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酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第83回「お好み焼きなら広島、そばめしは長田」

「一人酒」、それは孤独な酒飲みのように聞こえるだろうが、実はそうでもない。私は一人酒という言葉を酒場で飲み歩く時に使っている。にぎやかな雰囲気に包まれれば、その店に居る人は全員、飲み仲間だ。

withコロナでようやく一人酒が再開した。が、まだまだ心置きなく飲めるようになるまでの道のりは遠い。ならば、体験談エッセイでも書くとするか。酔いどれ男のさま酔い飲み歩記~第83回「お好み焼きなら広島、そばめしは長田」である。


はじめに

鉄板焼き文化を代表する食べ物といえば、真っ先にお好み焼きが浮かんでくる。そのなかでも広島のお好み焼きは、地元住民が日本一だと太鼓判を押し、最もメジャーなご当地グルメとしてお馴染み。だから、広島へ行ったらお好み焼きを食べなければいけない。

もう一つ、鉄板焼きで供される食べ物として「そばめし」を紹介したい。冷凍食品で販売されるようになったが、もともとは神戸市長田区のソウルフード。今回はちょうど広島と神戸を観光する。ご当地グルメを味わい尽くす絶好のチャンスじゃないか。

もちろん、ビールとセットするのは当然だよ。

宮島「くらわんか」~これも名物、カキが入ったお好み焼き

宮島の観光といえば世界文化遺産の厳島神社参拝がメイン。私が訪れた頃は、まだインバウンドの時代ではなかったので、外国人の姿はほとんど無かった。でも国内有数の観光地らしく、観光客はたくさんいて賑やかだったなあ。

午前中かけて厳島神社をじっくりとお参りしたのでお腹が空いた。さすがは広島県だけあって、島内にもお好み焼きの店が居並んでいる。そのなかの一軒「くらわんか」におじゃまする。何を置いてもお好み焼きを頼むしかないな。

それも「カキ入り」でいこう。

カキも広島の特産品であり、冬の今がちょうど旬。もちろん生ビールも忘れてはいない。これは冬であろうとも、熱々のお好み焼きにはピッタリなはずだよ。

カウンターと並行するように長く鉄板が敷かれている。親父さんが溶いた粉を広げ、キャベツなど野菜を焼き、その横で若いにいちゃん、ねえさんが、そばを焼いたり、卵焼きを焼いたりしている。どうやら分業制でお好み焼きを仕上げるようだぞ。

ドーンと出てきたカキ入りお好み焼き。さすがにボリュームたっぷりだ。小ぶりながらカキもたくさん乗っている。これは食べがいがあるな。大阪のお好み焼きのように一口では食べられず、具と粉と麺をバラバラと食べる感じ。それもまた良し。

ビール2杯目が入らないくらい満腹になったよ。

広島お好み村「山ちゃん」~ワンフロア丸ごとお好み焼き屋台!

夜は広島市内泊まり。もちろん夜の飲み歩きは繁華街へ繰り出すつもりである。広島の美味い物を肴にしようと考えているが、お好み焼きはパスする予定。昼に食べたボリュームを考えると、それだけで酒が飲めなくなりそうだからだ。

そんなわけで1軒目は瀬戸内彩食「いづみ」、2軒目は広島料理「西海」をチョイス。両店とも海鮮メインの和食が味わえる店。旬のカキなどを頼み、地酒でゆっくりくつろいだ。簡単な紹介で申し訳ないが、両店ともいい雰囲気の酒場だったよ。

3軒目はどこにしようかなと繁華街をさ迷い歩いていると・・・目の前に「広島お好み村」の巨大な電飾が現れた。なるほど、これが噂のビル全体がお好み焼き屋という場所か。話のタネにちょっとのぞいてみるか。

驚くなかれ、ワンフロア丸ごとお好み焼き屋台だった!

しかも、2階、3階、4階と同じようなお好み焼きフロアで、まさしくビル全体がお好み焼き一色に染まっている。これはスゴすぎる。各屋台の鉄板周りには客がギッシリ。よその土地では見ることができない圧倒的な光景である。

せっかく来たのだから1軒寄ってみよう。2階フロアの一番奥にある「山ちゃん」が良さそうだ。鉄板の前に座ると、おばちゃんが注文を聞いてきた。生ビールはよしとして、あのボリュームはムリ・・・と、おばちゃん「そば抜きにしましょうか?」と一声。

そうか、酒場使いならその手があるのか。そば抜きお好み焼きなら大丈夫だ。おばちゃんは慣れた手つきでお好み焼きを焼き、私の目の前の鉄板に運んできた。鉄板の上でコテを使って食べるのが屋台流だ。

そば抜きでもボリュームがありそうだったが、キャベツたっぷりなので見た目ほどではない。しかもビールとソースの相性が抜群。これは美味い。周りのお客さんたちも楽しそうに飲んでいる。まさに大人の社交場だな。

サイドメニューもあるし、最初からお好み焼き村でも大丈夫だったよ。

神戸長田「ゆき」~これぞ本家本元・長田のそばめし

翌日、広島から一路神戸へやって来た。ここでの昼のお楽しみは、長田区が発祥と言われる長田そばめしだ。そばめしとは、焼きそばと焼きめしを一緒に炒めたもの・・・簡単に言えばそういうことだが、ご当地グルメたるもの、そんな単純なはずはない。

やって来たのは商店街の中にある店「ゆき」。そばめしのほか、お好み焼きやたこ焼きもある。店内のテーブルには客用の鉄板が用意されており、そこへドッカと腰を下ろし、店のねえさんにそばめしと生ビールを注文した。

一見客は私だけで、ほかは地元のご常連さんやら家族連れやら。BGMに演歌を流している渋さ。まるで一昔前の食堂っぽい。やがて、ねえさんがチリトリのようなものにそばめしを入れ、運んできた。マイ鉄板に移されたのを見計らい、写真を撮ろうとすると・・・

やおら、ねえさんがソースをぶっかけてきた。

そして「このソースの泡立ちを入れて撮ったらええよ」と一声。なるほど、心憎いサービスじゃないか。今流に言うならばインスタ映えするってことだな。写真を撮っている間も、ソースの香ばしい匂いが漂ってくる。早く食おう。

肝心の味だが、細かく刻んだ焼きそばとご飯がパラパラしていて美味い。薄口に仕上げているので、お好みでソースをかけて、といったところかな。鉄板に乗っているので、パラパラ感はいつまでも残る。しかも熱々のまま。ビールが一層喉にしみいるぞ。

冷凍食品じゃあ、こうはいかない。まさに「似て非なる」とは、このことを言うのだろう。長田そばめし、覚えておいて損はないな。

今回は飲み歩記じゃあなく、ご当地グルメレポートになりました(笑)

〇〇〇
今回はここまでとします。読んでいただきありがとうございました。なお、このエッセイは2012年12月の忘備録なので、店の情報など現在とは異なる場合があります。


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