喜びの精霊
一人旅をしていた少年は訪れた先の村で、ある噂を村の子供たちからこっそり聞きつける。
「村外れの森奥の塔に、大人しか見ていけない何かがあるらしい」
その村の男たちが戦争に行った夜、少年は周囲の目を盗んでその塔を探索することにした。
噂の"何か"とは、不気味で残虐なのかもしれないし、神秘的で難解なのかもしれない。不安と好奇心を募らせていると、塔の最奥まで着いた。
最奥の扉を恐る恐る開けると、そこには若い女性が一人だけいた。彼女は最初、少年に怯える。少年の方も、どこにでもいるような普通の女性が牢屋にいることに驚いた。
「本当に君が、村で噂の"大人しか見てはいけないモノ"なの? どうして大人しか見てはいけないの?」
実は、彼女の仕事は、子供には見せられないくらい激しい遊びを村の男たちにしてあげる事だった。しかし彼女はこの仕事を嫌がっていた。彼女の本当の望みは、人の一方的な欲望を満たす事ではなく、自分のありのままの喜びを感じる為に生きることだった。
彼女の思いを知った少年は、彼女の正体が『喜びの精霊』であると確信し、彼女を連れて塔から脱出する。二人は村から遠く離れた別の場所で、自然と触れ合う新しい生活をはじめることに。
同じ頃、戦争から帰ってきた男たちは、連れ帰った三人の精霊少女たちをあの森の奥の塔へ閉じ込めるのだった。
おわり
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