三位一体、心ゆくまで味わって。
「うぁぁぁぁぁぁあ!!!!!まっ、えっっあっ今何時!?!?!」
勢いよくはね起きた私は直ぐさま目覚まし時計を確認した。
時刻は午前10時半。
「こ、れは、、まずい、非常にまずい…」
朝っぱらから騒々しい、それもそのはず今日は和菓子屋巡りをする予定。
何度も言う様で申し訳無いのだが、和菓子屋の朝はマジのマジで早い。いくらおじいちゃんおばあちゃんの朝が早いからと言っても早すぎる開店時間。しかもその日の分が完売したら再度造られることなく営業終了、のれんは下げられる。和菓子の優しい甘みからは到底想像できない、すこぶるシビアな世界が広がっているのを読者は知っているだろうか。
入手困難にも程があるが、常に在庫ストックを抱え欠品対応万全な現代社会とのギャップがあるからこそ、私たちは心を動かされているのかも知れない。
一か八か。
10時には完売すると言われているが、たまにはこんな博打の休日だって悪くない。
いつもにましてポジティブシンキングな私はなんとなく寝癖を整えて、カメラを首からかけて家を出た。
―
Yahoo!乗換案内で「最短ルート」かつ、乗換時間は「急ぐ」で検索をかけた結果…
うん、12時☆
もう笑いがこみ上げてくるような時刻に、白目をむいてしまいそうだ…。
店の最寄りは白金高輪駅と泉岳寺駅。どちらから降りても徒歩10分。
もし和菓子屋が店じまいをしていたら余りにも悲しいので、泉岳寺の観光も兼ねて、私は泉岳寺駅で降りることを決める。
―
「おおお~~~~!!ここが泉岳寺駅か…!!」
いくつになっても初めての土地は興奮する。
港区という割には下町情緒溢れる町並みで、出口をでてすぐに有名な「泉岳寺」が現れた。お寺周りも商業ベースは一切感じず、小さなお土産店が1つ、二つ。
赤穂浪士が祀られているだけに、混沌とした空気はどこか冷たく、武士の「義」を感じざるおえない。こんなにも月日が流れ、都市開発も進んでいるだろうに、観る者にこんな感情を沸き上がらせる環境を守っているのは凄い。
和菓子屋目がけ、歩き進める間にも歴史と暮らしが見事に調和されていて、とても暮らしやすそうな場所にうっとり。
そんな感動もつかの間、
「次の角を右折。目的地に到着です。」
というGoogleマップの声に、私は一気に現実世界へと戻された。
人はどんなに期待していなくとも、その場に行くとさっきまで蓋をしていた期待という欲望が露わになってしまう。
はぁ、はぁ、はぁ
走る、走る私の足。
交差点を右折。
色あせた、赤と白の縞模様の屋根。
はためく暖簾が私を呼んでいる。
「あった・・・・!」
―
「・・・・。」
現在12時半。
もしや私は今年で死ぬのかも知れない。
お目当てだった、三種類の大福がそれぞれ2つずつ残っていた。
開店と同時に列を作るこの大福が、
みんな予約してまで確保する大福が。
この時間まで残っている事実が受け止めきれない。
嬉しさのあまり、私は両手で顔を覆った。
先々週投稿した川崎屋のちゃんこ鍋同様、私は美味いもののために人生の運をゴリゴリ消費している気がしてならないのだが・・・
いや本望だけどね???!!!!(大歓喜)
颯爽に暖簾をかき分けて、少しドヤ顔で注文した。
「残ってる物、全部ください!!!」
―
家族の分も含めて買えるとは思っていなかったためにこの上ない安心感…、と言うよりも安堵感。
しみじみと、大福の入ったビニール袋を1人掲げて立っている。
様々な大人達がこぞって進めたこの大福は、一体どんな味がするんだろう。
今食べようか、帰って食べようか。
私の頭を駆け巡るこの二択。
大福に限らず、餅を使ったものは時間が経てば経つほど固くなる。しかし、それは裏腹に、「つきたてお餅を使用している」という素晴らしい証拠でもある。
大抵スーパーで売られている大福は白玉粉がブレンドされていて、良くも悪くも、時間が経っても伸びのいい皮となっている。
しかーーーし!固くなることは消してマイナスではない。
なぜならば、「固くなった大福の美味しい食べ方 」が存在するからだ。
固くなった大福を、トースターで焼き目が付くか付かないかぐらいまで温めめる。すると出来たての柔らかさが復活し、さらに表面がすこし焼かれたことによる香ばしさをハフハフしながら楽しめる。
お餅100%だからこそできる冬場の焼き大福はほっぺがとろけるほどおいしいんだ。
え??こんなやり方初めて聞いたって?
