絵本の話がしたくて②       「となりのたぬき」

小さい頃に出会いたかったなと思う絵本があります。

「となりのたぬき」を初めて読んだとき、思わずにやついてしまいました。うさぎはとなりのたぬきが大嫌い。何とかして懲らしめたいと思い、その気持ちを素直にお月様に話します。するとお月様はうさぎの代わりに懲らしめてくれるというんです。

ただし、条件がひとつだけありました。それはこれからひと月、たぬきにうんとやさしくするという約束です。ひと月だけなら我慢して優しくできるかもしれないと思ったうさぎは翌日からたぬきにうんと親切にしてみます。すると、親切にされたたぬきの調子が狂い始めます。だって、今までと違って、とても親切にしてくれるんだもの。もしかしたら、うさぎはぼくのことが好きなのかもしれないとまで思い始めるのです。それならば、とタヌキは思います。今度はぼくがうさぎに親切にする番だ。たぬきもうさぎに親切になり、「君のためならなんでもするよ」!!

これに驚いたのはうさぎです。しかもあのお願いをしてからちょうどひと月になります。たぬきのことをあんなに嫌っていたはずなのに、今では大切な友達にしか思えなくなっていたうさぎは、お月様にしたお願いを後悔するのです。

こんなにもはっきりと、となりのたぬきがきらい!って言えることにも、お月さまから懲らしめの提案をうけることも、お話とはいえあり得ない展開です。私の小さい頃は、どんな人にも優しくしなさい、他人を悪く言ってはいけませんよと重々言われたものです。でも、もしタイムスリップできたら、小さな自分にこの絵本を読んであげたいと思うのです。

こんな風に、大嫌い!の気持ちを肯定しつつも最終的にはたぬきの良いところを引き出して友達になってしまううさぎの姿を絵本で体験できたら、小さな頃の自分の友達作りも、もっとわくわくとできたのではないかと思うのです。

ちなみに小学2年生の教室で読み聞かせてみたら、子どもたちには大人気でした。


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