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【登壇レポート】 SaaS Design ConferenceにMutureメンバーが登壇したよ

こんにちは!Mutureのあさいです。

2023/11/23(祝日)に開催された “SaaS Design Conference” に、Mutureからよねさん・じゃみさんが登壇してきてくれました!
タイトルは、「デザイン経営では語られない、経営するデザイナーの選択と歩み。」
今回は、当日の登壇内容をイベントレポート形式でお届けいたします。

当日のスライドはこちら!


登壇前に投影された資料より。間もなく始まります!

イントロダクション

莇(じゃみ):
最後のセッションとなりました。今日はここまで、すごいコマ数のセッションがありました。皆さんメモも取られていたり、きっと持ち帰るものも沢山あったかなと。
我々は現場ですぐ使えるナレッジというよりは、デザイナーの在り方というところをお話しできればと思っているので、放課後みたいなゆるい感じで聞いてもらえたらと思います。

Mutureについて

米永(よね):
最初に、Mutureの紹介をさせてください。
Mutureは、丸井グループとGoodpatchから生まれたジョイントベンチャーです。2022年の4月に創業しております。丸井グループは皆さんご存知の通り、小売とフィンテック(エポスカード)という2本の柱を持っている会社です。経営課題として、目指したい姿に対してギャップがあり、今後デジタルシフトをしていきたいという意志を持っています。これまで丸井は小売から始まっているのでプライベートブランドを持っており、靴やスーツ、店舗などの「モノ」を作ることは得意だった中で、ソフトウェアデザインのように失敗も学びとして仮説検証を繰り返して作っていく領域には知見がなく、そのギャップを埋めていきたいというところに対して、Goodpatchと共創してMutureが誕生しました。
小売・フィンテック×デザイン・デジタル。社会インパクトの大きい大企業が組織構造の負にとらわれず、良いプロダクトを生み出し続けることが当たり前になることを目指して、大企業の組織変革というテーマに挑戦している会社です。

じゃみ:
活動内容として、いろんな領域で事業をやっているのですが、DXとしてわかりやすい事例として2つお話します。
ライフスタイルアプリと呼んでいる、エポスカードの顧客とのタッチポイント。ここのチームの伴走をしています。OMEMIEは、ビジネスのスモールプレイヤー向けに作られている出店サポートのデジタルサービスです。
戦略・人と組織・プロダクト。デジタルプロダクトを触るだけではなく、丸井グループの社員・組織・事業戦略に、専門性を持った上で、ジョイントベンチャーという「半分なか、半分そと」の立場を活かしながらさまざまな支援を行っています。たとえば、新規事業に向けた探索活動。レガシー企業でものを動かすことをしているので、それが他にも活かせないかという観点で、探索活動みたいなこともしています。
現場を見ながら経営への提言をして、大きなプロジェクトも動き始めています。年末から来年あたりにはリリースも出てくるかなと思います。

今日はなるべく現場で、経営をしているデザイナーとしての視点で、手触り感のある話ができればと思います。ユーザベースの平野さんからも、キャリアを中心に話してほしいとお願いされています。
私たちは丸井グループのクライアントワークをやりながら、自分たちの会社を経営している。経営のお手伝いをしながら経営をしています。私は事業の方に深く携わっているので丸井グループへのクライアントワーク・事業を中心に、よねさんはMutureのカルチャーづくり、ブランドづくりをやってくれているので、その領域をお話しできればと思います。

Muture設立後デザイナーとしてのスキルが役立ったと感じた場面

よね:
Mutureの立ち上げのところが印象的でした。2022年4月に立ち上がったのですが、丸井グループから3名、Goodpatchから2名が出向。設立4ヶ月前に顔合わせをしました。そこから事業計画をどうするか、会社の思想やミッションをどう設定するか作り上げていきました。
私はブランドエクスペリエンスデザインを直前までやっていたので、まさにその部分で繋がって、延長線上でできたなと感じています。Mutureとして、今後採用をして仲間集めをしていくつもりだったので、立ち上げの直後でも、なぜ私たちは設立して、何をこれから未来にやっていきたいのかということを説明できなければいけなかったのです。お互いの大事にしていきたいことを何度もディスカッションして、作り上げていくことを丁寧にやってきました。
創業期、ここまで言葉や思想やミッションを作り込むのは珍しいケースかなと思います。異なる文化から集まったメンバーなので、思想や価値観のすり合わせを、ちゃんと初期の時に対話できたのはすごいよかったと感じます。カルチャーなどにもブレイクダウンして考えていける。ブランドエクスペリエンスの底力を感じました。

