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一人暮らしをしてみたい

「お腹が空いたな〜」と誰もいない家でひとりで呟いてみる。
その空間には私しかいなくてもちろん返事なんて返ってこないけど。
実は私はちゃんとした一人暮らしをしたことがない。ニュージーランドでひとり暮らしはかなり難しい話で(家賃がものすごく高いのとひとりで住める物件がほとんどない)結局はシェアハウスか学生だったら寮。

私は家を出てしばらくシェアハウスをしていた。バックグラウンドも文化も全く違う人たちと同じ屋根の下に暮らすってどうなのって私は初めて家を出たときもう緊張しすぎてそのまま倒れちゃうかっていうくらいだった。幸運なことに同時期に引っ越してきたもう一人のフラットメイトが博士課程で映画を研究している人で会ってすぐに映画と文学の話で意気投合して二人は同盟を組んだ。というのもその家にはお互い「親友」である女の子二人が既に住んでいて私たちはまさに侵入者。彼も私も二人とも結構内向的で自分の好きなことを黙々としててまあたまに会えば楽しく会話するけどもっていう感じだった。そして女の子二人は(と言っても多分もう20代後半か30代前半)友達がめちゃめちゃ多くてしょっちゅう家でご飯会を開くような種類の人たちだった。私も彼もご飯会が開催される時は居心地が悪くてよく部屋にこもりがちだった。これはもう良い悪いとかの話ではなくて性格上の合う合わないの問題で。それでも私はその古い家が大好きだった。高い天井に大きな窓がひとつあって明るめの茶色の木の床に茶色のクローゼットがあった。リビングにはソファと本と雑誌が積み上がっていて私の部屋も壁一面が本だった。夏と春は外から鳥の声が聞こえたし雨が降ってきて屋根にポツポツ降り注ぐ音を聞くのが好きだった。天気の良い日はデッキ風になった裏の入り口に座って日向ぼっこしながら本を読んだし映画祭から帰ってきた夜はキッチンで映画フラットメイトと一緒に語り明かした。

多分この家に住んでいる間が人生で一番ローラーコースター?みたいな出来事が起きたしたくさんのことに挑戦した。新しい職場になって、日本から友達が泊まりにきて、新しい出会いがあって、交通事故にあって、大学に行くことになって。思えばこの家に住んでいたのはたった8ヶ月くらいなんだけどもう信じられないくらいにたくさんのことが起こったんだなって今思い出してもびっくりしちゃう。

この後は大学に行き始めたのと仕事の関係で街の中心部に住むようになって少し郊外のあの雰囲気から遠ざかってしまった。その間にたぶん一年弱くらいで二つのシェアハウスに住んだかな。やっぱり内向的であまり人とコミュニケーションとるのがうまくない私にとってシェアハウスってすごく少しずつだけどストレスの溜まる場所だったんだなって思う。大好きな友人たちと同じマンションに隣同士で住むっていう夢はまだ持っているけどやっぱり自分の生活空間をは必要で、これを確保することによって得られる心の安定に代えられるものはないと思う。自分とワンちゃんと二人とかっていう暮らしにも憧れるな。今年の1月に入って恋人と同棲生活が始まって二人だけの空間に暮らしているけどこれもまた最初は慣れる時間が必要だった。今月でやっと半年、お互いの距離感みたいなものを掴めるようになってきた気がする。私の外での仕事がなくなった分、家にいる時間が増えたのでひとりで静かにできる時間が増えて少し楽になった。多分、二人ともずっと家にいる生活はあまり向いてない(実際ロックダウン中は2ヶ月丸々閉じ込められていたので)人との距離感と居住空間との関係性ってすごく大事だったんだなって最近になってよく思う。多分私は一人暮らしすごく向いている。今の恋人ともどうなるかなんてわからないしだからそんな時はとりあえず自分でちゃんとひとり暮らしの空間を確保できる経済力が欲しいって思っちゃう。

内向的だったりシャイだったりあまり社交的ジャない人って人と暮らすの大変なのかな。私だけ?まずはちゃんとひとりの暮らしを持続させる力を持つ。

mugiho

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