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「アクションゲーム好き」にお勧めしたい『エンダーリリーズ』レビュー

ENDER LILIES(エンダーリリーズ)』というゲームをご存知だろうか。これはニンテンドースイッチ、Steam、PS4、Xbox Series X|Sという、全現行ハードで2021年6月(PS4版のみ7月)に発売された、ダウンロード専用ソフト(税込み2,728円)。ジャンルは2Dのアクションゲームで、中分類はメトロイドヴァニア。

このゲームの雰囲気は、絶望に満ちた世界に遺された儚き、小さな輝きという表現が似合う。『NieR』シリーズのファンなら「どストライク」に違いない。

何を隠そう、僕にはストライクどころかクリティカルヒットしてしまい、「2021年のベストゲームはこれ」と確信した。8~12月に、これを超えるソフトが発売されるとは思えないからだ。

どんな要素が僕に刺さったのか、順を追って説明していくとしよう。

プレイヤーが操作する白巫女にできることは「避ける」ことのみ。では、攻撃は…?

主人公のリリィは10歳くらいの白巫女。彼女にできることは、走ったり、跳んだり、泳いだりするほかは、穢者を浄化することだけ。では、どうやって戦闘をしているのかといえば、戦闘面はすべて穢者(けもの)が行う。

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この世界の設定はこうだ。この国に、ある日「死の雨」が降り注いだ。雨を浴びた生物はみな凶暴な生きる屍「穢者」となり、王国を徘徊するようになった。たった一人の白巫女を除いて。

ストーリーは白巫女「リリィ」が黒騎士の魂に話しかけられ、目を覚ますところから始まる。黒騎士の魂はリリィに使役し、リリィが念じる(Yボタンを押す)ことで、『ジョジョ』のスタンドようにユラリと姿を現して「オラァ!」と、リリィを襲う穢者へ斬りつける。こうしてリリィは黒騎士の助けを得ながら、先へと続く道を歩き始めるという流れ。

リリィに使役するのは、総勢26人の穢者たち。そのすべてが不本意にも穢者となり、自分の意思とは無関係にリリィへと襲いかかった者たち。肉体を失い、ただの魂となった自分だが、自分を正気に戻してくれたリリィへ手を貸したい。無念の感情を、力に変えて。

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美麗2Dグラフィックと、ピアノ基調の物悲しいサウンドが世界を彩る

このゲームはサイドビューの、2Dアクションゲームだ。動くキャラクターたちからは、ドット絵職人の仕事を感じる。暗いトーンで描かれた、中世ヨーロッパを連想させる城。そこに、白く佇むリリィが際立つ。

グラフィックについては綺麗過ぎるがあまり、コリジョン(当たり判定)があるオブジェクト(物体)とそうでないオブジェクトの差が見分けづらかったり、地上でじっとしている敵(攻撃モーションになると、赤いエフェクトが表示される)を見落としてしまい、ジャンプの着地で踏んでダメージを受けるといった事故も発生する。だが、すべては「綺麗な2Dグラフィックでゲームができる」というご褒美のためだと思えばいい。

サウンドを担当するのはMiliという5人組の音楽グループ。音ゲー『DEEMO』に19曲も楽曲を提供したほか、『NieR:Automata』のアレンジCD「NieR:Automata Arranged&Unreleased Tracks」で歌っていたり。アニメ『ゴブリンスレイヤー』のOPや劇場版テーマソング、『攻殻機動隊 SAC_2045』や『グレイプニル』のEDテーマを担当したと言えば、どれか一つくらいは「ああ!」と思い当たる曲がありそう。

MiLiを知らない方は、とりあえず下のリンクで『エンダーリリーズ』の曲を聴いてみてほしい。サントラには50曲もの曲が収録されていて、「ゲーム中で、こんなに使われてたっけ?」って不思議に思うほど。

●YouTubeで聴ける無料のエンディングテーマ
Mili「Bulbel」ENDER LILIES: Quietus of the Knights

敵の攻撃は激しいが「雑に」プレイしなければ勝てる難易度

このゲームの戦闘における基本は、「避けながら攻撃する」これに尽きる。敵の攻撃は歩いて避けることも、ジャンプで回避しても構わないが、もっとも多用するのは無敵ダッシュ。ZRボタン(PS4ならR2)を押すだけで、1秒近い無敵時間を伴うダッシュができるのだ。しかも、ダッシュ終了後もクールタイムは皆無。すぐに次のダッシュができるためストレスはない。『モンスターハンター』シリーズにおける、回避性能と回避距離スキルを最大まで上げたような性能を標準で備えている。

