うたの棚(2024年1月〜3月)

※すべて別のアカウントから投稿した旧作です。
ジャンルは数の多いものから、他は日付昇順。


短歌

液体窒素に浸けたかねの先押し付ける少し前じりりひやひや

岩岩に渓流の白際立てどトンネルの闇に追いやられり

片栗粉水に浸して指の腹沈ませるままに無くなりたい

何処からとなく吹く風に踊る木の葉巌にありて眺め愉しき *1

十のうち十であっても君の目に五に見えるよう三で取ってる

一輪で終いと思うな それぞれに色も香りも生ける花々

いつまでもいつまでもこの中継ぎのホームの椅子に留まっている

狭く濃いだけであたたかいと言うなら満員電車に乗るがいい

楽園を追われて鼻の粘膜を荒らされて恨めしや生殖

追風の激しさや 音たち消えて立ち竦むほどに血は冷えゆく

八尺の身の丈もなし 気遣いを無きものとされワァと慄く

心臓が三つは多い! 日曜の夜に喚いた前歯親不知

たらった、たらったと胸の裡さけぶ間に流れ去る静岡の海 *2


俳句

落とそうか活かそうか二又の桃

春疾風 次第散らして北叟笑む


自由律俳句

点けていても消しても調わない




*1 ルクレーティウス『事物の本性について』第2巻冒頭

*2 クセノポーン『アナバシス』第4巻7章24節


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