じゃみ:
私の場合はUXデザイナーという肩書きでクライアントワークをやってきて、Muture立ち上げ、丸井グループのDX・組織まで含めた領域で見ていく、とスコープが少し変わっていきました。クライアントワークでSaaSプロダクトを作ったこともありましたが、事業戦略まで理解していないと、うまくカバーできないこともありました。初期の丸井グループの要請で、これをやってほしいというオーダーが来た時に、それをストレートにそれをやりますとなるのではなく、視野を広げて「この組織にいる人はこういうケイパが足りないだろう」「チームとしてこういう変化が必要だろう」等を定義して動き出せたのがよかったかなと思います。
丸井グループは、新卒で入った方がほとんどなので、デザイナーやエンジニアはいない。クロスファンクショナルなチームではない。UXデザインの支援をする時によく行なうような最初のチームビルディングの文化もなかったです。ここはデザイナーの視点がちゃんと活きていたかなと思います。

デザインに加え、経営が加わったことでの変化と苦悩

じゃみ:
私は、丸井グループの合弁子会社の役員。クライアントワークにもそういう立ち位置で入ります。UXデザイナーとして事業領域も考えるようになった。期待されているところって、出てくるアジェンダが全然そんなスコープに収まっていないのです。丸井グループの役員の方から、人材や組織戦略の話なんじゃないか?事業の将来性の話なんじゃないか?みたいなものが容赦なく投げ込まれる。こういう立ち位置・こういう肩書き、というものが強制的に剥がされます。立場的にはデザイナーという肩書きに守られていない。「デザインの力」とスコープを決めずに出せる力は出していこうと、取り組み方が変わっていきました。クライアントサイドからはデザイナーのバックグラウンドの期待感や理解があるけれど、それだけではなくて経営のイシューに応えてくださいという期待もあると感じます。

よね:
Mutureの経営というところでいうと、思想の言語化という話もしましたが、これまでなかった産みの苦しみがあると感じました。Goodpatchでクライアントワークをやっていた時は、ビジョナリーな方の伴走をして、経営者の方の創業の思い、原体験、幼少期に感じたことなどから価値観のヒントを得てクリエイティブやメッセージに落とし込んでいましたが、今回は自分たちの中から出さなければいけない。発想の転換というか、ベクトルを自分に向けないといけないな、と。ここは180度違いました。Mutureの言語化をしていこうと、いろいろ検索して調べてもみましたが、いくら調べても出てこない。ハッと、「自分たちの中からしか出てこないんだ」と気づきました。自分に向き合う時間が圧倒的に増えました。矢印の向き方を意識しました。
加えて、未来に向けてどういうファクトや結果を積み上げていくのかを考えないといけないんですよね。バックキャストで物事を作っていくのですが、私たちが望む未来を描いて、そこからどういう事実やアクションを積み上げれば生み出されるのだろうかと考える。変化と苦悩はそんなところにあったかなと思います。

経営に携わったことで改めて感じた、経営とデザインの親和性が高いポイント

じゃみ:
これはすごく伝えたかったことなんです。

よね:
この中からエピソードトークできそうなものとして、3つくらい話したいですね。

じゃみ:
「構造化・構造理解力」
クライアントワークでやっているデザインの対象は、先ほどから触れている通り組織も含んでいます。それぞれの事情があって、課題が入り組んでいる場面が結構あるんです。みなさん当事者なので、俯瞰して構造的に整理するロールがいない。そこでいろんな人に話を聞きに行って、課題の因果関係を考えて、ここを押すとここが動くんですね、という構造化力が必要です。そもそもある組織体に縛られずに考える力があると思うので、toBの構造を考えることに長けているのもデザイナーの特徴だと思いますし、経営としては嬉しいと思います。