もしかしたら私の家だけの食べ方かも知れないが、ひと味もふた味も違った大福の楽しめ方として推奨したい!
けれどけれど、
焼き大福をする時は、決まってお土産で頂く時ばかり。
う~~~~ん・・・・。
よし!!!!!!!!!!!!!
新鮮なものは新鮮なうちにだ!!!!!!!!!
お会計をするときに、賞味期限は本日中。早めにお召し上がりくださいとのことだった。
一番近くのコンビニまで小走りで向かい、ウェットティッシュと綾鷹を購入。テキパキとその場で食べる支度を始める姿は、近隣住民からしたらさぞかし不気味だったことだろう。
輪ゴムで止められた容器を開けて、
少し曇ったビニールをめくれば三種類の大福が現れた。
右から順に、きび大福、豆大福、草大福。
はぁあぁぁぁ・・・・!!!おいしそう・・・・・!!!
まずは、ここは店のイチオシ豆大福から頂こう。
パラパラ落ちる粉には目もくれず、むにっと持ち上げるだけで形の変る柔らかさに釘付け。
かわいいねぇ、かわいいねぇ…/////////
赤ちゃんほっぺを想起させる大福に、ただならぬ母性を醸しだしているのは日本で私だけだろう。
はむりっ・・
私は思わず、口の周りに白い粉をまき散らしながらその場で固まった。
ま、まて、、美味すぎやしないか・・・・・!?
ファーストインプレッション、その一口を飲み込むまでの間に激しい感動が津波の様にドバドバ押し寄せた!!!!
まず刺激を感じたのはえんどう豆。あっちにもこっちにも、満遍なく等間隔で存在するえんどう豆は何もかもが丁度良い。口に入れたときの数、大きさ、適度な硬さ。
なにより驚いたのが、
豆がな、
豆がプッチとはじけたのだ。
またまた~~~~(笑)ブドウじゃないんだからそんな食感、、あるんです。
あるんです!!!!!!!(大きな声)
いや~~~豆も弾けたい時あるだな・・・。
踊るように弾ける先は、蒸かし立てのサツマイモの様なほくっと感。
優勝、豆大福の豆で優勝。
と、言いたい所だが、感動はまだ続く。
弾力を感じつつも薄めな餅皮を噛みちぎればあんこ到達。
このあんこが豆餅にパァァフェクトマッッチングッッッ!!!!!!
自宅であんこを作ったものならば、あんこのうま味を最大限引き出せる水分比率をたたき出すことがいかに難しいかわかるだろう。
飛ばしが甘いとびちゃびちゃに、とばしすぎちゃうとボッソボソになってしまう。そんな以外とデリケートなあんここそ、和菓子の命。
あんこを食べれば店のクオリティーが代替わかってしまうものなのだ。
ちなみにあんこは、粒。
はい!!!!!いまここで「粒あんか~~~・・・」って肩を下ろした人~~~~挙手挙手挙手!!!!
粒あん嫌いがこぞって言うのが「皮のざらつきが邪魔」って意見。
私も前はそうだったからよくわかる!!!!
驚かないで聞いて欲しい、この大福は「漉し餡か!?」と思うぐらい、雑味とはほど遠いお上品な粒あんだ。ここまで口当たりのよい粒あんが、他にあっただろうか。いや私は知らない。粒あん好きというよりは、粒あん嫌いに食べさせたい。
しかも~塩気~塩気美味すぎん~~~~?
