バベルの月

 みんなが仲良く楽しく暮らす平和な惑星があった。

 ところがある日突然、そこへ巨大隕石が落ちてきた。その惑星は粉々に砕け散り、それぞれ別の小さな星々に分裂してしまった。生き残った者たちも、みんなバラバラになり、みんな寂しい思いをした。

 そのうちの一人であるエイは、大好きなみんなとの再会を望み、自分のいる小さな星から脱出しようとした。そのためには重力に逆らう方法を探す必要があった。そこで、エイはその小さな星を隅々まで探検するのだった。数え切れないほどたくさんの友だちのことを考えながら、一人ぼっちの毎日に耐えながら。しかしその星には誰一人も友だちがいなかった。

 ついにエイはうつに陥った。そのとき、別の星に乗りながら手を振る友だちが現れた。その友だちアイの星は、他のどの星の何倍も大きく、また凄まじい速度で太陽の周りを公転していた。

 アイは謎の宝石を手に握り、エイの星へ向かって思いきり跳躍した。すると、アイは自分の星を離れ浮遊し、エイの星に近寄った。エイはアイと手を繋いで、アイの星に着地。

 アイが持っていた謎の宝石は、「飛行石」といい、手に握ると重力に逆らって空を飛ぶことができるという。エイとアイはこの宝石を使い、他の友だちを次々とアイの星へ乗せていった。

 再会できて喜ぶエイたち。その最中、さっきまで他の友だちが乗っていた星が次々と互いに衝突し合いはじめた。この光景を見てエイたちは、まだ救出し終えていない友だちを急いで救出するのだった。

 ようやく全員の救出が終わると、小さな星々のほぼすべてが衝突の渦に加わった。数多くの衝突を繰り返した結果、バラバラだった小さな星々は一つの大きな惑星・地球にまとまった。

 それから後も長い間、アイの星は太陽の周りをすさまじい速度で回り続けた。

 そんなある日、アイの星は地球の引力に引き寄せられてしまう。こうしてアイの星は、月となった。それでもエイたちは昔と変わらず仲良しだった。

 しかし時が経つにつれ、月はその引力の弱さから、生命に必要な酸素を少しずつ地表から宇宙空間へ逃してしまう。

 やがて、今まで仲良しだった他の友だちは変わり果てたかのように、酸素を巡る激しく醜い戦争をはじめた。

 エイとアイをはじめ一部の数少ない友だちは、戦火から逃れるべく地球へ避難した。

 それから長い年月が流れた、ある日。二人の子供は、空に浮かぶ月を見て言う。

「月にも、友だちがいるのかな」
「きっといるよ」

おわり

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