「コンテクストの理解」
グループ会社、事業会社があって、それぞれでシナジーもある。守らなきゃいけない事情があって、そして達成したい目標がある。そんな中で「これをやりましょう」と強引に推し進めることは、きっとうまくいかない。それぞれの立場の理解を深めながら問いを置いていくと、自分たちの目指す方向ってなんだろう?ということに繋がっていきます。対ユーザーだけではなくて、構造を理解し、コンテクストを理解し、問いを投げていって、新しい構造を作っていく。これができるのがデザイナーの力。
あとは、今日デザイナーの方が多いと思うんですけど、デザイナーってロールが決められることも多いかなと。昨日まさに、いいなと思う言葉を見つけたんです。デザイナーの間でよく「越境」と言いますよね。ただそれは与えられている期待値を越えないといけないので結構パワーが必要で、それが難しい状況や立場の人も多いと思います。そこで構造を理解して、”橋をかける” 。越境ではなくて「架橋」みたいなことができれば、無理せずストレスをかけずにいろんな構造変化が起こせるんじゃないかなと思いました。

「抽象と具体の行き来」
日常的に経営レイヤーと話し、現場でプロダクトを触り、ユーザーインタビューをして…あらゆる粒度を仕事で行き来して、現場で起きていることをちゃんと抽象化して経営にフィードバックすることをデザイナーとして得意としています。普通の事業会社でこれができているロールはそう多くないと思います。これができていくと経営としても現場の課題がわかったり打ち手が考えられたり、いいことがあるかなと思います。よねさんも補足があれば、ぜひ。

よね:
私はもともとブランド周りを取り扱っていたので、抽象のものを扱って終わりのことが多かったのですが、組織に実装することをやりたいなと思っています。
具体的に意識しているのはMutureの掲げる「相利共生な未来を実現する」という極めて抽象度の高い思想を、どう組織に実装していくか。具体的な事例をお話しすると、Mutureでは「均衡・包摂・循環」というワードを大切にしていますが、一般的に採用活動においては候補者と企業側が均衡である状態は構造上作りづらいですよね。ここをいかにフラットにして、相手に寄り添った採用体験にしていくかに注力しています。一方的に企業側から情報搾取をしてヒアリングするのではなく、こちら側から先に我々の課題や状況などの情報を提供していく。言動と体験の一致をさせていっている部分です。

結局、経営するデザイナーって?

よね:
抽象度が高い話になりますが、Mutureに来て思ったのは…どんな小さい仕事でもその視座をあげたり、関連するステークホルダーやスコープを広く捉えると、小さい仕事もめちゃくちゃインパクトがある。現場でUIデザインで課題があって、なんでこうなっちゃってるんだろうっていうこともあるけど、なんでなのかどんどん紐解いていくと、組織課題・事業戦略上の課題・経営課題すべてに繋がっていく。いろいろ目の前で起きる違和感を些末にとらえないで、大きく視座を上げて捉えることが大事なのかなと日々感じています。

じゃみ:
はじめから「DX推進」とわかりやすく付いているので、そのオーダーにわかりやすく答えることも大事なのですが…その答え方ですよね。シンプルに受け取ってやってしまう場合、子会社的な、こなしていくだけの、思考しない組織になってしまう分岐点は今まであったなと振り返ると思います。
なんで今のMutureがあるか。丸井グループの変革に動き出したのか。不確実性の高い、得た機会の大きさに対して、我々はちゃんとリミッターを外した思考に持っていけたことが大きいと思います。が、それは機会のきっかけがあったからこそです。私がGoodpatchにいる時もできたはずなんです。自分の組織でリミッターを外す行為って、実はデザイナーにもできるんじゃないかなと思うんです。仮に転職するとしても次の職場でもリミッターを外すことをしていくと思います。

じゃみ:
職種や役割はバイアスになるというか、後押しになることもありますが、狭めるっていう方向で使う必要はないのではないでしょうか。すべてのデザイナーが取り組めることなのではないかなと思っています。

よね:
目の前のことをやるしかないという状況になり、自分がデザイナーだから、これをやってきたから、ということが関係なくなりました。今持っているものの総合力を全部使ってやっていくだけなのかなと。これってどんな職種でも一緒かなと思います。デザイナーだったら、いいものを作りたいはず。プロダクトも組織も会社もそうだと思います。楽しく、いいものを作りたい一心がここにたどり着いたかなと思います。