そう聞くと「なんだ、簡単そう」と感じる人もいるだろう。しかし、そこがこのゲームのバランス調整が上手いところ。無敵時間は長いし、移動距離も長い。しかし、ダッシュ距離は調整できないため、敵の目の前に出現してしまったり、ましてや敵と重なる位置でダッシュが終了したら、ダメージを受ける。

リリィはただの巫女で、幼い女の子。そんな彼女が、巨人が振り下ろす槌を受けたらどうなると思うだろうか。現実世界では即死するが、このゲームの中ではHPの過半数が吹き飛ぶだけで済む。しかし、2撃目を受けるわけにはいかない。通路にたくさん配置されている雑魚ですら、リリィのHPを30%減らす攻撃を連発してくる。

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リリィがダメージを受けたら、回数制限はあるものの「祈る」(Lボタン長押し)ことで、HPを半分程度回復する能力を持っている。しかし祈りが叶うためには、約1秒間の詠唱時間を要する。ダメージを受けたら敵から離れ、1秒間の時間を作る。これができれば、リリィの生存率は飛躍的に向上する。

一番の攻略は、ダメージを受けないこと。ダメージを(できるだけ)受けないようにするには、丁寧に、慎重に戦うしかない。中ボスや大ボスを倒して手に入れたたくさんのスキル(穢者)の中から、そのエリアに登場する敵の攻撃方法や、自分のプレイスタイルに合わせてセレクト。スキルは最大3つ(Rボタンを押すと、別の3つに切り替えも可能)装備できるので、黒騎士の剣が届かない上空から弾を撃ってくるカラス対策に拡散矢スキル。画面外から弾を撃ってくる敵をいち早く見つけるために、自動誘導弾を撃つスキルを。でもボス戦用にはRボタンで切り替えた、攻撃力重視のスキルを装備するといった具合だ。

面白いことに、幾つかの攻略サイトやゲーム実況を観たところ、セットしているスキルは人ごとに割とバラつきがあった。最終的には26種類にも増えるのだから当然かもしれないが、僕を含めて人それぞれ、自分のプレイスタイルに合ったスキル選びをしていた。それだけ、各スキルのバランス調整は慎重に行われたに違いない。なにしろ、初期スキルの黒騎士だけでもクリアできるようになっている。残りのスキルはすべて「より簡単に」敵を倒すための攻撃手段でしかない。

しかし、適切なスキルを選んだだけでは倒せない敵もいる。突進してくるタイプや盾を構えている敵は、スキルではなく無敵ダッシュと黒騎士を組み合わせて倒すしかない。具体的に言うと、敵の攻撃をジャストタイミングで避けるというよりは、「敵を跳び越せる」間合いまで接近して無敵ダッシュ。するとリリィは敵の背後へ回り込めるため、突進してくる敵は攻撃後の硬直中を。盾を持っている敵は、盾を持っていない背後から黒騎士で攻撃できる。

しかし、一太刀で倒せるような敵は少ない。背後から1~2斬したあたりで敵が振り向き、こちらへ向けて攻撃を放ってくるので、さらに敵の背中に向けて無敵ダッシュで抜けるという行動を繰り返す。敵の攻撃硬直が終わり、振り向くまでの時間(=背中を斬れる回数)は敵ごとに異なっている。一方で黒騎士の攻撃は、1斬目から2斬目、3斬目とヒット数が増えるごとにダメージが増え、比例して攻撃後の硬直時間も長くなる。「もう一太刀当てたい」と欲張れば反撃を受けるので、欲張らない戦いが長生きの秘訣。敵の振り向きモーションを待ちきれずに無敵ダッシュしてしまうチキンプレイもよろしくない。

雑魚戦ですら、敵の振り向きモーションを無視したり、複数の敵を同時に倒そうとするなど「雑な」戦いをしようとした時だけ、このゲームはプレイヤーに牙を剥く。

よく『モンスターハンター』などのプレイヤーで「自分はPS(プレイヤースキル)がなかなか上がらない」などと嘆いている人を見かける。そういう人は、このゲームをプレイして「無理しない」考え方や、敵のモーションをよく見ることといった考えが身につき、『モンハン』も劇的に上達しているはずだ。

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斬る快感。そこに穢者がいる実感

このゲームの魅力の一つに、「敵に攻撃を当てた時の手触りがいい」というものがある。ここで言う「手触り」とは、敵にダメージを与えたという実感である。

当然、ゲームの中の出来事なので「手痛い攻撃が当たった」感はプログラミングで表現されているのだが、たとえば対戦格闘ゲームや『モンハン』では「ヒットストップ」と呼ばれる、数フレームだけゲーム進行を止めることで「!!」という演出を行っている。それに対して『エンダーリリーズ』はゲーム進行を止めるのではなく、画面を「揺らす」ことで、ダメージの大きさを演出している。正直、この演出にこれほどの効果があるとは想像していなかった。

