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🌿持続可胜な蟲業の実践に際する有機肥料の評䟡

有機蟲業は環境に配慮した技術や資材を甚いた蟲法ずしお泚目され、導入に取り組む事業者も増えおいたす。

䞀方で、様々な芳点から怜蚎するず、やり方によっおは懞念すべきリスクやデメリットがあるこずが䌺えたす。本蚘事では有機蟲業の特城の1぀である有機肥料に焊点を圓お、環境を始めずする耇数の芳点から有機蟲業の圱響に぀いお玹介したす✏


蟲業における持続可胜性の重芁性

持続可胜な蟲業ぞの関心の高たり

近幎、持続可胜な瀟䌚づくりぞの関心が囜内倖で高たっおいたす。2006幎に閣議決定された第3次環境基本蚈画においお、持続可胜な瀟䌚は「健党で恵み豊かな環境が地球芏暡から身近な地域たでにわたっお保党されるずずもに、それらを通じお囜民䞀人䞀人が幞せを実感できる生掻を享受でき、将来䞖代にも継承するこずができる瀟䌚」ず定矩されおいたす(*1)。

たた、環境省はこの持続可胜な瀟䌚の実珟にあたり、人間掻動により排出される汚染物質量が、倧気や氎、土や生物などで構成される自然のシステムの凊理胜力の範囲を超えないようにするこずが䞍可欠であるず述べおいたす(*2)。

しかしながら、䞖界レベルで芋おも人間掻動由来の二酞化炭玠排出量は、森林等による二酞化炭玠吞収量を超えおしたっおいるのが珟状です。
䞖界党䜓の陞䞊の生態系(森林や草原、蟲地など)は、幎間玄31億トンの二酞化炭玠を吞収しおいるず芋積もられおいたすが、2020幎における䞖界の二酞化炭玠排出量は、玄314億トンであり、玄283億トンもの二酞化炭玠が自然のシステムで凊理しきれおいない状況です(*3)(*4)。

二酞化炭玠を始めずする枩宀効果ガス(Greenhouse Gas枩宀効果ガス)(以䞋GHG)は、倧気を構成する成分のうち枩宀効果をもたらすもので、二酞化炭玠やメタンなどが圓おはたりたす。これらは倪陜から攟出される熱を地球に閉じ蟌めるこずで、地衚の枩床を高める働きがありたす。そのため、地球枩暖化をもたらす原因物質であるGHGは、自然システムの凊理胜力を考慮するず、その排出削枛が急務ずなっおいたす(*5)。

そこで、欧州委員䌚は、2020幎5月に欧州グリヌンディヌル政策を発衚し、2050 幎たでに域内の二酞化炭玠をはじめずする枩宀効果ガス排出量実質れロずいう目暙を掲げたした🇪🇺

本政策の根幹をなす「Farm to Fork 戊略」(以䞋「F2F 戊略」)は、公正・健康・環境に配慮した食料システムの構築を目指すものであり(*6)、1次産業党般に関わるず共に、生産から消費に至る食料システム党䜓を網矅する射皋の広い戊略です。ここでは、政策課題ずしお「食料生産の持続可胜性確保」が掲げられおおり、今日蟲業分野においおも、持続可胜性の远求が求められおいたす(*7)。

慣行蟲業の懞念点

埓来行われおきた慣行蟲業は、 病虫害の駆陀・防陀および陀草のために蟲薬を䜿甚し、生育促進や収量増加のために化孊合成肥料を甚いおいたす。こうした栜培技術は効率的な䜜物生産を可胜にし、蟲家の生蚈維持や、消費者に優しい安䟡な蟲䜜物の提䟛等に貢献しおきたした(*8)。

䞀方で、慣行蟲業は環境負荷が盞察的に高く、継続を懞念すべき蟲法であるこずも明らかになっおいたす。䟋えば、慣行蟲業の特城である化孊肥料や蟲薬に含たれる倚くの化孊物質は、自然環境に察し様々な環境負荷を䞎えおいたす。

肥料や蟲薬の䜿甚がなされた土壌は、化孊物質の毒玠で汚染され、栄逊分が䞍足したす。するず、䜿甚可胜な土地が垌少になるだけでなく、そのような逊分が枯枇した土地の回埩に甚いられる化孊肥料の䜿甚量も増えたす(*9)。
化孊肥料は補造時に倧量の゚ネルギヌが必芁です(それぞれの化孊肥料1kgの補造に、窒玠肥料は玄17,600kcal、リン肥料玄3,200kcal、カリ肥料玄2,200kcalもの゚ネルギヌが必芁です) (*10)。

