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出世って自分のためだけにするんじゃないんだからね

私はキャリアがテーマの集まりに行く時、機会があれば「みなさ〜ん、出世しましょう!出世してください!」って言ってます。なぜならば出世すると仕事が面白くなったりお給料が増えたりと自分にとって良いことも沢山ありますが、世のため人のためになることができるからです。

どういうこと?と思われた方のために、私がこのような考え方をするきっかけになった出来事をお話しします。

昔々その昔、東京のある飲み屋で私は定年が近い同僚男性と飲んでいました。彼は私に「僕はサラリーマンとしては比較的恵まれた人生を送ったと思う。でも唯一の後悔はもっと頑張って役職を取りにいかなかったこと。今周りに有能だと思う若い人達がいるけど、僕には権限がないから何もしてあげられない。もう少し権限のある職位に就いていたら、なんとかしてあげられたんじゃないかと思うんですよ。それが残念。」って言うのです。昭和の時代に一般職(それしか選択がなかった)で就職した私は、外資系の会社に勤めていたとはいえ労働環境は日本スタンダード。日本での私は平社員人生一直線が決まっていたような会社員生活だったので「ふーん、そうなんだ〜。残念っすね〜。」くらいにしか思わなかったのですが、アメリカに来て彼の言わんとしていたことがよく分かりました。

アメリカに来てお陰様で順調にキャリアの梯子とやらを登ることができ、私もめでたく自分のチームを持つ身になりました。いわゆる管理職ってやつですね。で、ついてきたのが人事に関する権限です。これは非常にパワーのある権限です。なにせ面接に来た誰を採用するのか、お給料はいくらあげるのか、チームで働いてくれている誰を昇格させるのか、どれだけ昇給させてあげるのか、面白いプロジェクトに誰を参加させるのか、などなど、決める権限が与えられるわけですよ。そうか、権限があるってこういうことなんだって、自分が人を選び評価する立場になって初めて分かりました。

話は少し逸れますが、日本で女性の登用が遅々として進まないのも、出世して権限を持つ女性の数の圧倒的な少なさにあると思っています。当たり前ですが権限がない人に決定権はありません。決定権のない人達の意見は聞かれても(まあガス抜きみたいなジェスチャーかもしれませんね)、最終的に決定するのは権限のあるポジションに就いている人たちなのです。一般的な日本の企業で、誰を採用するか、誰を昇進させるか、誰に一番ボーナスをあげるかなどなどの決定をする場に何人の女性が参加していると思いますか?そしてその決定の場でどんなことが決まっていると思いますか?男性しか決定権を持っていないから女性の社会進出が進まないとまでは言いませんが、かなり意識して女性登用を考えている人でないと自分と同じような人を登用したくなるのは人情というものです。マイノリティーを登用していくには戦略的に採用やキャリアパスを構築していく必要があると思うのですが、そうして立てられた戦略を承認するのも、やはり権限のある人達です。つまり、出世して権限のある地位につかないとできないことが多いのです。これは権限を持つことで比較的自由に仕事を進められるようになってから私が痛感した事実です。「会社というのはこういう仕組みでできているのか」と、心底思いました。この事実を認識できただけでも管理職になった甲斐があったと思います。

そして権限を持った私が何をしたかというと、積極的に有能(私から見てですが)な人をチームに採用し、実力を発揮してくれた人は昇格させお給料も大幅アップをしてあげました。いろんな研修や出張にも行ってもらいましたし、仕事の幅を広げる経験をさせてあげたと思います。まあ、その結果他社にヘッドハントされていったりしたんですけどね。それはアメリカあるあるなので、彼女達のキャリア形成を支援してあげたという風に考えています。お陰で元チームメイト達とは良好な関係で転職の際のリファレンスになってとお願いされたりもします。

結局何が言いたいかというと、出世して権限を持つと人のキャリア形成、つまりは、より良い人生を築くことを助けてあげることができるということです。人は人に対してしたことはあまり覚えていないけど、されたことは覚えているものです。私も今までのキャリアを振り返って、転機となった機会を与えてくれた人達のことはよく覚えています。そして私は誰かにとって「助けてもらったな〜」って思われる人になりたいと思って管理職をやってきました。将来の有望な人材のキャリア構築の支援をしたいなって思う人は、是非出世して権限を持って世のため人のためになることをしていただきたいと思います。そうしたことで世の中は良い風に少しずつ変わっていくんじゃないでしょうか。

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