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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第88回「高松の夜酒のシメはやっぱり讃岐うどん」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第88回「高松の夜酒のシメはやっぱり讃岐うどん」である。


はじめに

香川県は「うどん県」の別名を持ち、県内のどこへ行っても讃岐うどんが食べられる。しかも手軽でリーズナブルなのだから嬉しい。そのせいか、はしご酒ならぬ「はしごうどん」を楽しむ観光客はたくさんいる。

私もはしごうどんをしたことがある。でも今回の高松行きは夜の飲み歩きがメインなので、やっぱりはしご酒だろう。高松市内のうどん屋は何軒か立ち寄っているが、酒場は初めて。香川県民の酒のシメはやっぱり讃岐うどん・・・なのかな?

本四連絡船で高松へGO!

高松「しるの店おふくろ」~一膳めし屋で飲む酒は美味し

昼間、源平合戦で有名な屋島を観光した。ここは歴史好きにはたまらない史跡。その話をし始めると長くなるので割愛するが、屋島の茶屋でおやつにいただいた「イイダコおでん」が肴にピッタリで、思わずビールを注文しかけたことだけは記しておく。

さあ本題に戻ろう。ホテルを出発し、飲食店が立ち並ぶエリアへと歩を進めた。口開けには、あらかじめピックアップしておいた店のなかから「しるの店おふくろ」を選んだ。酒場というよりは、昔流に言う「一膳めし屋」という感じ。その理由は?

注文の前に「ご飯かお酒か」を聞かれたからだ。

もちろん「酒を」と即答。次いで「生ビールお願いします」と。そのあとは肴。ご飯の人ならおかずのチョイス。メニューがなく、カウンターに並んでいる大皿料理やガラスケース内の魚のなかから注文するスタイルらしい。

サワラのあら炊きとカツオのたたきを注文してしばし待つ。大皿料理のサワラはすぐに出てきたが、店内が混んでいるためか、カツオはなかなか来ない・・・と思ったら、忘れられていた(苦笑)

怒ってもしょうがない。気を取り直して注文し直すか。

ビールも飲み干したので、カツオの再注文と一緒に琴平町の酒蔵・金陵の冷酒、そして、近くのご常連が「まんばのけんちゃん」という聞いたことがないような料理を注文していたので、私も便乗して頼んでみた。

まんばは「万葉」と書く高菜の一種で、ちょっと独特の風味がある。これを豆腐、油揚げとともに炒めた香川県の郷土料理。「けんちん」がなまって「けんちゃん」と呼ばれるようになったそうだ。なるほど、意外と奥が深いな。

ところでこの「しるの店」であるが、汁物を10種類前後取り揃えていることで有名だった。どうりで、最初に飯か酒か聞かれたわけだ。旅行後に知ったので如何ともしがたいのだが、ここの汁物をシメにしておけばよかったな。

高松「美人亭」~魚の美味しい小料理屋

しるの店おふくろは一膳めし屋らしい賑やかさがあった。2軒目は少し落ち着いて飲んでみたい。やって来たのは「美人亭」という興味をそそりそうな屋号。だが風俗店ではない。太田和彦氏が著書で紹介したことのある名酒場なのだ。

店はカウンターと小上がりの店内で、おかみさんと女性スタッフの二人で切り盛りしている。屋号の看板に「瀬戸内小魚料理」と記されていたなあ。見れば、ガラスケース内には新鮮な魚が並んでいるし、大皿料理もあるぞ。

ならば日本酒だ。ここでも金陵を頼むとするか。

肴に選んだのはハクサイとカキの炊き合わせ、それからタコぶつ。タコはもちろん瀬戸内産だろう。プリプリと身がしまっていて美味い。炊き合わせも日本酒にピッタリだ。

おかみさんやねえさん(もちろんスタッフのこと)の人柄もあるのだろうが、とても落ち着いた雰囲気で心地よい。カウンターに座る常連さんも、それぞれがマイペースで飲んでいる。自宅近くにあれば、私だって常連になってしまうかもしれないな。

一見なので控えめに静かに飲み、静かにお勘定してもらったとさ。

高松「あきない」~ご常連酒場は笑いの渦に

一膳めし屋、小料理屋ときたら、3軒目はオーソドックスな居酒屋がいいな。しるの店おふくろの界隈に酒場が点在していたのを思い出して戻ってみると、おふくろの前にはいまだに行列が・・・結構人気店なんだなあ。

と、その隣に良さげな店構えの居酒屋がある。

灯台下暗しとはこのこと。早速その居酒屋「あきない」へ。行列はないので、すんなりと店内に潜り込み、カウンターに陣取る。日本酒は飽きたからハイボールにするか。

ホワイトボードを眺めると、何と「マツタケ焼き」の文字。これは頼まねばならない。が、残念ながら品切れ。仕方がないので、サザエのつぼ焼き、それからナマコ酢にしよう。断っておくが、サザエもナマコも好物だよ。

この店は年配の店員さんばかりで、お客もご常連が多そう。焼き場で一生懸命焼いているのが、どうやらご主人のようだ。そのご主人、いじられキャラらしい。

「どんどん注文来ているよ。早く焼かないと間に合わないよ」。

隣に座るご常連からの一声。店内は爆笑の渦に包まれる。この空気がいいじゃないか。店員さんもテキパキ・・・とはいかないが、そのペースも含めて酒場の雰囲気を作り出しているんだな。それならもう一杯、麦の玉露割りをいただくとするか。

高松「鶴丸」~ようやく見つけたシメの讃岐うどん

3軒の酒場でしっかり飲んだ。そろそろシメにするか。飲んだらラーメンが定番だが、せっかくの高松なので讃岐うどんにしたい・・・でも、夜営業しているうどん屋は見当たらない。困ったなあ、と思っていたら営業中の店があった。

屋号は手打ちうどん「鶴丸」。

ここは深夜営業のうどん屋だという。これはありがたい。早速店内に潜り込み、カレーうどんをいただく。濃い目の味こそがシメに合うんだよなあ。ごちそうさま。

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2015年11月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。


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