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#441 読書記録「文にあたる」

2023.10.2.
本嫌いの子供時代を経て、今は昔より読書の良さや楽しさが分かるようになってきた。
面白くてどんどん読み進められる本、数行読むごとに船を漕いでしまう本、泣ける本、考えさせられる本…いろいろあるが、読んですぐ忘れてしまうのはもったいない気がして、「ビブリア」というアプリに読んだ本と読みたい本を登録している。

知り合いから紹介された本やSNSで話題にあがる本などは、後になると忘れてしまうので、読みたい本にすぐ登録する。

シンプルで可愛いデザインのアプリ

最近は、先輩方を見習って図書館の予約サービスを利用することにした。私が気になるレベルのものって、たいてい多くの人が読みたいものなので、予約しようとすると私の前に何十人も予約が入っていたりする。絶対今すぐ!というものでなければ、予約を入れて気長に待つ。それも良い。大人になったもんだ!笑


今回、予約したことを忘れた頃に連絡が来たのが牟田都子さんの「文にあたる」である。

《本を愛するすべての人へ》
人気校正者が、書物への止まらない想い、言葉との向き合い方、仕事に取り組む意識について——思いのたけを綴った初めての本。

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〈本を読む仕事〉という天職に出会って10年と少し。
無類の本読みでもある校正者・牟田都子は、今日も校正ゲラをくり返し読み込み、書店や図書館をぐるぐる巡り、丹念に資料と向き合う。
1冊の本ができあがるまでに大きな役割を担う校正・校閲の仕事とは? 
知られざる校正者の本の読み方、つきあい方。
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校正者にとっては百冊のうちの一冊でも、読者にとっては人生で唯一の一冊になるかもしれない。誰かにとっては無数の本の中の一冊に過ぎないとしても、べつの誰かにとっては、かけがえのない一冊なのだ。
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亜紀書房HPより


フリーランスの校正者によるお仕事エッセイ。何の因果か、本が借りられると連絡が来たのが、ちょうど自分の自費出版本の校正を自分でしているタイミングだった。いろんなことが立て込んでいる時期でもあり、なんと、全部を読み終わらない状態で返却日になってしまうという…。
最後の2つの短編が感動的だったとレビューを書いている方がいた。ああ、これは改めて読まないと。

私は2/3ほどしか読めなかったが、そこまででも興味深い話がたくさんあった。

◆校正は赤字を入れる仕事だと思われがちだが、基本鉛筆を使う。校正者の鉛筆書きを見て、赤を入れるのは著者や編集者。
◆校正は、常に完璧であることを求められながら、完璧な仕事をするのはほぼ不可能であるという矛盾を抱えた仕事である。
◆辞書の種類や時代によっても言葉の使われ方が違う。
◆新聞、雑誌、小説、マンガ…本の種類によって校正の目線も違ってくる。

パラパラと見ただけの後半に、教科書で有名なモチモチの木の話が出ていた。「この日のこの時間に三日月は出ない」という小学校の先生の指摘により、絵と本文が変更されたそうだ。月の満ち欠けを教える先生ならではの視点…!

でも、これだって「お話」なのだから、そんな指摘があっても「こういう世界観のお話なので、変更はしない」とすることだってできる。物語の場合はそういうところも難しい。



中でも、私が印象的だったのは「すべての本に」という箇所だ。とても熱のこもった文章だと感じられた。

校正って、本当に必要なのかという話だった。校正者の名前が載らない本はたくさんあるし、一部では校正をしない本もある。校正者による校正が入ったのか入っていないのかを判別することも難しい。だったら、校正をする意味とは?

校正には防災という役割があるそうだ。ただ誤字脱字を確認するだけでなく、文言として正しい文章だったとしても誰かを傷つける恐れがあるとか、不快に思う人がいるとか。そういった視点ももって第三者が見たり調べたりすることで、その本は信頼される内容になっていく。
「本」の信頼度が高い…という認識は、これまで本に携わってきた人たちが様々なチェックを経て本を世に送り出してきたことの積み重ねから築き上げられたものなのだ。

この本は別に校正入れなくていいかーという判断は、初めからその本の価値を低く見ることになってしまうと。
「すべての本が等しく手をかけられて作られてほしい」
というのが、牟田さんの思いとして書かれていた。


ああーーー。

誤字脱字は自分で頑張って確認するぞ!とか言って出版社さんの校正校閲入れなかったの、すみません…。

校正の意味、ちゃんと分かっていなかったな。
防災対策をしていない自分の本が、誰かに嫌な思いをさせたりすることがありませんように。

予算的にもタイミング的にも、もう自分の本に校正校閲を入れることは難しいので、せめてこの後の再校で、鳥の目・虫の目・魚の目をもって文にあたる、ができるようにしていこうと思う。



ということで、この「文にあたる」、
◆本が好きな人
◆仕事への向き合い方について考えたい人

におすすめの一冊である。私も続きを読まねば。

そう考えると、noteの記事の文章なんて、指摘だらけだよねー!



#教員エッセイかなあ
#読書記録
#文にあたる

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