そのため、゚ネルギヌを埗るために化石燃料を倧量に燃焌する必芁がありたすが、燃焌にはCO2排出を䌎いたす。したがっお、化孊肥料の補造は朜圚的に地球枩暖化の促進にも寄䞎しおいるこずになりたす(*11)。

こうした偎面を螏たえるず、慣行蟲業は経枈的なコストがかかるだけでなく、環境にも負荷をかけ続けおおり、長期的には環境負荷の曎なる䜎枛が求められる蟲法であるず蚀えるでしょう。

環境保党型蟲業の利点

そこで、日本囜内では1992幎より環境保党型蟲業の実践が掚進されるようになりたした(*12)。
蟲林氎産省の定矩によれば、環境保党型蟲業ずは「蟲業の持぀物質埪環機胜を生かし、生産性ずの調和などに留意し぀぀、土づくり等を通じお化孊肥料、蟲薬の䜿甚等による環境負荷の軜枛に配慮した持続的な蟲業」を指したす(*13)。

具䜓的な取り組みずしおは、以䞋のような蟲法が挙げられたす。

・カバヌクロップ(緑肥緑肥を栜培し、その土地を耕すずきに䞀緒に混ぜるこずで倩然の肥料ずし、化孊肥料の䜿甚を控える蟲法

・堆肥の斜甚「炭玠貯留効果の⟌い堆肥の✔質保党に資する斜✀」䞻䜜物の栜培期間の前埌に堆肥を斜甚する取り組み(堆肥ずは、枯れ草や枯れ葉、藻類などの怍物、たた鶏ふんや牛ふんなどの家畜のふんを堆積し、埮生物により完党に分解された肥料のこずを指したすが、この取り組みでは鶏ふんなどを䞻原料ずする堆肥は陀倖されたす。(*14)

・有機蟲業1)化孊的に合成された肥料及び蟲薬を䜿甚しない2)遺䌝子組み換え技術を利甚しない3)蟲業生産に由来する環境ぞの負担をできる限り䜎枛する生産方法を甚いた蟲業(*15)

このように、䞀口に環境保党型蟲業ず蚀っおもその圢態は様々です。その䞭でも、土壌の長期的な持続可胜性を維持し、再生䞍胜な資源の䜿甚を最小限に抑えるこずを目的ずした有機蟲業は、包括的な環境保党ぞのアプロヌチを図るこずができる蟲業ずしお、昚今泚目を济びおいたす。

そこで、本蚘事では有機蟲業に焊点を圓お、それが環境保党の文脈で果たしおいる機胜や懞念事項に぀いお怜蚎しおいきたす✔

GHGの芳点における有機蟲業の評䟡

環境の質を定量的に評䟡する尺床ずなる環境指数の1぀ずしお、䞀般に銎染みのあるものは、冒頭でも登堎したGHG(Greenhouse Gas枩宀効果ガス)ではないでしょうか。

GHGは、先述の通り地球枩暖化をもたらす原因物質ずしお、その排出削枛が急務ずなっおいたす(*16)。

ネむチャヌコミュニケヌションズ(Nature Communications)(*17)によるず、有機蟲業では、慣行蟲業ず比范するずGHG排出量を蟲䜜物で最倧20、畜産物で最倧4削枛できるこずが明らかになっおいたす。有機蟲業に完党移行し、窒玠肥料の䜿甚を控えるこずで、蟲業で盎接排出されるGHGの量を削枛するこずができたす(*18)。

しかし、有機蟲業では同時に生産量の枛少が起こるこずから、より倚くの生産地が必芁ずなるため、結果ずしお枩宀効果ガスの排出量は増加するずいう研究論文も発衚されおいたす。

有機蟲業では、堎合によっおは慣行蟲業に比べ生産量が最倧40枛少しおしたいたす。これは慣行蟲業においお、倧量の蟲薬や蟲業機械の䜿甚により、高い䜜物収量の達成が可胜ずなるためです。それに察し、有機蟲業は投入資材の䜿甚量が少なく、その分䜜物収量も䜎いずいう特城があり、生産量の穎埋めずしお、より倚くの生産地が必芁ずなりたす(*19)。

そのため、有機蟲業の土地単䜍圓たりの環境負荷は、慣行蟲業に比べ䜎いずされおいる䞀方、生産物の単䜍に関しおは、有機蟲業の方がより環境負荷が倧きいず考えられおいたす(*20)。

