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競争のない世界を創造する:『ブルー・オーシャン戦略』

競争がない世界...
思い描けるでしょうか。

私たちは競争が当たり前の世界に生きています。生まれてから現在に至るまで、数えきれない競争に揉まれてきました。

保育園、幼稚園、小学校から大学、会社...競争がない時代を思い出そうとしてもなかなか思い出せません。

競争を避けたいと思っても、競争から完全に自由になるすべを知っている人はいないように思います。

ビジネスの世界においてはなおさらでしょう。

今回紹介する本では、「競争のない世界を創造する」ための新たな戦略論を提唱しています。

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ブルー・オーシャン戦略〜競争のない世界を創造する〜
[著]W・チャン・キム/レネ・モボルニュ
ダイヤモンド社 2018.08
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ブルー・オーシャン戦略とは

ブルー・オーシャン戦略の核心となる考え方は、
「競争よりも新規市場の創出を重視して、競争を無意味にしよう」
というものです。

ブルー・オーシャンの反対はレッド・オーシャン。
その名前から、血みどろな戦いが繰り広げられていることが想像できます。

競争に勝つことが従来の成功であったならば、競争せずとも「勝つ」状態とはどのような状態でしょうか。

それは、唯一無二の存在になることです。

1分の1、つまり100%の確率で勝利することができます。そのような土俵・土台を探し当て、創り上げることからブルー・オーシャン戦略は始まります。


バリュー・イノベーションとは

ブルー・オーシャン戦略の核心となる考え方が最初に打ち出されたのは、1997年。『(旧版)ブルー・オーシャン戦略』が発行された2005年から8年前に、著者はあるビジネス誌の寄稿論文として発表します。

その寄稿論文のタイトルは「バリュー・イノベーション:連続的価値創造の戦略」。論文の趣旨は、競争へのこだわりを捨てた企業は、競合他社に対抗したり、相手を打ちまかすこと、または、競争上有利なポジションを手に入れることにまったく関心を払わない、という点です。

競争相手の行動が買い手に価値をもたらしているとは限らない。

ことに気付いており、むしろ、顧客への提供価値を飛躍的に高めて、競争を無意味にしているといいます。

そして、ブルー・オーシャンの発想に立つと、ある逆説が見えてきます。

競争相手に対抗しようと躍起になり、相手の優位性に追いつき追い越そうと努力すればするほど、皮肉にもライバルとの差異が小さくなっていく

本当に皮肉ですね...

ここで、コストも下げつつ、買い手にとっての価値を高めるゾーンを見つける必要があります。そのゾーンが、バリュー・イノベーションです。

バリューイノベーション@2x-100

それでは、どのようにしてブルーオーシャン戦略の核となる、バリューイノベーションを見つけられるのでしょうか。

この本では、たくさんのフレームワークや考え方が紹介されていますが、今回は1つだけピックアップしています。

業界構造は一定であるという誤解

戦略論の分野では「業界構造は一定である」という考え方が常識だったようです。それもそのはず。データを大量に集めて、定量的に価値のある分析結果を示すには、業界を静的なものと捉える必要があります。前提条件が間違っていたり、変数が多すぎると、あてにできないデータだと判断されてしまいます。さらに、その前提条件に立脚した戦略は価値のないものになってしまうでしょう。

つまり、戦略を稟議に通すためには、業界構造が一定であることが都合が良いのです。

SWOT分析をはじめとするさまざまは戦略フレームワークがありますが、競合他社や自社の強み、弱み、事業機会、脅威を分析したところで、競合他社も同じような情報をもとに戦略を立てるはずです。

それでは、どこで差異が生まれるのでしょうか?