ここにサウンドエフェクトとして「ズシャッ!」などの心地よい音が鳴ることで、より「攻撃を当てた」行動は快感へと昇華する。

「セーブしたいけど、したくない」そんなジレンマ

マップを探索しているとき、二段ジャンプ+空中ダッシュでどうにか届くような場所がある。そういうところに飛び乗るためには一度や二度は普通に失敗するので、挑む前には足元にいる雑魚を倒しておく。いわゆる「掃除」という行動だ。

このゲームに登場する敵は、一度倒すと二度と復活しない。このため、扉が開く条件が「部屋の中にいる敵をすべて倒す」だった場合、一度敵を全滅させて扉を開けておくと、次に通過する時も開いたままとなる。だが、雑魚に限っては敵が復活する条件がある。それは、セーブすることだ。

セーブすると、体力を回復させるための「祈り」の回数も、スキルの使用回数も最大値まで回復する。だが、その代償として全エリアの雑魚が復活してしまうという交換条件がある。

例えるなら、有名なホラーゲーム『バイオハザード』はセーブするためにインクリボンが必要なので、総セーブ回数が決められている。このため、「今ここでセーブしたら、ラスボス手前でセーブできなくて困るかも。ここではセーブせずに、次のセーブポイントまで我慢するか?」みたいな判断に近い決断を強いられる。などと説明している僕は「セーブポイントを見かけたら、必ずセーブする」派。体力を回復する「祈り」の消費量が多いプレイスタイルだからだ。

デスペナルティは皆無。死にゲーの中ではもっとも簡単な部類

このゲームは一般的なアクションゲームの中では難しい部類に入るが、「死にゲー」と言われているカテゴリーの中では、もっとも簡単な部類に属する。理由は、デスペナルティが皆無なことと、セーブポイント(兼ファストトラベルのポイント)がたくさんあること。

『ドラゴンクエスト』では、死ぬと所持金が半分になるというペナルティがある。しかしこのゲームには、ペナルティという概念が存在しない。何しろ所持金という概念がない(スキルを強化するためのポイントは、マップ各所に固定配置されている)ことに加えて、アイテムを取得したり、次のマップへ移動してマップが記録された直後に死んだとしても、入手したアイテムは所持しているし、記録された新規マップもそのまま。唯一のペナルティは、「またそこまで移動しなければいけない」苦労だけだが、死んでも1秒後には「最後に立ち寄ったレスト(セーブ)ポイント」で目覚めるため、移動距離もさほどではない。

では、雑に戦っても大丈夫なのか? 答えはNOだ。

前述したが、雑魚戦でも敵の攻撃力はそれなりに高く、かつ複数の敵と同時に戦闘しようものなら、カラスが放った弾を避けようとして盾持ち剣士の前にダッシュ回避してしまい、大剣を振り下ろされてHPが半分吹き飛ぶといった事故もある。

それに加えて、二段ジャンプ~空中ダッシュでぎりぎり届くような足場も存在するため、成功させるために幾度となく二段目のジャンプタイミングを調整するような場面もある。失敗して当たり前なので、先に雑魚を掃除しておかなくてはいけないが、何度も同じ場所で雑魚戦をやっていると次第にプレイが雑になってきて…というのが、代表的な死にパターン。

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「ゲームを介して伝わってくる」メトロイドヴァニア系ゲームへの愛情

マップ構成も、アイテムの配置も、二段ジャンプでぎりぎり届く足場も、探索ルートまで含めて、インディーゲームとは思えないほどの「丁寧さ」が目立つ。ゲーム開始時、左右に開かれた道のうち、左に行くと高い壁が立ちはだかっている。「そうか、ここは後で来る場所か」そう察し、右へと進む。ゲーム内には、こうした「今は進めない」ルートがたくさん登場する。

マップ内の各所には、中ボスと大ボスが配置されている。中ボスを倒すと「スキル」を。大ボスを倒すと、スキルに加えて「二段ジャンプができる」「空中横ダッシュができる」「特定のチェーンにロープを引っ掛けてジャンプできる」などの、新たなマップ踏破能力を手に入れられる。マップ各所で「こんな能力があれば、この先に進めるのに」と悔しがった経験をしたプレイヤーならば、新しく手に入れた能力を使えば、どこのルートが開けるか、すぐにわかるはず。取得可能なアイテムが残っていない部屋はマップ上でオレンジ色に変化するし、未開のルートは赤いドットで表示されるので、全体マップを開いて青い色のままになっている部屋を探し、その最寄りのセーブポイントへファストトラベルするという流れ。

