【出来立て格別!】大切な人に贈りたくなる、私イチオシの「どら焼き」。
「ぱぱ~!みてみて!うさぎさん!かわいねぇ~~!」
小さな手に収まりきらない大判どら焼きを、まるで水戸黄門の紋所かのように見せつける私。
スーツをハンガーにかけている帰宅直後のお父さんは、
「よかったなぁ」
と言って、私の頭をくしゃくしゃ撫でた。
―
私がここのどら焼きを知ったのは、随分幼かった。
お父さんが大好きだった私は、「ただいまー」と声に条件反射して、玄関目がけて一目散。いつもなら「おかえり!」と抱きつくのだが、仕事用のバックに加え紙袋を持っている時に限り話は別だ。
「ぱぱ!これおみやげ?おいしいの?」
「そうだy…ってちょ!!!!!あ”ぁあああ!!!!!」
「わぁ~~~~~~~~い!!!!!!!おみやげおみやげ~~~~!!」
幼い子供というものは、時に非道過ぎるぐらい自分の欲求に素直なもんだ。お父さんには目もくれず、紙袋を強奪して居間に持ってった。
無我夢中でビリビリと乱暴に包み紙を剥がし、蓋を開けた時だった。
「わぁぁ…!!!!//////」
思わず手が止まり、感動の声を漏らす。
箱一杯に「うさぎ」、いや、うさぎ柄の「どら焼き」か。
当時一番好きだったものはアンパンマンでもぽぽちゃんでもキティちゃんでもなく「うさぎ」だった私はこれがたまらく嬉しかった。
先に行って置くが、けして形がうさぎな訳では無い。
どら焼きを包む透明フィルムに、お月見に出て来るようなうさぎの絵がプリントされていた。茶色いどら焼きの皮に白く伸びたうさぎの耳。この綺麗なコントラストは今でも脳裏に焼き付いている。
そしてこれがまたとてつもなく美味しかった!!!!!!!!
なにがどうだったかはわからない(笑)だけど、「美味しい」をダイレクトに感じたものだった。
この頃は、両親が買ってくるお店なんて覚えていなかった。常に与えられる側だったからか、また買ってきてくれたら良いな。そのぐらいに思っていた。
―
大学生になってから、美術館巡りが私の趣味になった。
昔から両親に連れられて訪れてはいたものの、主体的に行くようになったの最近だ。
特にここ、上野にはかなりお世話になっている。
なんてたって圧倒的施設量!!!
駅出てすぐの上野恩賜公園内には、東京国立博物館、国立西洋美術館、国立科学博物館、上野の森美術館や東京都美術館などに咥え、東京芸術大学だってある。
これはもう、「日本の芸術所」と言っても過言ではないだろう。
そして私は運が良いことに、東京在住。
少しの運賃と観覧料を払えば、「本物」を見ることが出来るのだ。こんな境遇、2、3回転生しても得られはしない(笑)
だから私は月に一度、必ず上野に足を運ぶ。
今も国立西洋美術館にて開催されていた【ハプスブルク展】を見てきたところだ。ヨーロッパの歴史において著しい功績を残し脚光を浴びたハプスブルク家の骨董品や絵画は、見る者をその時代へと引き込む力を持っていた。
そして、麗しい美術に触れた後、私が必ず行くどら焼き屋こそが本日のメインディッシュ!
私が上野で一番好きな和菓子屋だ。
上野恩賜公園を抜け、大通り沿いを10分。
その店にたどり着く間にも、どら焼き片手に上野を散策する人とすれ違うのがまた嬉しい。
私も初めてここのどら焼きを買った時は、まだすこし温かいどら焼き片手に、ぶらぶら街を歩いていたな。
おっ、そろそろ見えてきた!
