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Block Printing(ブロックプリント)の工房を訪ねて in ジャイプール/インド

ひょんなことから、2週間半のインド旅に出ている。学生時代から来たかったけど来そびれてたインド。その中でも、手仕事、特に布製品(織物・刺繍などなど)が好きな私は“Block Printing”というインドの伝統的な技法に惹かれていた。

Block Printing(ブロックプリント)とは

ブロックプリントとは、 手彫りの木版を使って布にインクを押し付けていくインドの伝統工芸。その歴史はとても古く、起源前にまで遡るとも言われています。カラフルで複雑な柄ほど幾重にもインクを重ねていくため、その作業工程は果てしなく、その分、機械では出せないハンドメイドならではの優しい風合いが生み出されます。ラジャスタン州ジャイプール近郊のサンガネール村やバグルー村に多くの工房が存在します。


ワークショップに参加してみた

ジャイプールという街にやってきて、ゆっくりしようと6日間滞在。せっかく本場の街に近いし、どこかでブロックプリントをやってみたいな〜と思って探しまくっていたら、“Sakshi”という工房に出会った。

※タイトルにはBlue Potteryと書いているが、Block Printingの工房でもある

ワークショップもやってる、と上記のサイトに記載しているが、詳しい時間や金額はサイト上では不明。なので直接Facebookから問い合わせたところ、半日のワークショップで2500ルピー(4000円弱)。インドにしては高いけど、いろんなツアーと比較してもお手頃な価格だったのと、口コミが良かったのでここのワークショップに申し込むことに。

ジャイプールの街中から工房まで、トゥクトゥクで約40分。私はインドのSIMカードを買っていたので、“Ola”という配車アプリを使って向かう。200ルピー(約300円)でした。



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インドで重宝しているOla(配車アプリ)はこちら▼


Part① Block Printingができるまで

工房に着いたらまずはチャイをいただくというインディアンスタイル。その後、30分くらいかけてブロックプリントがどう作られてるかを教えてもらう。ブロックプリントに必要なのはこの3つ。

・Wood Stamp:木版
・Color:木版用のインク
・Fabrics:布

木版は職人によって手で掘られたもの。何パターンも重ねて1つの柄を作ったりするので、とっても緻密な木版も。

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これは、5つの木版を使ってやっと1つの柄になる。こんな感じ。

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木版は掘ったあと、マスタードオイルに2週間ほど浸す。こうすることで、木版が長持ちするんだとか。

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着色料は、昔は自然の色素を使っていたが、今は値段が高騰したため、この工房では人工のものを使っている。ただし、環境に配慮したナチュラルに近いものを選んで使っているとのこと。

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布はコットン、シルク、ジュードなどなど。基本どんな布にもブロックプリントはできるらしい。コットンは南インド産が上質で長持ちする。

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ここまでで、いかにこの工房が素材にこだわってものづくりをしているかが感じられて、既に「ここにして良かった!」という気持ちになった。

もう一つ素敵だったのは、木版を押す布の下に何枚も重ねられた布たち。これらは、何回も押される木版のインクの色を吸収してユニークな色・柄となる。

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この工房では、この布をもランダムにできる美しいものとみなし、ポーチにしたりしている。私も、この布で作ったエプロンをもらい、それをつけて実際の作業に。


Part② ひたすら練習!

そしてついに自分の布へ!………と思ったら、そんな甘くはなく、まずは新聞紙に練習。見開きの新聞紙6枚分を使って、ひたすらブロックプリントの練習がスタート。

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まずは一色のものを、並行に。次に縦に。そして角に綺麗に押す練習。色をつけては押して、離して、また色をつけて指を使ってずれないように隣に押して、の繰り返し。教えてくれたおじちゃんが"It's like a meditation!"(瞑想みたいなもんだよ)って言ってたのがとっても納得できるくらい、集中しないとすぐに柄がずれちゃう。

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1色の練習を終えたら、次は2色の練習へ。2つの対になったブロックを使って、まずはベースとなる木版を押し、次に中に色をつける。中に色をつける方は難しく、ちょっとずれると先に押した色と被ってしまう。これはこれで味になっていいんだけど。

