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初恋の相手が義妹になった件。第23話

 初めての日から暫くした夏休み前日。
 僕はいつものように学校へ行って、色んな書類をもらい、終業式をこなすと家に帰った。

「お昼どうする?」

「簡単にパスタでも作ろうか?」

 いつものように百花と言葉を交わす。
 少し早いが、僕ら子どもだけで先に清恵さんの実家へ帰省する事になっている。どうしても仕事の関係でお盆時期にしか帰れなさそうなため、そうなると大人数で迷惑がかかるからと清恵さんは話していた。
 荷物の準備をしたり、改めて経路を調べたりとして過ごしていると、百花は僕に抱きついたりしてくる。
 あの日から、僕らは一度もしていない。別にどちらかが言えばするんだろうが、どちらも今はそれを求める時期じゃなかった。

「できたよ」

 簡単なツナと大葉の和風パスタを作り、テーブルへ運んだ。

「ああ……私の胃袋掴まれてるなぁ」

 百花はそう言いながらパスタを頬張る。

「別にそんなつもりはないけどな」

 正直、自分が美味いと思えばそれでいいやと味付けをしていたので、そう言われるのは少し照れた。

「お祖父ちゃんとこ、久しぶりだなぁ」

「前は中二の時にって言ってたっけ?」

「うん。中二のお正月だったかなぁ。去年はインフルエンザに罹っちゃっていけなかったの」

 パスタを食べ終え、僕らはコーヒーブレイクをしながら話していた。

「色々報告できるね。悠人の事とか」

「そうだな……」

 僕はカップに残ったコーヒーを飲み干す。

「なあ百花……母さん帰ってくるまで時間あるからさ……」

「したいの?」

「いや、百花が嫌なら無理にって言わないけど」

 そう言うと、百花は少し怒って「まるで私がさせてないみたいじゃん」と言った。

「あ、そうだ。口でしてあげよっか?」

「く、口? どこで覚えたんだよ、そんなこと。まさか、他の男とそう言うことしたとか?」

「冗談でも怒るよ。私の中には悠人以外入った事ないから!」

「じゃあ何処で覚えたんだよ」

 百花は少し黙ってから「お母さんに聞いた……」と恥ずかしそうに言った。

「悠人こそ、お母さんとしてないよね?」

「するわけないだろ……」

「たまにエロい目で見てるじゃん」

「それは……たまにエロい格好してるからだよ……」

 僕は空いたカップを台所まで持っていき、洗い始めた。

「……そういえば佐伯さんとは? あれ以来学校で話しかけてこないよね」

「ああ、一度ちゃんと話した。百花としたって話をしたら、残念そうだったな」

 侑香は僕の初めてを奪いたかったらしい。そんな勝手なことのために、百花の弱味を探していたのかと思うと、流石に怖い。

「まあでも感謝しなきゃだね。私達が一歩踏み出すきっかけになってくれたんだから」

「確かに、なんか前より構えなくて済むようになった気がする。お互いの秘め事がないというか」

「そうだね。悠人はもう無いよね? 勿論、私ももう無いから」

「そうだな……一度百花の下着が紛れていたことがあるくらいかな。こっそり百花の部屋に持って行ったけど」

「あ、あのブラでしょ?」

 僕は「そうそう」と頷きながら濡れた手を拭いた。

「なんかベッドの上にあったから『なんで?』って思ったんだよね。因みに、そのブラ、今着けてるよ」

 百花はそう言ってシャツの裾を捲る。

「見せなくていいから」

「いや、見てほしいな……どう? 単体で見るよりいいでしょ?」

 心なしか、以前より膨らんだその二つの柔玉の間に一筋の線が入っていた。
 それに、カップからはみ出るように白い肌が見えていたので、僕は目をすぐに逸らそうとした。
 が、首を動かそうにも動かず、眼球も固定されたように、それに魅了され、魅入ってしまっていた。