このように、有機蟲業ずいうだけでは必ずしもGHG削枛に貢献しおいるわけではないずいうのが実情です。

生物倚様性など有機肥料の䜿甚における環境負荷の評䟡

有機蟲業の特城には、有機肥料の䜿甚や倩然由来の成分で構成されおいる蟲薬の䜿甚等が挙げられたすが、今回は有機肥料の䜿甚ずいう特城に焊点を絞り、それが持぀環境に察する諞圱響に぀いおたずめおいきたす🖊

朜圚的な効果

有機肥料䜿甚がも぀朜圚的な効果は、䞻に以䞋に蚘す3点です💡

1. 土壌改善効果
1぀目は土壌改善効果です。有機肥料は、土の䞭の埮生物の逌(゚ネルギヌ源)ずなるため、土壌の埮生物掻性や皮類の増加、曎には蟲䜜物が育ちやすい土壌の育成が期埅できたす。

有機肥料は窒玠の溶脱、リン酞の固定ずいった逊分の損倱を抑え、䜜物の逊分利✀率を向䞊させるため、⌟壌肥沃床を高める効果がありたす(*21)。

たた、埮生物によっお分解されなかった有機物の䞀郚は土壌に残り、団粒圢成を促進させる圹割を果たしたす。その結果、土壌の通気性や保氎性等の向䞊に繋がりたす(*22)。

このように有機肥料は、化孊肥料ず比べおはるかに土壌改善効果が高いこずが明らかになっおいたす。

2. 人䜓ぞの圱響
2぀目は人䜓ぞの健康被害の䜎枛です。化孊肥料に代わり家畜糞堆肥等の有機肥料の普及を促し、化孊肥料の䜿甚量を削枛するず、土壌ぞのカドミりム(Cd)の投入量が抑制され、結果ずしお土壌䞭や葉菜類可食郚のCd濃床が䜎枛したこずが明らかになっおいたす(*23)。

カドミりムずは、亜鉛や氎銀等ずずもに第12族元玠亜鉛族元玠の぀で、人䜓に有害な物質です。日本では骚が脆くなるむタむむタむ病を匕き起こすこずで知られおいたす。

カドミりムずその化合物は、囜際がん研究機関(IARC)によっお発がん性物質に分類されおいたすが、カドミりムは䞀床摂取するず生物の䜓内に蓄積され、人䜓では玄30幎も残留するず蚀われおいたす。このため、食物連鎖によっおカドミりムが濃瞮されるず、人間を始めずする生物は長期にわたりその毒性に晒される危険がありたす(*24)。

そのような危険物質を削枛できる点においおは、有機肥料は化孊肥料に察し安党であるず蚀えたす。

3. 生物倚様性
3぀目は生物倚様性ぞの貢献です。有機肥料を䜿甚する有機蟲業は、慣行蟲業に察し生物倚様性の芳点から優䜍だず蚀われおいたす。

豊かな生物倚様性は、害虫の制埡、昆虫による果実の受粉、曎には有機物の腐怍分解など、人間の生呜維持に関わる自然のプロセスを保぀ために必芁䞍可欠です。したがっお、生物倚様性の喪倱は、環境にずっお深刻な圱響を及がすだけでなく、瀟䌚党䜓にずっおも倧きな負担ずなりたす。
具䜓的には、䞻なリスクずしお䞋蚘2点が挙げられたす。

1぀目は枩暖化の加速です。森林は二酞化炭玠を吞収しおくれる生態系です。぀たり、森林における生物倚様性が枛少するこずで、二酞化炭玠を吞収する自然システムが機胜しなくなり、枩暖化を加速させたす。

2021幎に発衚された囜際研究グルヌプの論文によるず、暹朚の倚様性損倱を防ぐこずができた堎合、将来予枬される森林の炭玠吞収機胜の損倱の939を回避できるこずが明らかになりたした。぀たり、暹朚倚様性を確保するこずができれば、森林の炭玠吞収機胜は維持され、枩暖化の抑制を図るこずが出来るのです(*25)。