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やっと6枚目!と思ったら、「君は上手だから普段とはちょっと違うことをしよう」って。もともと手仕事や細かい作業(小さい時はビーズ、手編み、リリアニー、ミサンガ。今はレザークラフト)をやるのが好きだったから、そう言われてとってもニヤニヤ。そこで完成したのがこれ。斜めの線が走ってるのが普通と違うみたい。

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ランチ

練習の途中で、「ランチが届いたからご飯にしよう」と呼ばれ事務所的なところに。このワークショップではランチも含まれていて、カレーセット(チャパティ、2種類のカレー、野菜、よく分かんないスイーツの定食?)みたいなのが出てきた。左上のカレーが美味しかった。スイーツは私にはダメな味。。。

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隣ではおじちゃん達も持参のランチを食べている。観察してみたところ、本当にみんなカレーとチャパティ!こんな近くでインド人のランチボックスを見たのは初めてだったからちょっとテンション上がる。
話はそれるけど、インドのお弁当といえば思い出すのはこの映画。インドでは、お弁当は昼休みに合わせて温かい状態で届けられる。配達員が届け先を間違ったことから始まるラブストーリー。(アメリカにいた時、Anthropology of foodの授業で見た)


Part③ ついに布にプリント!

たくさんの練習を終えて(多分2時間半くらい練習してた)、やっとワークショップのメインである布へのプリントに。ストールになりそうな大きめの布は、もちろん持って帰れる。

無地のコットンの布は、出てきた時点ではしわくちゃ。これを針をつかってピンっ!となるように貼るのも職人の技。そのあと、ガイドとなる線を引いてくれる。水性なので洗えば落ちる。

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たくさん練習したから、この時点では自分の技術にちょっと自信が付いていて、スムーズにポンポンと押していく。

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角のところが綺麗に行かなかったりはしたけど、おじちゃんが「それも味だよ」って笑顔で言ってくれる。ここでは大きめのスタンプにも挑戦。ガイドとなるものがない柄のスタンプは、目でこの辺かな〜って見極めながら押すしかないという難しさ。これを職人さん達はほぼ等間隔で押せるんやから、本当にすごい。

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集中して1時間くらい続けたら、ついにスタンプは完了!


Part④ 布を乾燥させたら完成!

最後に、インクを乾燥させるため布を外に持って行って日当たりのいいところに干す。30分くらい。

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快晴のこの日、太陽の光に照らされた布がとっても綺麗だった。

最近のBlock Printingの状況について

インクを乾燥させている間、一日お世話になったおじちゃん(名前はDevandra。King of Godっていう意味なんだって。)にBlock Pritingの現状について教えてもらえた。

このおじちゃん。代々この工房を運営しているんだとか。

サンガネールには、1300のブロックプリントの工房があるが、本当に手作業でスタンプを押しているのはその半分くらいしかなく、後の半分は”スクリーンプリント”というもう少し手間のかからない手法を採用。
さらに、本来のブロックプリントは手間がかかる大変な仕事だから、従事する人は年々減ってきており、若い人たちは家業を継がず別の仕事に就くことが増えている。
また、人が減ってるのに加えて、洗練されたスキルを持った職人が減ってきていて、素人職人は柄がずれても大して気にしない。ブロックプリントの本家の街サンガネールでも、職人の技で作られた布を手に入れるのはどんどん難しくなっていている。

後継者問題や、手軽な生産方法のシフトは、ここインドでも起きていることなんだなと実感。だからこそ、全て手作業で作られたこの工房の布の価値は高いし、そういうものが評価され、この素敵な伝統工芸が維持されていって欲しいという気持ちでこのnoteを書いている。


ワークショップを終えて

半日のワークショップ、当初の予定は4時間だったけど、結局5時間半くらいやらせてもらった。ただ作り方を学ぶだけじゃなく、自分で身をもって難しさを体感したからこそ、洗練された技術へのリスペクトが芽生えた。
私はジャイプールに来て2日目に、"Anokhi"というブロックプリントの服や小物で有名なお店で総柄のワンピースを買った。4500ルピー、日本円にして約7000円。インドでの買い物としては相当高いけど、このワンピースが同じように作られたんだと思うと、とっても貴重で特別なものに思えるようになった。


生産の背景を知り、実際にこの目で見て手で触れることで、よりその服に愛着を持ち、好きになることができる。これはきっと、服に限らずあらゆるものに共通すること。もちろん、完成品が理屈抜きにしてもとっても素敵なことが前提となるけれど。



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