世界のカルトカルチャーレポートvol.5 / 曖昧さを曖昧なまま定義する
Z世代を中心にジェンダー、セクシャリティ、関係性、価値観、働き方やライフスタイルなどが多様化する中、複数の状態を行き来したり、はっきり状態を定めない曖昧さへの注目が高まっている。その背景の一つには、パンデミック以降浸透した「セルフラブ」「セルフケア」といった自分を大切にする概念や特定のコミットメントを避ける風潮があるようにも感じる。パンデミックや気候変動、紛争や政治経済の低迷など、先の見えない未来や社会や暮らしの変化といった不安と共に生きる中で、不確定な未来ではなく、今にフォーカスし、自分の心身や生活の安定、自分の幸せに比重を置く考え方も広まっているのではないだろうか。今回は食、関係性、ジェンダーの領域を例に取り上げる。
フレキシタリアン
フレキシタリアンとは、英語で「柔軟な」を意味する「フレキシブル(flexible)」と、「ベジタリアン(vegetarian)」を組み合わせた造語で、基本は植物性食品を中心に食べるが、時には肉・魚も食べるという柔軟なベジタリアンスタイルを取る人を指す。欧米では特にコロナ以降、健康や地球環境、動物愛護の観点からフレキシタリアンが広まっている。
シチュエーションシップ
友達以上・恋人未満の関係や、つき合っているように見えて、双方のあいだで「つき合っている」という確認が取られていない、実質は付き合っているのに公言しないなど、“曖昧な関係”のことを指す。お互いの存在を親や友人など周囲に恋人として紹介はしない、他の人とのデートもOKといった状況もあげられる。一方または各パートナーが関係に明確な関係性やコミットメントなど異なるものを望んでいる場合、不健全な影響を及ぼすこともある。
ジェンダーフルイド
ジェンダー・フルイド(gender-fluid)とは、性自認が複数の性のあいだで流動的に変化するセクシュアリティを指す。不規則に変わることもあれば、状況や心理状態に応じて男性であったり女性であったりノンバイナリーであったり、あるいはジェンダーが無い(アジェンダー)などと変わっていく。