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【青春恋愛小説】いつかの夢の続きを(最終話)

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〈終〉夜を抜けた街は飴細工みたいに恋人達の想い、巻き込んだ

授業が終わり、私は足早に撮影に戻った。
衣装の制服に着替えて、メイクを直してもらい、撮影に挑む。

「頑張って」

美夜子に背中を押されて、私は楽屋を出た。

「すみませんお待たせして……」

私はそう言ってカメラの前に立つ。
NGを出すことなく、撮影は順調に進み、最後のシーンを撮り終えたことには随分と太陽も傾いた時間だった。

「陽菜ちゃん、お疲れ様」

「お疲れ様、優衣」

優衣は私を抱擁する。

「また美夜子ちゃん怒っちゃうかな」

「ちゃんと私の心は全部美夜子のものだって言ってあるから」

「すごい愛だね」

「そうだよ」

優衣は私に小さな声で耳打ちをする。

「……またね。また共演するの、楽しみにしてる」

「うん。お疲れ様」

優衣は楽屋に戻って行った。

「陽菜……」

「美夜子、どうしたの?」

「あの子と何話してたの?」

「……姉として大好きって言われた」

美夜子は最初不安そうな表情をしていたが、それを聞いて少し安心したようだ。

「ごめん、美夜子。ちょっと大事な話しを事務所の人としなくちゃだから」

私は佐竹さんの元へ向かった。

「お疲れ様です」

「陽菜ちゃん、お疲れ……まあ何を言いに来たかは察するよ」

「え?」

「豊崎さんから大体は聞いていたんだよ。なんで急に復帰に対して前向きになったかをね」

「わかってて……」

「うん。でもそもそもこの学校を撮影で使おうってのは前から決めてて、ダメ元くらいで出演依頼かけようって話になってたんだよね」

「この前は、学校のスケジュールはって言いましたけど……我儘になるんですけど……」

「うん。会長もわかってたよ。あの人、見る目すごいからさ、多分そう言うことだろうって僕らが豊崎さんから話し聞く前から言っててね。だから、会社としてはまだこの一回だけの話で止めてるから」

「……大村さんすごいな。全部見透かされてたんだ」

「でも、僕としては一旦離れる選択をしたのは間違いじゃないって思ってる。今日のを見てても、なんか昔は作り上げた人物を演じているって感じだったけど、今日のはもっと人間臭いお芝居ができてたと思う。それってやっぱり、インプットあってこそだと思うからさ、もっと進化した咲洲ひなを見ようと思ったら、もう少し、外の世界を見ててもいいなって」

佐竹さんは色んなタレントを見ているだけあって、的確に感想を述べてくれた。

「私自身、手応えがあったわけじゃないですけど、なんとなく、自分が目指す芝居の方向性が見えた気がします。昔は、そんなこと思ってなかったけど、自分が表現したい事、台本から汲み取る脚本、演出家の意図が深く読めるようになった気がしてます」

私は佐竹さんと握手を交わした。
それは指切りのようなもので、私はもっとすごくなっていつか帰ると言うことを意味していた。
私は自分の制服に着替えると、待っていた美夜子と合流した。

「お腹空いた……そうだ、紗季のところ行こう」

「そうね」

私達が校門まで歩いて行くと、外で沙友理が待っていた。

「沙友理……色々ごめんね」

「ううん。ああいう面倒臭いところ、私が好きな陽菜の一面だから」

「そう言ってくれると助かる」

「これからも、いい友達として付き合って行くから」

「そうね。よろしくお願いします」

私は深々と頭を下げた。

「さ、打ち上げに行こう」

「なんで沙友理が率先して言ってるのよ」

美夜子がそう言うと、沙友理は私に向かって指を差す。

「美夜子もだけど、私達との仲直り会をしないと、でしょ?」

「折角のデートなのに」

「ダメ、デートは明日にして。今日は友情のためにね。さ、紗季のバイト先に行こう!」

結局3人で紗季のところへ行き食事をした。
母には美夜子と食事して帰るからと、メッセージを送ったら、仲直りおめでとう、と返信が来た。
仲直り会も終わり、沙友理を駅まで送ってから私達は帰路についた。

「明日、一緒に学校行こう。いつもの橋のところで待ち合わせ」

「うん」

そう言って別れて私は自宅へ戻った。
週末、一週間ぶりに私は美夜子の家にお泊まりをしに行った。
健一郎さんと清隆も家を空けるとのことだったので、母も泊まりで女子会状態だったが、向こうは向こうで、こっちはこっちで行動することになったので、私はずっと美夜子の部屋で試験勉強をしたりしていた。