塩ってほんとに凄い調味料だと思わない??
居酒屋定番の「枝豆」も塩気があるなしで美味さが変ってくるように、美味さの底上げを仕掛けているのは確実に「塩気」だと言えよう。
もっぎゅもっぎゅもっぎゅ
ゴッックン。
悪いが私はまだまだ食べるぞ。
なんてったって今日の朝ご飯兼昼ご飯を担うのはこの大福達だ。
次はこの黄色がかわいいきび大福。
桃太郎さん~ 桃太郎さん〜♪
お腰につけたきび団子~♪
一つわたしに下さいな〜♪
の、きびで間違えない。
こんなにも童謡で馴染みがある素材でも、生まれて20年。1度だってきびを食したことは無い。むしろきび団子は、ワンピースの「ゴムゴムの実」
の様に、桃太郎にでてくる空想の食べ物だと思っていた節がある(大問題)。
お餅に淡い黄色を着色したきびよ…そなたをつまんだ今この瞬間でさえ、味の想像はこれっぽちもできてないぞ…
はぁ~まぐっっ!
・・・ん?
んぐぐぐ!?!?!?//////////
ぶっちゃけきびは一口食べただけではどんな味か分からなかったが、3口目を過ぎると虜になっている自分が不思議でなかった。
きび独特の雑穀の甘みはしつこくなく、どこか懐かしい味わい。餅皮は大福に比べてやや厚め、よりもっちりした食感が楽しめる。さらに皮にはツブツブしたきびが混ぜ込まれているのを発見。
こういったアクセントはそそられる!もし私が桃太郎からこのきび大福で鬼退治へと誘われたらホイホイついて行ってしまうだろう。
私個人としては、豆大福のようなインパクトや驚きに勝ることは無いが、他の和菓子屋でもそうそう見かけることの無いきびの出会いは、私の舌をまた1つ大人にしてくれた。私はこれで、きびとは一体何なのかを伝えられるようになったのだ!
自分でも怖いぐらいに大福へと伸ばす手が止まら、ない…!!
最後は草団子。
草団子はなんと言っても深緑が美しいな~~~!
うん、触った感じでできびと同じタイプのモチモチ感、皮厚め。
はぁムッ…っムム????
えーーーー?????いやもうなんで???なんで草がこんなに美味しい???
青臭さよりも爽快で、清らかな草大福。この3種の中で最もさっぱりといただけるだろう。草の苦みはあまり感じずに、抹茶のような苦みの中にある甘みが大人味。
そこら辺に生えている草を混ぜたところで同じ味になるわけ無いのだが、草大福を食べた後は決まって雑草が愛おしく思えてくる。どの角度からもの申しているのかわからないが、私は10年50年先も草団子が食べたいから、今後も自然環境を守っていきたい。
「はーうまい。」
食べながら、小さい頃を思い出した。
家の前にたくさんヨモギが生えていて、摘んだヨモギでお母さんと草団子を作った。なんで草?草って食べられるの??と、心中でいろんなハテナが飛び交ったが、完成した草団子がすっごく美味しくてまた驚いて。
この草大福とは到底比べものにはならないが、あの大福も美味しかったものとして、私の中で残っている。
―
東京には鯛焼きやどら焼き同様に、「東京三大大福」というものが存在する。この店に加え、『原宿に潜む、白い雪。』の回で登場した瑞穂もその1つ。残るはあの店のみ。こちらもいつか、この場を借りて皆さんに紹介していきたい。
大福に包まれているのはあんこなのか、それとも歴史なのか、はたまた人間模様のか?!生まれた起源が古ければ古いほど、「美味しい」だけでは片付けきれない秘密が隠されていると私は思う。
そう考えると、
老舗と同じ時を歩めているだけでも奇跡に近いをこの境遇を、無駄になんてできるはずが無い!!!
次の休みはどこに行こうか。
すこし頑張って早起きをして、交通費をかければこうも簡単に歴史に触れられる。
そんな素晴らしい時代に生きれている今が、私は幸せでならない。
今日行った店は「松島屋」でした。
今回のお題は「大福」だよ!
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