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2021/1/3 晴れ

朝から妻の調子が悪い。ラーメンの汁をこぼして絶望したりしている。ふらつきだけでなく寒気もあるらしく、真っ先にコロナのことが頭をよぎる。熱は平熱、呼吸器症状もない。「泣きながら眠ると熱が出るの」と説明するが、僕は不幸にして泣きながら眠った経験は皆無で俄かに信じがたい。部屋の暖房をガンガンに強める。彼女は尼さんのように毛布にくるまりながらMIU404の再放送を見ている。野木亜紀子が好きなの?と僕、お正月だしみんなしていることがしたい、と妻。リアルタイムで数話見て離脱したけれど、再放送でもやっぱり乗り切れず。逃げ恥新春SPにも通じる「社会問題を扱ってまっせ」感。逃げ恥本編のさりげなさが好きだった。でもこれぐらい露骨じゃないとメッセージはお茶の間に届かないのかもしれない。誰もがメタファーや仄かしや暗号を好むわけじゃないし、有効とも限らない。逃げ恥SPを教習所のビデオみたいと呟いていた人がいて膝を打つ。そこには正しさに対する後ろめたさや、正しくなさに対する配慮は存在しない。登場人物に葛藤がなく、のっぺりとした手触りになる。MIO404の「ナイトクローラー」の引用が薄寒いも、その分かりやすさ、あからさまさから来るのだと思う。

パソコンを購入して以来、ストリーミングサービスでは聞けない音源をiPhoneに取り込むことを脅迫的に続けている。Spotifyをストリーミング用、Apple Musicをインポート音源用として使い分けている。わたしのiPhoneのストレージの9割は音楽データであり、もはやこれはiPodではないか。家にあるCDはほぼ取り込んだと思っていても、荷物を整理しているとあちこちから発掘される。クローゼットで拾ったマライアの初期2枚をインポートする。マライア最終作『うたかたの日々』や清水靖晃ソロの再評価は世界的に著しいが、初期=プログレ期も素晴らしい。明日通勤時に聞こう。ジャパグレも掘りたいけれど恐らく相当な沼なのだろう。

妻は写真の現像に行きたい、チョコレートを買いに行きたい、と夢いっぱいなのだが、本当に体調が悪いらしく床に伏せてしまう。適当に買い出しをして、娘とレコードを聴く。Avalanches『We Will Always Love You』をターンテーブルに乗せる。緑のカラーヴァイナルが怖いのか、それとも小さく聞こえてくる音が怖いのか、回転する円盤がそもそも怖いのか、号泣してしまう。参ったなぁ。同居するにあたり彼女にもレコードに慣れ親しんでもらわなければお互いのQOLを著しく下げてしまう。そういえば、と、彼女がこよなく愛している絵本を手に取る。

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内容は大人が読んでも十分興味深いものであり、ビジュアルも爆発する色彩と細かい文字のビジーな画面が素晴らしい。レコードも取り上げられており、実物とイラストを並べて提示してみる。スッと泣き止み、興味深くレコードを眺め、父親はギュッと強く抱きしめ、それに泣く赤子。知識とは未知の恐怖に壊れてしまわないためにあるのだ。我が家の貧困なサウンドシステムではレコードの豊かな音をどこまで再生できているかはかなり怪しいが、それでもアナログの音の温かみが似合うアルバムは一聴して違いがわかる。

しばらく一緒に音楽を楽しみ、風呂に入る。何歳まで男親と一緒にお風呂に入っていいのだろうか悩む。3歳までは仕方ないと許されるのだろうか。魂の性別はともかく、生物学的に女性の子供を迎えて、子供の性被害についても真剣にそのリスクを考えなきゃいけない、と妻から教えられる。ことさら性被害のリスクを強調するのは、彼女に世界に対する不信感を植え付けることになるんじゃないか、と呑気に考えてしまう僕には圧倒的に当事者意識が欠けているのだろう。慎重になることと、不信になることは似ているようで全く違うのかもしれない。フェミニズムを学んでみたいな、と竹村和子の著作いくつか購入したことをこの日記を書きながら思い出す。北村紗衣『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』も未読のままだ。

焼きそばを作って、起きてきた妻と一緒に食べる。福岡人が醤油を食べるために刺身を食べるように、僕は青海苔を食べるために焼きそばを食べる。白米+焼きそば+青のり=激うま。焼きそばやお好み焼きでご飯が食べれない人たちを憐みながらこれからも生きていこうと思う。明日は仕事始めである。それでもあまり憂鬱じゃないのは、それは僕が1月から3ヶ月ほど育休的な期間(完全な育休ではない)を取得したからです。

今日の1曲/Lord Echo「Thinking Of "Dub"」


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