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私だけの特捜最前線→44「手配107・凧をあげる女!~母と子の愛情と憎しみが交錯する辛口のストーリー」

※このブログはネタバレがあります

第152話「手配107・凧をあげる女!」は、塙五郎脚本の神髄ともいえる非常に重苦しいドラマです。その主役となったのは母親(有吉ひとみ)と下半身が不自由で車いすを使う子供(少年、おそらく中学生くらい)。

「憎しみが生きる力になる」

母親が事件に巻き込まれ瀕死の重傷を負います。時を同じくして、母親は子供を障がい者施設に入所させることを決めていたのです。母親が死んだら自分は生きていけないと思った少年は自殺を図ってしまいます。

母親は結婚式場で働く一方、裏では売春婦をしていました。桜井刑事(藤岡弘、)は、売春組織の男の取り調べのようすを少年に聞かせます。母親の裏の顔を知った少年は、母親に激しい憎しみを持ってしまいます。

なぜ、少年にそんなひどい仕打ちをしたのか。憤る高杉婦警(関谷ますみ)に対し、桜井に代わって神代課長(二谷英明)がこう言います。「人を救うのは、愛情だけでなく、憎しみもある」

神代は、目の前で娘を銃殺された過去がありました。「私は犯人を憎んだ。その憎しみが私を支えてくれたのだ」と振り返り、母親への「憎しみ」が少年の生きる力になってほしいと願うのです。

ただ、神代は「危ない橋でもある」とも言っています。もしかすると、その憎しみがとんでもない方向に向かってしまうかもしれない。桜井のとった行動に、全ての責任を自分が負うという覚悟を見たのでしょう。

母親の本心を知らされない少年

ストーリーは、さらに辛口になっていきます。母親は昔の愛人と再会し、男に貢ぐために売春をしていたのです。その男に刺されて瀕死の重傷を負い、治療の甲斐なく亡くなってしまいます。

桜井に向かって母親が最後に口にした言葉・・・「私は男と一緒になりたかった。だから、子供を捨てようとした」。つまり、施設へ入所させようとしたのは、子供と決別し、男を選んだからだったのです。

母親に憎しみを持った少年は、母の死を悲しむことなく、施設の車に乗り込みます。その車中で、母親の形見である家計簿の中から、一枚の切符を見つけました。施設のある新潟までの切符だったのです。

「母親は自分を見捨てたわけではない」・・・そう思った少年は、桜井にこのことを告げます。少年の語り口から、母親への憎しみが消えたことを悟った桜井でしたが、硬い表情を崩しませんでした。

なぜなら、その切符は桜井が用意した「偽装工作」だったのです。

書いているだけでも重苦しくなるようなストーリーで、特捜最前線おなじみの「後味の悪いドラマ」です。中島みゆきの「この空を飛べたら」がBGMで使われており、ドラマの重さに一層拍車をかけています(苦笑)

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