最後の手紙
僕がここに書いたことは忘れて欲しい。勝手だと思うが、今まで僕は自分で自分を押し殺して生きてきた。
それは病気で思うように身体が動かないせいだったかもしれない。どこか遠慮して不自由な生活を強いられたことで、人に気を使うようになり限界がきてしまった、壊れそうだった。
両親には本当に感謝している。僕を産み、育ててくれた。本当に本当に感謝している。
だけど、僕は不自由な身体だけど、心はもっと躍動的でうずうずしていた。僕の身体だけで判断して、何事にも挑戦させてくれない。これがしたいと言えば、身体の事を理由に手を出す前に完結させてしまう。
´´そうじゃない。僕はこの不自由な身体でどこまでできるか試してみたかったんだ´´
他にも色々言いたいことがあるが、あんまり悲しませるのもよくないと思うのでここらでやめておく。
あと二人に言いたいことがある。
僕には弟がいる。五つ離れた弟だ。何がムカつくって僕より背が高くて頭が良くて、人あたりもよくて、喋り上手。とにかく何でも僕の先を行くんだ。リハビリで好きになった理学療法士の美咲ちゃん。本気で好きだったのに、先に付き合いやがって。あの時は殺意が芽生えたよ。
だけど、僕の身体だけの理由じゃないだろうけど、医学部に受かった時はびっくりしたよ。お前は本当にやる男だ。僕の何倍も偉い。
なんか悪口にはならなかったな。
あと、もう1人、さやか。僕の恋人。いや、元恋人か。同じ病室で知り合って、辛い時、支えてくれた。君には希望をもらったんだ。だけど、僕より早く自分の病気を治して、他の男と付き合ってるって言われた時は驚いたのなんの。病室のベッドて語り合った日々は全部まぼろしとなってしまった。
僕は今まで黙ってきた。自分の欲望を語ることなんて恥ずかしいって。
だけど、この義足で生まれ変わった。自由に走れる。いや、羽ばたけるんだって。ここから始まる。僕の人生が。みてろよ。まずは、この足で海外に行きたいと思う。そこで何かがまた始まるだろう。そしてまたどこかで逢おう。最高な君らに出逢える事を期待して。ふさわしい自分に出逢えることを願って。
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