「もう……素直じゃ無いんだから」

 百花はそう言うと僕の顔をその柔玉に押し付けるようにした。

「むぐぅ!」

「どう? 最近ちょっと成長してこのブラも正直キツいんだよね。そうだ、帰省前に買いに行こうか!」

「ぶはぁ……」

 僕はなんとか呼吸をして肺に酸素を送り込んだ。

「ごめんごめん、苦しかった?」

「……もうちょっとで死んだ母さんに会うところだった」

 だが、僕の身体は素直で、その柔玉の感触だけで興奮するのに十分だった。

「部屋、行こっか?」

「そう……だな」

 僕はそう言って落ち着くために深呼吸をした。
 百花のベッドの上で僕らは早速キスをした。すぐに蕩ける百花がなんとも言えないくらいエロい。
 お互いが繋がった時の幸福感がたまらなく、何度も味わいたい感覚だった。
 行為を終え、満足した僕らは暫くは余韻に浸っていた。

「……私怖い。永遠にこれを求めてしまいそうで」

「だな……一度味を知ってしまうと、病みつきになるな」

「なんかそうなるの怖かったのもあるんだよね。それだけの関係になりそうで……」

 僕は百花の頭を撫でる。すると百花はまるで猫のように気持ちよさそうな顔をする。
 ただ、少し体が冷えてきたので、僕らは服をきることにした。

「夏休みか……、本当このままじゃ毎日しちゃいそうで怖い」

「僕もインドア派だからなぁ。基本家に居ると思うし、そうなると……」

「だよねー。ちゃんとルール決めようね。例えば毎週何曜日とか」

「そこまでして制約したくないけど……まあそうだな、お互いにしたい気持ちの時にすればいいんじゃない?」

 僕の言葉を聞いて「それじゃあ毎日ずっとになるけどいいの?」とイタズラっぽく百花は言った。
 流石に一日中は無理だ。だけど、できることなら百花とずっと肌を合わせていたい。その気持ちは確かで、僕は百花をギュッと抱き締めた。

「どっちが先に我慢できなくなるか、勝負だね」

「だからって浮気するなよ?」

「当たり前じゃん」

 喉が渇いたので二人で下に降りてお茶を飲む。すると、母が帰宅してきたので僕は食材を冷蔵庫に入れるのを手伝った。

「夏休みだからってあんまり羽目を外しちゃだめよ?」

 その一言で、どうやら僕らの関係が進んでいるのを勘づかれているのだと気づいた。

「週末にはお祖父ちゃんの所だし、そんなことしないよ」

「そうね。悠人、百花をよろしくね?」

「え? うん……」

 僕はそう返事をすると、母はため息を吐いた。

「初対面の人達ばかりだから、寧ろ百花がしっかりしなきゃいけないんだけどね」

「もう、わかってるよ」

 百花は気怠げに返事をする。
 僕はソファーに腰掛けると、百花に親戚の話を訊いた。
 いつもは祖父らと同居している母の兄にあたる清太叔父さんの家族がいるらしく、百花からすれば従姉妹にあたる怜奈とその弟の樹也がいるらしい。
 歳は怜奈が僕らの四つ上、樹也は三つ下との事だ。

「二人とも明るい性格だから、すぐ馴染めるんじゃないかな」

 百花はそう言うと、僕の肩に頭を乗せた。

「でも樹也君、最近反抗期で結構厄介らしいわよ」

 僕が面倒そうな表情をすると、百花は僕の頬を指で突っついた。

「それにしても二人とも夏なのにベタベタくっ付いて暑くないの?」

 もう夕方六時になろうかとしているが、外は明るい。
 梅雨明けも発表されて、もう夏本番といった所だ。

「広島は夕方になると風が止むから、結構暑いわよ」

「それにお祖父ちゃんの家、昔ながらの作りだから全部屋にエアコンがあるわけじゃないからね」

「それは……辛いなぁ」

 僕はテレビの天気予報を見ながらそう言った。広島の最高気温とこっちの気温を見比べると大差ないが、風の分変わるんだろうなと考えていた。

「まあでも田舎だから夜は涼しいよ」

「それは有難いな」

 僕は頭の中で謂わゆるノスタルジックな夏の光景が浮かべていた。
 蝉の声に背の高いひまわり、麦わら帽子に白のタンクトップに短パン、それにサンダルで遊ぶ。
 もうそんな時代ではないが、そういうのを味わうのも悪くないなと感じながら、僕は百花の腰に回していた手で、こっそり胸を揉んだ。

