酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第87回「出張に便乗して東京都内で飲む」
「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。
withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第87回「出張に便乗して東京都内で飲む」である。
はじめに
仕事柄、めったに出張することはない。それでも、同じ年に2度も東京へ出張する機会に恵まれたことがあった。仕事優先なのは言うまでもないが、せっかく会社都合で東京へ行けるのだから、便乗させてもらおう。
5月と9月の東京出張。5月の時は前日に休暇を取って前泊、9月の時は仕事後に日帰りせず泊まって翌日休暇というパターン。5月の出張便乗はまずまずの飲み歩きだったが、9月には想定外のことが起きてしまったのだ。それはいったい何か?
まずは5月の飲み歩きから書くとしよう。
新橋「羅生門」~ガード下の喧騒感に包まれて
最初に言い訳しておくが、宿泊料金まで会社に請求したわけではない。基本的には日帰り出張扱いだったので、往復の交通費分しか手当されない。あくまでも自腹なのだ。
本題に入ろう。5月の出張は前日から東京入りし、レジャーを楽しんでから夕方新橋で飲み歩きを開始。宿泊場所には蒲田を選んで予約しており、最終的には蒲田入りすることになるわけだが、新橋はその前段というところだな。
口開けでやって来たのは、新橋駅近くのガード下にある居酒屋「羅生門」。山手線と京浜東北線のガードなので、ひっきりなしに電車が通過する。そのせいか、客同士の会話もデカい声になり喧騒感たっぷり。悪く言えば「騒々しい酒場」なのだ。
しかも店員はそろいもそろって体育会系。
まずは瓶ビール。それから「すぐに出せるから」と煮込みを勧められ、そら豆と一緒に注文。焼き物は「しのえ焼き」と皮。しのえ焼きって聞いたことないけど、ものは試しに頼んでみた。出てきたのは手羽餃子だった。
焼き場で串を焼いているのが大将らしく、他の店員もすべて男たちで威勢がいい。ただ一人、初老っぽい新人店員の手際が悪く、しょっちゅう大将から怒鳴られている。はじめは「しょうがないなあ」と思っていたが、何度も怒鳴り声を聞かされるとウンザリする。
だからといって、孤独のグルメの井の頭五郎にように、大将に啖呵を切る度胸はないけどな(苦笑)
新橋「へそ本店」~そういえば大阪の京橋店はどうなった?
次は密かにチェックしていた酒場に寄るつもりだったが、あいにく満席で入れず。金曜日の夜だから仕方ない。界隈をブラ歩きしながら、見つけたのが「立呑処へそ新橋本店」。一見満席っぽかったが、辛うじて一角空いていたので潜り込む。
兄さん店員にドリンクセットを勧められたが、サッと飲むつもりだったので遠慮し、緑茶割りを注文。それからネットで情報を得ていたカレー味の煮込みを頼んだのだが・・・「今は作っていないんですよ」と兄さん。それじゃあ仕方ないな。
代わりにバリキャベツとタケノコの肉みそ炒めを頼もう。立ち飲みかつお手頃な値段なので、安心して飲み食いできる。立錐の余地のないほど酔客で埋まっているのも分かるぞ。
「へそ」といえば大阪の京橋にも出店していたなあ。
店内をぐるりと眺め、串カツがメニューに載っていたので思い出した。京橋といえば大阪でも屈指の立ち飲み激戦区である。値段の安さではおそらく太刀打ちできないはずだが、後で調べてみると京橋店はしっかりと営業を続けているようだ。
サッと飲み終え、先ほどの兄さんに勘定をしてもらう。兄さんは「今度、カレー味作っておきますね」と一声。こんなにたくさんの客が入っているのに、さっきの会話を覚えていたとは。なかなかヤルなあ。
蒲田「かるちゃん」から「三州屋本店」へ
新橋で軽く飲むつもりが、結構酔ってしまった。蒲田までの京浜東北線乗車中がインターバルとなり、蒲田で仕切り直し。時間も時間だったので、行き慣れているところで立ち飲み「かるちゃん」に入る。
ここは記念すべき、私の立ち飲みデビューの酒場。
カウンターの一角に陣取り、まずは日本酒。肴には肝焼きともろキュー。数人の男性客がテレビ中継のボクシングを見ながらスポーツ談義に花を咲かせている。ほかにお客はおらず、何だかポツンとつまはじきになったかのように飲んでいるぞ。
相撲談義になったところで、ムリヤリ会話に加わろうとした・・・が、続かず断念。スポーツの世界ではないが「きっとアウエーっていうのは、こういう感じなのだろうな」とボヤく。かるちゃんには悪いが、店を変えさせてもらうよ。
続いて訪れたのは、JR蒲田駅西口近くにある居酒屋「三州屋本店」。なかなか渋めの店構えで、店内も落ち着いた雰囲気でいい。カウンターに座り、日本酒とドジョウの丸煮を注文。
ドジョウとは粋だし、お江戸の酒場っぽい。
実はこの店、創業以来70年ほどになるという老舗。あの吉田類さんも訪れている名店だった。当時、そんなこととはつゆ知らず、しかも4軒目のはしご酒だったので、ほかに注文もできず、店を後にする羽目に。
後日閉店したと聞き、再訪かなわず残念だなあ。
9月は王子飲み歩き・・・だが、台風直撃のあおりを受け
9月の出張では、王子に宿を取った。王子からなら赤羽、上野にも近く、どこで飲み歩いても楽しそう。おまけに翌日は休暇なので気兼ねなく飲めるはずだった・・・
が、好事魔多し!台風の直撃を受けてしまった。
都内のJR各線はすべて計画運休となり、地下鉄は動いていたが、いつ運休になるか分からない。つまり王子から一歩も動けなくなったのだ。しかも台風直撃のため、軒並み飲食店は臨時休業もしくは閉店時間を早めている。客が来ないのだから当然だな。
なんとか開いている店を探し、一軒目は「串カツでんがな」というチェーン店に入って、生ビールと関西風の串カツ(おつかれさまセット)で軽く飲み、二軒目は中華料理店「天安門」で紹興酒とピータン豆腐、豆苗和え物を頂戴した。飲めただけラッキーだったよ。
台風が最接近しないうちにホテルへ逃げ込むとするか。
〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2018年5月、9月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。
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→note連載中の「酔いどれ男のさま酔い飲み歩記」もヨロシク!
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