この研究結果から、生物倚様性ず枩暖化は深く関わっおおり、その倚様性が果たす機胜が劂䜕に重芁であるかが䌺えたす。

2぀目は人間の健康ぞの圱響です。䟋えば、人間に欠かせない淡氎は、湿地が持぀ろ過や浄化機胜によっお䟛絊されたす。たた、人間の健康をサポヌトする医薬品の成分には、玄5〜7䞇皮もの怍物が関わっおいたす。曎には、栄逊䟡の高い蟲䜜物の補䜜には、倚様な埮生物が生息する質の良い土壌が䞍可欠です(*26)。今日様々な圢で人間の生掻を支えおいる生物倚様性の損倱は、人間の健康に察しおもネガティブな圱響を及がしたす。

埓来の産業的で極床に集玄的な慣行蟲業は、2008幎以降スロベニアで確認された蟲鳥類の枛少や、生物倚様性の枛少を匕き起こしおおり、䞖界貿易機(WTO)は、過去100幎間に75、EUにおいおは90もの蟲䜜物の品皮が消倱したず指摘しおいたす。

䞀方、有機蟲業研究所(FiBL)によるず、有機蟲業が行われおいる蟲堎では、慣行蟲業が行われおいる蟲堎に比べ、生息する生物皮は30、個䜓数は50倚いこずが明らかになっおいたす(*27)。

EU議䌚においおも2011幎に生物倚様性の損倱及び生態系の劣化を防ぐこずを目的ずした「2020幎たでの欧州連合(EU)生物倚様性戊略」を採択され、生物倚様性の保党は今日の䞖界における重芁課題の぀になり぀぀ある䞭で、有機蟲業は生物倚様性の保党に寄䞎できる点からも、埓来の慣行蟲業に代わり実践されるべき蟲法であるず蚀えたす。

以䞊の土壌改善効果、カドミりム含有による人䜓リスクの䜎枛、生物倚様性の保党の3点が、有機蟲業における代衚的な利点ずなりたす。これらを螏たえるず、有機肥料は化孊肥料に代わり率先しお導入されるべきであるように感じられたす。

しかしながら、有機肥料は、䜿甚にあたりいく぀か懞念事項もありたす。

朜圚的なリスクずなる堎合

ここでは有機肥料の䜿甚が堎合によっおはリスクずなり埗るいく぀かの偎面に぀いおご玹介したす。

1人䜓ぞのリスク
1぀目は人䜓ぞの健康リスクです。前述の通り、有機肥料は発がん性物質であるカドミりム濃床の削枛に貢献したすが、堎合によっおは同時に他の懞念すべき人䜓ぞのリスクが䌎うこずもありたす。

1.1. 抗生物質
1぀目は抗生物質の圱響です。近幎泚目されおいる取り組みずしお、食品・畜産の廃棄物のリサむクルのために、これら廃棄物を有機堆肥化し、有機肥料ずしお利甚する取り組みがありたす。こうした取り組みは省゚ネ・リサむクルの芳点からは、奜たしいず蚀える䞀方で、家畜の逌などに頻繁に添加されおいる抗生物質の存圚には泚意を払う必芁がありたす。

抗生物質ずは、バクテリアなどの现菌の感染を止める、たたは抑える圹割を持぀医薬品を指したす。厳密には现菌を殺す、たたは増殖を劚げるこずで䜓内での感染拡倧を止めるもので、基本的にそのような働きを持぀薬は党お抗生物質ずされおいたす(*28)。

䞀芋、抗生物質の䜿甚は家畜の病気の予防を可胜にする点で理にかなっおいるように感じられたす。しかしながら、病気の予防を目的ずした抗生物質の投䞎は、病気にかかっおいない動物ぞ抗生物質を過剰投䞎するこずになるため、その抗生物質に耐性を぀けたバクテリア(耐性菌)の発生を招く危険性がありたす。このような耐性菌が人に感染するず、治療や拡散の抑制が難しい䌝染病が発生する可胜性が出おきたす(*29)。

耐性菌が実際に発生した抗生物質の事䟋ずしお、コリスチンが挙げられたす。コリスチンは、耇数の抗菌薬に耐性を持぀倚剀耐性菌に察する治療薬の1぀ずしお、医孊界から重宝され、人々の感染症の治療に甚いられおきたした。

ずころが、2015幎にコリスチン耐性をも぀现菌が䞖界䞭に広がっおいるこずが刀明し、その耐性菌発生の原因が、䞭囜ず欧州における豚の生育匷化を目的ずした倧量のコリスチンの䜿甚であるこずが明らかになりたした(*30)。
厚生劎働省より、2013幎時点で耐性菌による死者は䞖界で幎に70䞇人を超えおいるこずが明らかになっおいたす。たた、この事態を攟眮すれば、2050幎には死者が幎1,000䞇人に䞊るずいう掚蚈もありたす(*31)。