「馬鹿。こんなところで何してるのよ」

 百花は僕の耳元で囁く。

「不安になって来た……受け入れてくれるのかな」

「大丈夫だって。そもそも再婚のことはお母さん、お祖父ちゃんに言ってあるし、多分そこから皆んなに話は言ってるだろうから」

「ならいいけど」

 それから何事もなく、週末の朝を迎えて僕らは新幹線に揺られていた。
 新広島駅から乗り換えて、廿日市駅に着くと怜奈が迎えに来てくれていた。

「君が悠人君だね? 初めまして、私は岡野怜奈よ」

「初めまして、澤田悠人です……えっと……もしかして怜奈さんが運転を?」

「怜奈ちゃん、免許取ったんだ」

「うん。大学暇だからさっさと取った。こっちは割と車社会だからね」

 僕らは初心者マークのついた赤いCX-8に乗り込んだ。

「あ、これお父さんの車だから。お父さん、昨日夜にぎっくり腰やっちゃってさ、今日動けないのよ。本当なら、お父さんに来てもらう予定だったんだけどね」

「へえ、叔父さん大丈夫なの?」

「最近、ぎっくり腰が癖になってるみたい。しょっちゅうやってるからね。うちでは日常茶飯事になってる」

 僕は見慣れない街の景色を見ながら、二人の話を聞いていた。

「どう? 広島は。まあ、見ての通り何もないけど、それが取り柄だから、都会の喧騒を忘れてゆっくりして行きなよ?」

「何にもないだなんて、あんな立派な神社があるのに」

「それくらいしかないからね……東京みたいに渋谷とか新宿とか原宿だなんて大っきい街が沢山あるわけじゃないし、野球はカープでサッカーはサンフレッチェだしね」

 僕は遠くに見える大鳥居を見ながらそれを聞いていた。

「まあ、悠人君は初めて来たわけだし、何もかもが新鮮だよね」

「ですね。うちの親の実家、自宅の近くなんで今まで帰省ってことをしたこと無かったんで、全部が新鮮です」

 僕はそういうと、百花を見た。その光景だけが僕のいつも通りを演出する。

「ね、二人って付き合ってるんでしょ? どうなのどこまで行ってるの?」

「な、なんで怜奈ちゃんが知ってるのよ!」

「えー清恵さんから大体聞いてるからなぁ」

「お母さん……」

 百花は眉間に皺を寄せていた。

「あ、悠人君。うちの親族、悠人君のことウェルカムだから安心してね」

「そうなんですね……安心しました。ずっと不安だったんで……」

「血は繋がってないけど、そういう小さいこと気にするような人間はうちの血筋にはいないからさ」

 僕はほっと一息吐くと、車は大きな古い一軒家の駐車場とも言えるスペースに停まった。

「おー、よく来たね」

 百花の祖父である清次郎さんが出迎えてくれた。

「初めまして。澤田悠人です。しばらくお世話になります」

「若い割にしっかりしとるのぉ。気ぃ使わんでええけぇの」

「いえいえそんな……」

 僕は荷物を持ちながらそう言うと、百花がじっと見ていることに気がついた。

「悠人って器用だよね。普段は陰のオーラ出しまくりなのに、外面みたいにちゃんとできるって」

「そうでもないけどな……」

 僕らは部屋に案内されると、二人部屋で驚いた。

「馴れ初めはちゃんと聞いてますよ。まあ、運命みたいなもんですから」

「ありがとう、育代さん」

 怜奈らの母である、育代さんがそう言うと、百花は礼を言った。

「じゃ、早速川遊びにでも行く?」

「いきなりですか?」

「あ、まあ長旅だったろうしゆっくりしてからでいいけど、お昼バーベキューだけど準備に時間掛かるし、その間は……」

「あんたが悠人さん?」

 丸刈りの如何にもな野球少年が奥から姿を見せた。

「俺、樹也。よろしく」

 樹也は握手を求めて来たので僕はそれに答えた。

「ぐっ……」

 倒れ込む樹也を驚きの目で百花と怜奈は見ていた。

「いきなりな挨拶だな」