今後の展望

じゃみ:
おまけとして、Mutureがこんなことしたいです、というお話もさせてください。
デザインの適用範囲が組織に広がって、事業戦略にも適応できるようになった原体験があります。
たとえばですが、丸井グループというレガシー企業で醸成されてきた文化が、時によく作用したり足枷になったことを調整しながら最適応していきうまくいくというパターン認知をすると、地方行政に携わるプレイヤーにも同じペインがあるのではないか、とか。あるいは他の大企業もそうだと思います。我々がせっかく得たナレッジを他のところにも適応していくことで、少しずつデザインの社会貢献価値を上げていく事例が作れるのではないか、というところにも挑戦していきたいと思っています。
私のTwitterとかインスタを見ると、地方に行きまくって地元の人と話しまくっています。探索をしています。何年後になるかわかりませんが、あたたかく見守っていただけたらと思います。

よね:
ジョイントベンチャーは、成り立ちが特殊。創業メンバーは5人いますが、創業2年目で半分ほどが経営者という状況です。私たちの良さ・私たちにしかないものをどう活かして経営していくのかを大事にしています。そして経営の在り方自体もアップデートしていきたいと思っています。
社内で取り組んでいるのは、経営の領域を4象限にわけて担当をつけてお互いに意見を出し合ってフラットにやっていくとか、経営イシューをバックログに積んでアジャイルに解決していく方法を始めています。丸井に対してアジャイル解決支援をしているので、自分たちの会社のイシューも解決していこうと。Mutureだからできるスタイルを模索していきたいなと思っています。

キャリアの話は個人の話なので、参考になる・ならないはあると思いますが、こういう一例として受け取っていただけたら嬉しいです。
今日もセッションいろいろ聞かせていただいて、役割を限定せずに越境していきましょうという話も多かったですが、越境というのも良いですし、「架橋」もデザイナーができることとして素敵だなと思っています。
みなさんのキャリアの「架橋」になれたら嬉しいなと思います。

質疑応答

Q. めちゃくちゃリアルなお話で、すごく勉強になりました。デザイナーの経験やスキルが経営に活きたとのことですが、逆におふたりの持ち物・経験で太刀打ちできなかった、ここが一番しんどかった、ここがストレッチしたなというところがあればお聞きしたいです。

A.
(じゃみ)私の場合は、最終的に「人の感情」でした。長い歴史の中で1-to-1の人の感情。これが事業課題を飛び越えてもつれることがあるので、ここはデザインの力というより粘り強さかなと思います。これはきっとどの職業でも必要かもしれませんが、デザイナーの諦めない力が活きると思います。あとは逆境に感じた時に課題をどう乗り越えるか。

(よね)私はロジカルシンキングが苦手で、感覚派。エモーショナルに寄ってしまうところがあるので、チームでやるというか、足りないところはチームのメンバーに補ってもらったりしています。全部ひとりでやろうとしないこと、チーム前提で動くこともデザイナーの特徴かなと思います。

Q. 狭めているつもりは自身では無いものの、自分には関係ないかなと思って結果として狭めてしまう行動をとってしまうことがあります。意識して行動するにはどうしたら良いか、アドバイスはありますか?

A.
(よね)Mutureの場合は、「開けたらやばそう」というものを見つけたら、あえてニコニコして開けにいく。気持ちの切り替えというか。普通に過ごしていると引力で「関わりたくない」となってしまうので、そういう自分を自覚する、というところがまず第一歩かなと思いました。

(じゃみ)役割の認知の話だと思っていて、なんで狭めているかっていうと、そこに規定している役割っていうのがある一定あると思います。外からの目線が結構重要かなと思うので、他職種や斜めにいる人に壁打ち相手を求めるといいのかなと思います。「あなたってこういうことできるんじゃないの?」という、制限されていない相手の意見を参考にするといいんじゃないかなと思います。

Mutureは共に働く仲間を探しています!

いかがでしたでしょうか!
よねさん、じゃみさんのこれまでの経験が、今のMutureのユニークさに繋がっていることが伝わっていたらとても嬉しいです。
一緒にMutureの組織作り、組織支援に取り組んでいただけるメンバーも絶賛募集中です。特にPdMや、これから共に成長していくアソシエイトPdMの採用に注力しています。ぜひご連絡ください!

✍️この記事を書いた人:あさい/Organization Designer


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