面白い夜

 日付が変わる頃の深夜。
 とある知らせを聞いた私は気分が高揚するあまり、彼がぐったりしているにも関わらず話しかけてしまった。

「ねぇねぇ聞いて聞いて!」

 しかしあまりにも眠いのか、彼はまともに頭が動かず、気怠そうに変な言葉を発するばかり。

「はぁ何だよ」
「来週から新作アニメの『ホニャララホニャララ』がやるって!」
「何かあったの」
「新作アニメがやるんだよ。楽しみで楽しみで眠れない!」
「何か相談にでも乗ろうか」
「違うよ。このどうでもいい話をただ聞くだけでいいんだよ!」
「何を言いたいのかわからないんだけど」
「ただ話を聞くだけでいいんだよ!」
「それ、いいね」
「いいでしょ、聞くだけだから!」
「そろそろ眠くなってきた」
「あぁそう、寝たら?」
「お前、しっかりしているか」
「しっかりしている!」
「お前、大丈夫か」
「大丈夫だよ!」
「流石にやばいでしょ」
「やばくないよ、全然やばくない!」
「あっそ」
「やばいのはあんただよ!」
「眠くなってきた」
「いいからもう寝なよ!」
「へぇ、そうなんだ」
「そうだよ!」
「ごめん聞き取れなかった」
「別に聞かなくても良い!」

 いつの間にか彼は寝落ちしていた。
 意味はない、意義もない、ただの会話だった。
 こうして、意味も意義もない平凡な一日は終わった。

おわり

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