データの分析=情報処理なので、持ち合わせている情報に差があれば、分析の結果は異なってくるでしょう。ただし、情報を仕入れるのは時間の問題。あなたがいち早く情報を仕入れて競合よりも早く新たな戦略を打ったとしても、その様子をみた競合はあなたの真似をして、すぐに追いてきます。イタチごっこをする始末です。もちろん、低価格にしただけでも根本的な解決にはならないでしょう。

特許をもった技術や圧倒的なブランディングなどの独自性や訴求力は、ブルー・オーシャン戦略の特徴だといいますが、ということは、先進テクノロジーの技術を持っていない企業や、そもそもブランディングができていない企業は生き残れないのでしょうか。

この本では、創造的な戦略を考案する能力は、計画的に引き出すことができる、そして、戦略を編み出す手順はつくれると、述べています。

戦略策定の一歩目として、まず、市場を引き直すことが必要となります。つまり、従来の業界構造に固執せず、組織にとって有利なように業界構造を改め、新たな市場空間を開拓できるようにするということです。

市場を引き直す

バリューイノベーション2-50

市場を引き直すために、私たちの焦点をどこに移せばい良いのでしょうか。

その一つは、「代替産業」です。

代替産業とは、機能や形状は異なるが、同じ目的のために使う製品やサービスのことです。

言葉だけでは分かりにくいので、数年前の私の状況を例に、解説していきます。

数年前、私は今の状況を変えたい!と思い立った時がありました。好きなことを仕事にする、海外に移り住む、転職する...なんでもいいから環境を変えたいなと。

その時、Webのバナー広告を見てプログラミングスクールに興味を持つようになりました。でもプログラミングスクールといっても種類は様々で、転職を保証してくれるスクールや、セブ島留学×プログラミング、インド留学×プログラミングのように一石二鳥をうたうスクール、はたまた、入試を受けて卒業後に授業料を払うスクールもありました。これらは「同業他社」にあたります。

「同業他社」の中でも事業戦略は異なります。高学歴者、子ども、転職希望者とターゲットが異なる場合もあれば、授業料の支払い方が異なる場合もあります。これらは「同業界の他の戦略グループ」にあたります。

ただ、私はプログラミングを学ぶことが目的ではありませんでした。漠然とはしていましたが、状況を変えたい!というのが目的でした。そのため、留学や進学も同時に検討していたのです。国内や海外にある大学のパンフレットも取り寄せていました。同時にオンライン英会話についても調査をします。さらに、転職サイトにも登録し大量の求人を眺めることもありました。これらも、プログラミングスクールにとっては「代替産業」にあたるでしょう。

ただ、問題はお金です...。スクールに通うとなると数十万円〜数百万円がかかります。漠然とした目的しかない私にはそのお金を払うだけの度胸はありません。

そこで、独学でプログラミングや英語を勉強することにします。プロゲートや ドットインストールに月額課金して学習をし、本屋さんでプログラミングやTOEICの参考書を購入しました。そして、同じような人がいないかTwitterで調べてみたところ、似たような状況の人とつながることができて情報収集にも苦労しません。これらは「代替産業」でもあり、「補完サービス・補完商品」でもあるでしょう。

補完サービス・補完商品をもっとわかりやすく説明しましょう。

もし、私がプログラミングスクールに通うことになって、毎日自転車通学をするとします。スクールの近くの駐輪場に月額5000円を払っているとします。この駐輪場は「補完サービス」に当たります。さらに、プログラミングを学ぶのにPCを購入する必要もありますね。VScordなどのアプリもインストールして開発環境を整えるでしょう。これらのサービスも「補完サービス」や「補完商品」にあたります。

堅苦しいスクールが多い中で、女性の自由な働き方を打ち出すスクールがありました。広告から教材まで統一感のあるデザインが施されていて、「もっと素敵な女性になって自由に働きたい」と思う女性の心を鷲掴みしていました。もちろん、私も説明会に参加しました。このように、ユーザーの感性に働きかけることで新たな顧客を開拓している企業もあります。これは「機能志向から感性志向へ切り替えた」結果といえるでしょう。