ちゃんとボス戦の直前にはセーブポイント(兼ファストトラベル)場所が配置されているという気配りもさすが。このゲームを設計した人は、ご自身もメトロイドヴァニア系がお好きなんだろうという愛情が、ゲームを介して伝わってきました。

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唯一の悩みは万人に勧められない高難易度

ここまで、このゲームを絶賛してきた僕。しかし、万人に勧められるゲームかといえば、そういうわけにはいかない。

正直、アクションゲームが好きで、少なくとも『メトロイド』や『キャッスルヴァニア』シリーズを何作もクリアした経験がある人にしか勧められない。「アクションゲームが苦手で…」というゲームファンがクリアできる難易度にはなっていないからだ。

まず、操作が複雑。最初のうちはできることが少ないので、左スティック(十字キーでも操作可)で移動し、Yで攻撃。Bでジャンプして、ZRで回避ダッシュするという感じ。ところが最終的には…

<エンダーリリーズのキー割り当て>
・左スティック(十字キー) …移動
・右スティック       …画面をスクロールさせ、少しだけ先を見る
・Y、X、Aボタン      …3種類のスキルの割当て
・Bボタン         …ジャンプ
・Lボタン         …体力回復
・ZLボタン        …アイテムを拾う/ワイヤー移動
・Rボタン         …スキルセットの切り替え
・ZRボタン        …回避ダッシュ
・+ボタン        …ゲームメニュー
・-ボタン        …ステータス画面

なんと、操作を割り当てられていないのはL3(左スティック押し込み)のみ。残りのボタンやスティックには、何らかの役割がアサインされていることに加えて、+や-といった、システム系メニュー除く残りの全ボタン(L3を除く)を駆使してプレイすることになる。同時押し系のコマンドが1種類(各スキルの奥義は、ゲージが溜まっている時に↑+対応スキルのボタン)しかないので、この技以外は同時押しをミスったり、暴発することもないのだが、それにしても多い。

次に難易度の面。雑魚をたくさん倒せばレベルはどんどん上がっていくが、レベルを最大の100まで上げたところで圧倒的に強くなるわけではな。つまり、レベル上げという不毛な作業をする必要はないが、アクションゲームが苦手な人にとって「レベルを上げて力技でねじ伏せる」ことができないのは不安要素となる。

戦闘に勝つには相手に適したスキルと装備を選ぶのも大事だが、最終的には敵の攻撃パターンを学び、無敵ダッシュで攻撃を抜けて反撃する、の繰り返し。そういう意味では、「買ったけどクリアできない」という人も何割かはでてくるはず。当然「誰でもクリアできるわけじゃない」ゲームをクリアすることで得られる喜びもある。ここは諸刃の剣だが、このゲームのディレクターは「誰でもクリアできるわけじゃない」難易度を選んだ。

「買って、クリアできなかったらどうしよう」そんな人の背中を押して上げる要素として、このゲームは3種類のエンディングが存在していることをお伝えしたい。ゲームでよくあるマルチエンディングのように、選択肢や行動でエンディングの種類が変わるタイプではない。ゲーム進行度に応じて「世界が滅びた理由の断片に触れた」段階で、いったんのエンディング。次に、もう少し謎に踏み込んだところで次のエンディング。そして、最後のボスを倒し、すべての謎を解き明かしたエンディングという3段階だ。

それに加えて、次にどこへ向けて進んでいいのかがわからなくなる時がある。隠されたアイテムの取り方も意地悪なものがあり、攻略サイトを一切見ずに進めている筆者は、かなりマップ内で迷走した。

もちろん、このゲームが好きで、買った以上は最後のエンディングまでプレイしたいと考えるのが当然だろう。しかし、人それぞれアクションゲームの腕前にはばらつきがある。

「あなたは、もう十分頑張った。エンディングだって見たし。価格分は楽しめたと思う」第一段階のエンディングを見た時、リリィからそう言われた気がした。全エンディングを観た今、あの日の感情を思い出すと切なくなる。

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ゲーム実況での利用ガイドライン

とまあ僕がベタ惚れしたソフトなので、ぜひゲーム実況者の方にも配信していただきたいと思っている。詳細は公式サイトをご覧いただきたいが、注意点を下記に記した。、ぜひ、ご検討頂きたい。

<ネット公開ガイドライン>
・ゲーム実況の配信はOK。ただしゲーム映像に「人間の声」以外の音楽や効果音を重ねることは禁止
・音楽のみを抜き出した、サントラ的な動画公開はNG
・収益化チャンネルから得る以外の広告収入や、他商品の宣伝サイトに掲載するのは禁止
・動画の概要欄にコピーライトを記載すること

©BINARY HAZE INTERACTIVE Inc.

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