このように、家畜のみならず人䜓にも害を及がし埗る抗生物質の偎面を考慮するず、抗生物質が持぀朜圚リスクにも泚意を払いながら有機肥料を䜿甚する必芁がありたす。

1.2. 䞭毒を匕き起こす病原䜓
たた、動物性肥料の適切な発酵ず䜿甚量に぀いおも問題芖されおいたす。有機肥料の1皮である動物性肥料には家畜の糞尿や残飯が挙げられたすが、それらには食䞭毒を匕き起こすサルモネラやO157などの菌が皀に含たれたす。
これらは数か月ほど発酵させるこずで殺菌が可胜ずなる䞀方、発酵が䞍十分であった堎合、肥料に病原菌が残る危険性がありたす(*32)。

動物性肥料に関しおは、食䞭毒を匕き起こすリスクにも泚意を払い、補造や䜿甚にあたっおは適切な凊理を斜すこずが必芁䞍可欠です。

2生産性の䜎䞋
2぀目は生産性の䜎䞋です。単䜍面積あたりの収穫量(収量)を比范し、25皮類の䜜物を比范したずころ、党䜓の平均で、有機蟲業の収量は慣行蟲業の80ずなるこずが明らかになりたした(*33)。

収量が2割枛るずいうこずは、すなわち慣行蟲業ず同量の収量を確保するためには、1.25倍の蟲地が必芁ずなるずいうこずです(*34)。

䞖界の蟲地は限られおおり、新たな蟲地開拓は自然砎壊にも぀ながりたす。したがっお、有機蟲業の実践に際しおは、収量の少なさずいう匱みをカバヌできるような工倫を凝らす必芁がありたす。

3入手困難性
蟲林氎産省によれば、有機肥料の公定芏栌は42芏栌蚭定されおおり、有機肥料の皮類は豊富です。しかしながら、囜内での生産量は限られおいるこずが珟状です(*35)。

有機肥料で最も倚く䜿甚されるナタネ油かすは、家畜の繁殖に有害な成分が含たれおいたために飌料ずはならず、埓来は肥料に䜿われおいたした。しかし、昚今有害な成分が削枛されたナタネが育皮されるようになり、次第に飌料甚ずしお甚いられるようになり、肥料ずしおのナタネの䟛絊は枛少し぀぀ありたす。

曎に、原料ずなるナタネはほが党量が茞入品で、骚粉などを倚量に茞入しおいるこずからも、有機肥料の茞入䟝存床は高いこずが䌺えたす。
このように、有機肥料は䟛絊量に制限があるだけでなく、他の甚途ずの競合のために高額ずなっおいたす(*36)。

以䞊のように有機肥料を様々な芳点から怜蚎するず、有機肥料は生物倚様性や人䜓の健康などぞの圱響の芳点で化孊肥料よりもよい遞択肢であるず評䟡できる䞀方、䜿甚方法次第ではリスクを抱えおいたす。

有機・化孊ずいう分類からも、生物由来の玠材から䜜られる有機肥料の方が化孊肥料に察しお良いむメヌゞを抱かれがちですが、先述のように有機肥料の䜿甚にもいく぀か懞念すべき点がありたす。

そのため、持続的な蟲業の実践の文脈においおも、単なる有機蟲業の実践に留たらず、本蟲法のデメリットを補完できるような蟲業の圚り方を暡玢しおいく必芁があるこずが䌺えたす。

持続可胜な蟲業に向けた新たな取り組み

そこで、こうした有機蟲業にた぀わる耇雑性を螏たえ、昚今では有機蟲業の実践に留たらない新たな取り組みが展開されおいたす。本蚘事では以䞋に2点、ご玹介いたしたす。

有機肥料ず化孊肥料の䜵甚

䜿甚削枛が掚進されおいる化孊肥料は、栄逊がすぐに怍物に届くため、効果が短期間に出る即効性の点においお有機肥料よりも優䜍です。

そのため、肥料は「有機か化孊か」ず二者択䞀的に遞択するのではなく、元肥(怍え付け前に土に混合する肥料)には有機肥料、远肥(生育途䞭で䞎える肥料)には化孊肥料を䜿うなど、それぞれの特城を螏たえた䞊で䜿い分けるこずで、より効率的な肥料の掻甚が可胜になりたす(*37)。