「都会のヒョロ男かと思ったら意外とやるじゃないか」

「もう樹也、そう言うことはするもんじゃないわよ」

 樹也は怜奈に叱られると、気にすることなく自室へ戻って行った。

「でもすごいね悠人君。簡単に捻っちゃうなんて」

「合気道習ってたんで……」

「へぇ、そうなんだ」

 僕は乱れた服を整えると、百花の方を見遣る。

「どうした?」

「ううん、なんでもない……」

 百花は鞄からスマホを取り出すと、何やらメッセージを送っていたようだった。
 僕は気にせずに座って一息ついていた。

「悠人、着替えるから向こう向いてて」

「わかった」

 百花は水着を取り出して着替えを始めた。
 僕も同じように着替えを始めた。

「悠人それでいいの?」

「え? うん。別に泳ぎ回るわけじゃないし、スポーツウェアの方が速乾性とかいいかなって」

 百花は水着の上から薄手のパーカーを羽織っていた。

「それじゃあ行こっか」

 僕らは玄関で待っていた怜奈と樹也に合流して裏庭から川へ向かった。

「悠人さんはモモ姉のどこが好きなの?」

「全部。どこが一番とかない」

「……俺、モモ姉みたいな人タイプなんだ。だからなんか悔しくてさ」

「初恋とか?」

「そうかも……」

「因みに僕も初恋だった。忘れようとした初恋だったんだけどな……気づいたら一緒に暮らしてるってどんあ神様のイタズラだよって思った」

 割と樹也とは普通に会話をしていた。男ならではの通づるところがあったからだろうか。

「でもさ、最近姉ちゃんがいいなって思うようになったんだけど……これって異常かな?」

「いいんじゃないか? 実際、義妹と付き合ってる兄がいるわけだし」

「悠人さんは特別じゃん。連れ子同士だから法律的にもOKでしょ? うちは本当の姉弟だからさ……絶対叶わないじゃん」

「だからと言ってその好きって気持ちを蔑ろにしていいわけじゃないだろ? 諦めるにしても何にしても、ちゃんと踏ん切りをつけないと。何となくで諦めても結局、引き摺るだけだぞ?」

 僕がそう言うと、樹也は立ち止まった。

「どうした?」

「……師匠って呼んでもいいですか?」

「は?」

「悠人さん、本当に高一ですか? どうやったらそんな悟り開けるんですか?」

「開いてるつもりないけどな、悟り。でもまあ、そうだな……人より余計なことを考えてるんじゃないかな、普段から」

 樹也はそこからは質問攻めだった。考えてみれば好奇心旺盛な中学一年生だ。色んなことを吸収したがっているのだろう。

「二人、急に仲良くなってるね」

「怜奈さん……露出しすぎじゃないですか?」

「えーどこ見て言ってるのかな? 悠人君のスケベ」

 怜奈は胸元を強調するように両腕で抱き寄せる。
 僕は何とも思っていなかったが、隣の樹也は顔を赤くしていた。

「ちょっと怜奈ちゃん、私の彼氏誘惑して何しようって言うのよ」

「うわーリア充ムーブかましてくる百花にはこうだ!」

 そこから百花と怜奈の二人は水の掛け合いをしていた。

「……樹也はあれが好きなんだよな?」

「うん……」

「やっぱり胸?」

「ううん、全部。ああやって気さくに男子に話しかけたり冗談言ったりしてくる女子がいいなって思って、よく考えたらそれって姉ちゃんじゃんって思ってから、気になるようになって……」

「そうか。そう言うこともあるんだな。僕は一人っ子だから家族に感化されることはなかったからさ」

「悠人さんのお母さんって生まれてすぐ亡くなったんですよね?」

「そう。だから全く覚えてないんだ。ただ、写真で見る母さんと百花は少しにている気がする」

 僕らは少なからず男ってそう言うところが影響するのかなと、二人でため息を吐いた。

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