時刻は丁度正午を指す。
昼ご飯は一切提供していないのに、この時間にこの賑わいはさすが老舗どら焼き屋。次から次へと接客をする様はいつもと変わらぬ光景だった。
ここのどら焼きはそりゃもう美味い。
だからなのか、
自宅用に買う人だけでなく、仕事先に手土産にしていくのだろうか、ビシッとしたせびろをきたサラリーマンも多い。
私は家族へ5つ。寧ねいに包装してくれるため、今食べるためだけに紙を破くのはいささか勿体ない。だからいつも、今食べるように1つは別に手渡しをしてもらうんだ。
終始ビニール袋に顔を入れ、なんとも言えない甘くて美味しい香りに癒やされながら、上野恩賜公園へと帰って行く。
公園にはたくさんのベンチがあるから、冬場はなるべく日当たりの良い所に座ると良いだろう。
箱の上に置いておいた、むき出しのどら焼き1つをそっと持ち上げる。
ほんのり温かければ今日の任務は成功だ。
うん、大丈夫。
何も書かれていない無地の透明フィルムを剥がし、太陽に照らされたどら焼き。銅の様に光るその様は思わず天に掲げてしまう。
はむっっ
くぅ~~~~~~、、、、うまっっっっっっ……/////////////////////
もう何十回もこの感覚を味わっているはずなのに、感動は薄れを知らない。
出来立てのどら焼きというものは、美味いの極地。まるでふわふわのパンケーキにサンドされている様だ。しかしエアリーすぎることはなく全てが丁度いい。
そしてこのあんこっっっっっっ…////反則だ!良くない!美味しすぎて良くない!!!!///////////////
生地に挟まれたばかりのあんこはとんでもなくみずみずしい。「水っぽい」んじゃない、「みずみずしい」だ。
固形感は一切感じることはなく、舌の上でとろけるような、やさしい口当たり。このあんこと出会ってしまうと、世の大半のどら焼き餡が固めに感じてしまうだろう。
甘さはいうまでも無いが甘すぎない。
世間で大成している和菓子屋および全ての甘味・スイーツにおいて甘すぎる物は無いと私は思う。「甘さ」は塩気同様、極力抑えられている物の方が、素材本来の風味引き立る素晴らしい役割を果たす。
とろっとしたあんこにしっとりふわふわの生地。
う~ん、、、たまらない♡
どら焼きを持つ私の握力も、自然と優しくなってしまうのが面白い。
一口、そしてまた一口と噛みしめるうちに、先ほど見た芸術が頭に浮かび、忙しない日常からの完全離脱。心地よい時間が流れていくのがわかる。
この時間は実に優美だ。
ごちそうさまでした。
家族の分に買ったどら焼きがまだ残っているが、食いしん坊のわたしでもこれには手を付けない。
だってこれは、小さな時にお父さんが買ってきてくれた、思い出のどら焼きだから。
え?そうなの?と疑問に思った方もいるだろう。
確かに私のどら焼きにはうさぎの模様は存在しなかった。
しかし、この店は上野の他にも店を持ち、店主の息子さんが「日本橋」、娘さんは「阿佐ヶ谷」といったように、それぞれ店を構え、店名は同じでも少しずつ味や包装方法が異なっているそうだ。
昔父が買ってきてくてたのは娘さんの阿佐ヶ谷店。女性ならではの、店名にかけた可愛らしいうさぎ模様がトレードマークだ。
そんなことも知らずに、私がたまたまお土産として買って帰ってきた時は、父が目を丸くしていたのを覚えている。
「これを買ってきた時は、ひかりはまだ幼稚園生だったなぁ…本当に大きくなったなぁ」
優しい顔でぽろりとこぼしたその言葉には、色んな思いが込められているように感じたのはきっと気のせいでは無いだろう。
今はこんな風に、お土産を買って帰れる場所や人がいることがどれだけ恵まれているかがわかる。
大切な人には自分も納得できる「本物」を贈ろう。
値段に関わらず、「美味しい」は世代を超えて心に残る。
だって、
どら焼き一つで幸せになれることを、私は知っているから。
さてさて、みんなが大好きなこのどら焼きを持ち帰って、今日見た絵の話で食卓を囲もうか。
今回行ったお店は「うさぎや 上野広小路」でした。
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