新技術の導入有機質資源の無機化

たた、昚今では有機質資源の無機化ずいう技術が開発されおいたす。2012幎に、食品残枣や畜産廃棄物などの有機質資源から、無機肥料を補造する新技術が開発されたした。

本技術の最倧の長所は、埮生物の力を借りお有機物を迅速分解しお無機肥料を䜜り出すため、肥料補造時に゚ネルギヌを必芁ずしない点です。
先に述べたように、通垞化孊肥料は補造時に倧量の゚ネルギヌを必芁ずであるため、倧量な化石燃料を燃焌する必芁がありたす。それに察し、本技術では肥料補造時に゚ネルギヌを必芁ずしないため、結果CO2排出量を倧きく抑えるこずができたす。

その他にも、保管に堎所を取る畜産廃棄物等の有機質資源を、速効性の芳点から優䜍ずされおいる無機肥料に倉換するこずで、それらの保管コストを削枛でき、たた茞出も容易な圢態で行うこずができたす(*38)。

このように、今日の蟲業では、有機蟲業ずいう遞択の他に、既存のものず昚今台頭しおきたもの䞡者の長所を生かした䜵甚や新技術の開発ずいった、より良い蟲業圢態を暡玢する詊みもありたす。これらの諞技術の進歩は、今埌の蟲業圢態の曎なる倚様化を瀺唆しおいるのではないでしょうか。

これたで芋おきたように、有機蟲業はGHGの芳点においお議論の的ずなっおいるのみならず、他の様々な芳点からも、曎なる問題点や新たなポテンシャルが芋出されるこずが分かりたす💡

蟲業における環境ぞの圱響を怜蚎する際、GHGずいった1぀の指暙のみを䞀郚の生産プロセスだけで評䟡するのでは䞍十分であり、いずれの蟲業圢態においおも、様々な環境指数やむンパクトを包括した怜蚎が必芁ずなりたす。

有機蟲業の評䟡におけるLCAの有甚性

そこで、ある補品・サヌビスがもたらす環境ぞの圱響を怜蚎する䞊で有甚ずされるのが、ラむフサむクルアセスメント(Life Cycle Assessment)(以䞋「LCA」ず呌ばれる、環境圱響評䟡手法です。LCAずは、原材料の調達から補造、加工、流通、販売、廃棄にわたる補品のラむフサむクル党䜓における環境負荷を定量的に評䟡する手法です。

LCAでは、䞀補品のラむフスタむルにおける各ステップをモデル化するこずで、生産にかかる資源やその過皋で発生する廃棄物、排出物の重量を掚枬し、LCA独自の圱響領域の指暙から環境負荷を算出するこずが可胜ずなりたす。(※LCAに぀いおは、匊瀟の過去の蚘事をご参照ください。

今日における囜際的な食品のサステナビリティ評䟡は、生産過皋のみならず、前埌の過皋を含むラむフサむクル党䜓の環境ぞの圱響を䞻芁な評䟡指暙ずしおいたす。補品の環境圱響を倚様な芳点から数倀化・衚瀺するこずは、株䞻・取匕先・消費者ずいった様々なステヌクホルダヌの幅広い関心に合臎し、ブランディングの掚進に貢献したす。

しかしながら、LCAでは、補品やサヌビスごずに倚数のデヌタベヌスを組み合わせた分析が必芁ずされたす。たた、LCAの実斜には高いコストや時間、耇雑なデヌタ抜出などの課題も存圚したす。

圓瀟のシステム「My゚コものさし」は、特に食ず蟲の分野における利甚可胜デヌタの敎備や分析パタヌンの暙準化を進めおおり、高効率にLCAを実斜し、 GHGや生物倚様性関連指暙など様々なサステナビリティ指暙を商品単䜍で分析評䟡しおおりたす。たた、それらのデヌタや分析評䟡結果を指暙化し発信する機胜もあり、株䞻・取匕先・消費者ずいった様々なステヌクホルダヌを巻き蟌むための効果的なサステナビリティ関連デヌタ掻甚をご支揎しおいたす。。自瀟補品が科孊的・定量的な評䟡を受けるこずで、自瀟の補品の食ず蟲の垂堎党䜓における環境の文脈での䜍眮付けを客芳的に把握し、垂堎に察し効果的な発信が可胜ずなりたす。

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クオンクロップESG グロヌバルトレンド調査郚

参考文献

(*1) https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h19/html/hj07010301.html
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(*36) http://www.jaf.gr.jp/faq.html#Q6
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