どうでしょうか。

プログラミングスクール一つとっても、いろんな切り口から戦略を練っていることが分かります。上記は私の経験を軸にした一例で、もっといろんな切り口があるはずです。

「業界」という枠組みだけに囚われず、より広い切り口で見るといろんなビジネスチャンスが潜んでいます。

そして、誰も気づいていない切り口で事業を俯瞰できると、ブルーオーシャンに一歩近づいていくでしょう。

さて、ブルーオーシャン戦略が策定できたしましょう。次のステップは実行です。

実行する際には、以下のようなハードルがあるようです。

経営資源のハードル:限られた経営資源
士気のハードル:やる気を失った従業員
政治的なハードル:強大な利害関係者からの抵抗
意識のハードル:現場に浸りきった組織

たくさんのハードルに立ち向かい、乗り越えるためにリーダーは何を意識するべきでしょうか。

実行に求められるリーダーシップとは

上記の4つのハードルにどのように対応すれば良いか、何を意識すべきかは本書では詳しく記されていますが、ここでは以下に2点に絞って、私の学びを記録したいと思います。

⒈ 集中すべきファクターを見極める力がリーダーに求められる。
⒉ 人は結果と同じくプロセスを気にかけるということを忘れない。

まず、一つ目について。

大きな変革を起こすとなれば、たくさんの資源が必要で、多くの人を動かす必要があるのではと思いがちです。戦略にもよると思いますが、必ずいもそうではないことも事実です。

企業の中で活躍する優秀なビジネスマンは2割しか存在せず、その2割が売り上げの8割を生み出しているという話はよく聞きます。

そうです。キーをなる人は絞られています。組織の中で影響を及ぼす人、出来事、行動を見極め、それらを積極的に活かすことができれば、最小限の資源と時間で戦略を実行に移すことができます。

このように、労力を拡散するのではなく、特定のファクターに集中させることが必要だと言います。そして、そのようなリーダーシップをティッピング・ポイント・リーダーシップと言います。

次に、2つ目について。

組織を動かす上で、もっとも大事なのは人です。特に、一緒に働く従業員、仲間です。戦略の実行に必要なファクターを見極め、特定の範囲で根回し、物事を決めていくことは必要でかも知れません。ところが、いくら良い戦略だとしても彼らが応援してくれて、協力してくれなければ、むしろ、戦略が失敗に終わるでしょう。

仲間の士気や意識を味方にするには、プロセスを共にすることです。

最重要事項は独断で決めたとしても、それを現場に落とし実行していく際には、協力してもらえるように十分説明し、公正なプロセスで物事を進める必要があります。仲間が心配するから、秘密裏に物事を進めたら信頼を失うことになります。その計画が仲間にとっていくら良い計画であってもです。

本書では、必要であれば、仲間の職種別に説明することも怠ってはならないと言います。

仲間は戦略実行のプロセスに参画している体感を持てて初めて、協力してくれるということをリーダーは覚えておかなければいけません。


読んだ感想

現状の価値を計る尺度ではなく、まだ数値化できていないけれど実は「価値」あるものはなにかを考えること。見えない価値を探し出すこと、そしてそれを価値あるものだと判断することは簡単ではありません。しかし、新たな価値を見出すためには常にそのような思考を働かすことが必要なんだと感じます。

個人の人生においても同様です。

他人より自分自身と向き合うことで、まずは自分のぶれない軸を見つけること、自分の「ありたい姿」や「なりたい姿」を言語化し続けることが、個人のバリューイノベーションを引き起こす上で必須だと思いました。

学びをまとめると...

⒈ 競争していると焦点が競争相手に当たってしまうが、競争相手の行動は買い手に価値をもたらしているとは限らない。
⒉ 競争相手に対抗し優位性に追いつこうとするほど、差異がなくなってしまうというジレンマに陥る。
⒊ すでにある数値に囚われすぎると、その数字上の比較でしか上を目指せない(売上高、収益性、市場シェア、顧客満足度など)。

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