その名酒場だけが目的で東京に来たわけではないが、いつかは来訪してみたいと思っていたチャンスが巡ってきた。直行したいところだが、営業時間の都合で寄り道が必要となった。まあいいだろう。繰り返すが酒場は無限にあるのだからな。

そろそろお昼。飲み始めるとするか。

上野「肉の大山」~コロッケかメンチか

本日の昼酒は上野界隈からスタートする。口開けは「肉の大山」から。ここはレストランなのだが、入り口には立ち飲みスペースがあり、イートインが利用できる。土日はいつも長い行列ができるので敬遠してきたが、平日なので並ばずに済んだ。

とはいっても、レストランはランチの客で満席・・・それならイートインしかない。生ビールを飲むことは確定していたが、やみつきコロッケかやみつきメンチか迷った。両方とも美味そうである。

どっちもビールにはピッタリだからいいや。

昼下がりのビールとコロッケは美味い。オープンなので通りの様子もよく見える。道向かいには開店間もない酒場があり、店員が盛んに呼び込みをしていた。この通りは大衆酒場が居並ぶ激戦区。戦いに勝ち抜くのは容易ではないな。

秋葉原「B1グランプリ食堂」~ご当地グルメを手軽に

肉の大山で一杯飲んだあと、いつもの私なら激戦区のなかから酒場を選んで入っているだろう。ただ、本日の気分はちょっと違う。クライマックスに浜松町の名酒場が控えている。上野でベロベロに酔っぱらうわけにはいかない。

ほろ酔い気分で上野から御徒町の繁華街を歩くのは楽しい。ついついフラリと吸い寄せられそうな酒場もある。でも足は御徒町、さらに秋葉原へと向かっている。秋葉原駅ガード下に話題の飲食ゾーンができたのを思い出したのだ。

その名も「B1グランプリ食堂」

ここは、B級グルメグランプリにエントリーしている全国のご当地グルメをキッチンカーで提供している。八戸せんべい汁、十和田バラ焼き、津山ホルモンうどん、富士宮焼きそば、甲府鳥もつ煮・・・どれも美味そうじゃないか。

ガッツリ食べたくはないなと思い、選んだのは埼玉県行田のゼリーフライ。簡単に言うと、おからとジャガイモをメインにしたコロッケ風のものである。ただし衣は付いていないので、コロッケよりもさっぱりとしている。

ここもイートインで、ゼリーフライとレモンハイを持ってテーブル席に陣取る。話題性は十分だが、飲み歩いているような客は皆無。やっぱりご当地グルメは、その土地に行って食べてこそ価値がある。旅行しようぜ、旅行を。

B1グランプリ食堂は時期限定企画だったようで、間もなく終了した。

新橋「こひなた」~気だるくゆるりと過ごす立ち飲み

徐々に浜松町に近づいた方がいいと思い、新橋で途中下車する。言わずと知れたサラリーマンの聖地であるが、昼酒のできる店も多い。怪しげな店にも引かれそうになるのだが、ここは無難に立ち飲み「こひなた」にしておこう。

縄のれんをくぐると先客は2人。カウンターにはおばちゃんが1人。目の前にある大皿料理のなかから、好物のタケノコの煮つけを頂戴し、ホッピーセットと合わせる。ホッピーが冷えておらず、氷入りのグラスに注ぐと泡がブクブク・・・まあ、いいか。

こひなたはキャッシュオンデリバリーで、しかも肴が安いのがウリ。気だるい昼下がりとあってか、客同士もおばちゃんも会話を交わすことなく、テレビのワイドショーを見ながらゆるゆると過ごしている。私もその一人だ。

おかげで時間をつぶすことができた。さあ、いよいよクライマックスへ向かうぞ。

浜松町「秋田屋」~名酒場の高清水と美味い肴

こひなたでゆるりと過ごしていたつもりだったが、浜松町駅に降り立ったのは名酒場開店の20分前。気がせいているのか、昂揚しているのか。帰りに乗ることになる地下鉄大江戸線の大門駅の場所を確認し、トイレを済ませてから名酒場に向かおう。

名酒場の名は「秋田屋」と言う。

開店5分前に来たら、男性が1人待っていたので後ろに並ぶ。開店時間が近づくにつれ、私の後ろにも並ぶ人が現れ、あっという間に10人ほどが行列を作った。平日の夕方なのに、さすがは人気がある。行列の主は、開店と同時に店内に吸い寄せられていった。

秋田屋で日本酒と言えば、秋田の名酒・高清水だけ。この一本勝負という潔さ。しかも焼酎は置いていないのだから徹底している。もちろん高清水の冷酒を注文する。

肴は、店の看板メニューである「たたき」、それから谷中ショウガ。たたきと言っても魚料理ではなく、豚肉のミンチに軟骨をまぜた串焼きで、仕込みに手間がかかるため一人一本限定とのことだ。むろん、早い時間でなければ売り切れ必至である。

人心地ついたところで店内を見渡すと、すでに満席になっている。平日の夕方だからと、おっとり刀で来ていたら待たされる羽目になっていた。厨房には大女将がドンと腰を据え、店員にテキパキと指示を出したり、料理を作ったりしている。

老舗ならではの光景だな。

もう一品いただこう。しゃれた居酒屋にはまず置いていない「新島のクサヤ」にするか。クサヤには癖のある芋焼酎がお似合いだが、秋田屋には焼酎がない。必然的に高清水と合わせることになるが、高清水とクサヤもなかなか良い組み合わせだ。

名酒場「秋田屋」。評判通りというか、それ以上の酒場だった。ごちそうさま。


今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2016年6月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。

★店舗情報などを載せています→ブログ「ひとり旅で一人酒」

★ひとり旅のヒントやアドバイス、全国各地の見どころなどをご案内!
「ひとり旅で全国を巡ろう!旅道楽ノススメ」→note連載中の「酔いどれ男のさま酔い飲み歩記」もヨロシク!
【新着記事】札幌で極楽の海の幸巡り


noteでは連載コラム、エッセイをほぼ毎日書いています。フリーランスのライターとして活動中ですが、お仕事が・・・ご支援よろしくお願いいたします!