「勉強ばっかりじゃあ飽きるなぁ」

私は美夜子に抱きつきながら言う。

「それじゃあ、お風呂でも入る?」

「えーまだいいよ。てか、お母さんと玖美子さんが幼馴染だったとはねぇ」

「そうね。びっくり」

「幼馴染でも、離れてしまえばお互いを忘れることあるって、怖いね」

「陽菜は私のこと、忘れないでしょ」

「うん、美夜子の味は忘れない」

「何それ、なんかエロい」

美夜子の唇に近付いてみると、美夜子はキス待ち顔をした。

「……もう、意地悪しないで」

「じゃあちゃんと言葉でお願いして」

私は意地悪に笑って言う。
美夜子はむすっとしながら口を開こうとした瞬間、私を押し倒して無理やりキスをした。
貪るように、私の舌をまるで刈り取るように舌を絡めてくる。
美夜子は優しく私を抱えると、ベッドに横たわらせる。

「……美夜子?」

美夜子は来ていたTシャツを脱ぎ捨てると、私のシャツを捲り上げると、シャツが腕で止まって私は両腕を縛られたような状態になった。
美夜子はニヒルな笑みを浮かべると、私の体を食べるように舐め始める。
美夜子の手が私の太ももを撫でる。

「陽菜、脚綺麗なの羨ましい」

「美夜子もスタイルいいじゃん。背も高いし」

「胸も、でしょ?」

美夜子は胸を張る。
下乳がとてもエロいというか、前より大きくなっていないか!

「ブラ、サイズ合ってないんじゃない?」

「そうね……最近ちょっと窮屈に感じる」

「一週間で変わるとか、成長期って不平等だな」

「太っただけかも……陽菜も太れば? 私もふくよかな方が好きだから」

美夜子は私の胸を触ると、何かに気づいたようで、それを確かめるようにして触った。

「大っきくなった?」

「さあ……」

「ねえ、今度一緒に下着買いに行こ? お揃いの下着買おうよ」

「美夜子がそんなの言うの珍しいね」

「私ももう遠慮はやめる。自分に素直に陽菜に対して要求していこうって決めたの」

「まあ、その方がわかりやすいかな」

私は首を上げて美夜子にキスをしようとする。
それを抑えつけるように美夜子はキスをする。

「……一段と情熱的だね」

「なんか今の状況がすごく良いの。陽菜は自由が利かないから無理やりしてる感じが」

「それ犯罪じゃん」

「同意の元で行ってます」

「くそ……」

「うふふ……可愛い」

美夜子は私の首筋から順番に歯形をつけていった。

「痛いけど、なんか気持ちいい」

「変態」

「あんたに言われたくない」

「じゃあ止めちゃおっかなー」

美夜子はサッと私の上から退く。

「あーあー、美夜子なんてもう嫌い」

「え……」

「嘘」

私達は攻守交代した。

「陽菜に抑えつけられる?」

「無理と思うけど、されたいんじゃない?」

「うん……」

「おねだりは?」

「……陽菜の好きに使ってください」

「よくできました」

私は美夜子の体の隅から隅までを貪り尽くした。
美夜子の顔がどんどん緩んでいく様は、私に快感をもたらした。

「今日はこっちも触っちゃお」

「えっ……」

美夜子の秘めたる場所に私は手を伸ばす。

「あっ……」

美夜子は少し触れただけで、少しいやらしい声を上げた。
私はその様子に駆り立てられるように触り続ける。

「ちょ、ちょっと……だ、駄目ぇ」

どんどん攻め立てて行きたくなり、私は無理やりブラを剥がし、揺れて飛び出てきた胸を舐め始めた。

「ひなぁ……駄目だからほんとに……」

まるで取り憑かれたように私は美夜子の体を食らう。
そして、美夜子は声を抑えながら大きく体を脈打たせると、ぐったりしてしまった。

「美夜子……」

されるがままの美夜子に濃厚なキスをすると、美夜子は同じように取り憑かれたみたいに私の唇を求め続ける。

「……はあ」

「これ、駄目……こんなにすごいんだ」

「美夜子、もしかして1人でしたことないの?」

「うん……陽菜は?」

「私もない」

「じゃあ……」

美夜子は濡れたそれを私のに押し付けてくる。

「確か、こうするんだったっけ」

「なんの……知識よ」

「同性愛の映画見た時にしてたの。洋画の」

「ふうん……って、これやばい」

私の背筋にずっと電流が流れるように、美夜子が動く度にそれが私を襲う。

「てか、これ……私も……」

「いいよ、美夜子の好きなタイミングで」

「あ、気持ちいい……」

私とほぼ同時に、美夜子は果ててしまった。
そして美夜子のが私に掛かってしまったことを、美夜子はずっと謝っていた。
シーツはなんとか守られたが、私のシャツがびしょ濡れになってしまったので、お風呂に入ることにした。
流石に親に見られるのは恥ずかしいので、自分たちで洗濯物は洗おうと話し合った。
脱衣所に入ると、お互いの親と鉢合わせた。

「……」

一同沈黙の重たい空気がのしかかる。

「……」

マジマジとお互いの様子を確認する。

「……」

そこで察する。

「あはは……」

「やだ、あなた達、若いだけあってお盛んね」

「何をおっしゃいますか……そちらも……」

私は玖美子さんに笑いながら言い返した。
そうとなればもう隠すことなく、私達は4人一緒にお風呂に入った。

「実は今日が初めてだったんだ」

「そうなの? 因みにお母さんとクミちゃんとは中学の頃にすでに……ね?」

「あの頃は男の子が好きじゃなかったから」

「いつから男の子好きになったんですか?」

「え、大人になってからかな」

私が納得の顔をしていると、美夜子は不安そうに私の脇腹をつねった。
風呂をと諸々就寝前の支度を済ませて、私達は部屋に戻った。

「さっきしたベッドで寝るのか」

「汚れてはないはず……」

「美夜子がすごかったから」

「もう忘れて……仕方ないじゃない、初めてで2回もって」

「すごかったな美夜子。もうなんか動物のような」

「もう!」

「イテテ……」

美夜子は私をポカポカ叩く。

「もう……やめてよ」

「だめ、今日は陽菜を抱き枕にして寝る」

「わかったわかった。好きにしていいから」

「やった」

電気を消して布団に入った。
美夜子の言う通り、私は美夜子に抱き抱えられるようにして布団に入った。

「美夜子さん、これ、流石に暑いんですけど」

「我慢して」

ただ一言、確かに言えるのは、今日の枕は柔らかくて温かいということだ。

「鼻息くすぐったい」

「美夜子がここに頭置いたんだよ」

私は美夜子の温もりを感じながら眠りに就いた。
夜明け前によく目が覚める。
年寄り臭いが睡眠のサイクル的にここで浅い睡眠になるからだ。
私がモゾモゾ動くと、美夜子が痛いくらいの力で締め付ける。

「美夜子起きてるでしょ」

「起きてる」

「おはよう」

「おはよう。で、どうする?」

「散歩、行かない?」

「いいよ」

私達はベッドを抜け出して、出掛ける準備をして散歩を始めた。
私は右手、美夜子は左手を繋いで歩く。
まだ空気がしんと静まり返った午前5時前。
始発電車がその空気を切り裂くように駆け抜ける。
トラックは大きな息を吐きながら、何処かへ荷物を運ぶ。
私達は一歩一歩、幸せを噛み締めながら歩く。

「ね、美夜子、私のこと好き?」

「好き。この世で一番、陽菜のこと好き。陽菜は、私のこと好き?」

「好き。この世で一番、美夜子のこと好き」

愛を確かめて私達は散歩を続ける。
何気ない道だって2人で歩けば特別になった。

これはまだ高校一年生の春の話で、これから私達に訪れる夏秋冬。そして来年の春も、2人一緒なら特別なものになるだろう。
色んなことを2人で経験していく。
あの日見た夢の続き。
好きな人とずっと一緒にいること。
でもいつかは、お互いに仕事をして、ずっと一緒になることはないだろう。
そこにどんな未来が待っていても、私達は受け止めてそして受け入れる。
今はとりあえず、この幸せな時間を大事にしようと、私は美夜子にキスをする。
それを犬の散歩中の三島に見られようが、弟と散歩中の紗季に見られようが関係ない。
私達の毎日は、いつかの夢の続きになる。
繋いだ手を離す時は、どちらかが死んだ時だと、私達は笑いながら言った。



ここまでお読みいただきありがとうございました!
次回作はどうなるか……
お楽しみに!!

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