見出し画像

「小説より奇なり」な史実を、素材を活かして調理する

「世界史」を知るために「歴史もの」を書こうと思い立った時、「歴史ファンタジー」や「IFストーリー」でお茶を濁すという選択肢もありました。

(なにせ、世界史初心者(←高校時は日本史選択)ですから。)

しかし、「世界史を学ぶため」という目的を考えれば、ガッツリとリアルな史実に取り組んだ方が「ためになる」に決まっています。

…というわけで、歴史短編オムニバス「恋愛群像ヒストリカ」は、「作者が好きにストーリーを作る」というよりは「史実を調べて、そこから物語を浮かび上がらせる」という手法をとっています。

史実という「縛り」がある以上、主人公の人生の結末は既に決まってしまっていますし、「メリハリが足らないから、ここでもう一波乱入れよう」などといったこともできません。

一見、とても不自由な創作に見えるかも知れませんが…

実はこれがなかなか、刺激的で面白かったりするのです。

何が面白いのかと言うと…ズバリ「事実は小説より奇なり」を地で行くドラマチックな「物語」が、歴史の中にバンバン埋まっているのです。

教科書の歴史は、どんな事件も数行のダイジェストでまとめられていて、ひたすらそれを暗記するばかり。

テスト勉強に苦しんで「歴史なんて、何が面白いのか」と思われていた方も多いと思います。

しかし、実際の歴史は「過去に実在した人物の、人生の軌跡の集合体」なのです。

しかも、歴史上の偉人王侯貴族の人生なわけですから、当然「現代人の我々」の目から見れば、充分に刺激的で劇的です。

おまけに歴史を深く掘れば掘るほど、「創作のヒストリカルな小説」よりもよほど「奇なり」な「現実」が見えてくるのです。

現代の小説投稿サイトでは、貴族令嬢や王女・貴族令息や王子が活躍する小説が山のように溢れていますが…

現実の歴史を調べていくと「下手な小説よりよっぽどドラマチックじゃん」「そこらの主人公より、よほどキャラが濃いじゃん」「逆にドラマチック過ぎて『オリジナル小説』として書いたら『話を作り過ぎ』と思われるレベル」と言いたくなるような事件・人物がザクザク現れます。

しかもそれが、特に期待もしていなかったような人物や時代の裏に、突然現れたりするのです。

たとえば「恋愛群像ヒストリカ(無印)」第1作の「異国へ嫁ぐ王女と、その教育係」…

当初「イギリスに最初に紅茶をもたらした王女」ということで、「政略結婚で異国へ嫁ぐ!」「異文化交流!」「イギリス紅茶のルーツ!」といったイメージで調べ始めたのですが…

この王女様(ポルトガル出身のカタリナ王女)、なんと生まれた時は公爵令嬢で(旧王家の庶子の血を引いてはいましたが…)、父親が王政復古戦争により公爵から王になるという数奇な運命の下、一介の貴族の娘から王女になるという嘘のような人生をたどっています。

おまけに政略結婚相手のイギリス王子がまた、とんでもなく波乱万丈な人生を送っていまして(物語本編でも書いていますが)…

実はイギリスも革命国王が処刑されて「王室がなくなる」という時代が少しだけあったのですが…

まさにそのピンポイントの「王室がなくなっていた時期」と、カタリナ王女とイギリスの王子の婚約時期が重なっているのです!

婚約相手の王子様(父王の死により「新王」を名乗るようになりましたが、王室は無い状態)は、追っ手から逃れ、フランスでの亡命生活を送ります。

婚約者がそんな状態では結婚などできようはずもありません。

その後、イギリス王室は復活し、ふたりの結婚もちゃんと果たされたわけですが…

その頃には既に、新王には愛人ができてしまっていたのです…。

(ちなみにこの新王(チャールズ2世)、愛人の数がとんでもないことでも有名。)

調べてみたら、とても「異国から嫁いだ王女様によってイギリスの食文化が変わりました」などという「ほのぼの」な話では終わらせられなくなっていました…。

(この王子とのカップリングにしてしまうと、王女があまりに可哀想過ぎるので、急遽「架空の教育係」を相手役に用意してみたり…。)

こんな感じで、思いがけない所に「とんでもない史実」が潜んでいるので、やみつきになります。

むしろ「何でこの歴史が知られていないんだ!」と言いたくなるものも多いです。

その「フィクションよりも、よほどドラマチックな史実」を掘り出すのが楽し過ぎるので、わざわざ話を「作る」よりも「ありのままの史実」を「素材を活かして調理する」感じで小説化しています。

(史実だけでは足りない部分は、創作を加えてしまっていたりもしますが…基本的には史実重視の姿勢です。)

できることなら「生きた歴史の楽しさ(そして哀しさ)」を、読者の皆さまにも伝えられたら良いなぁ…と思って書いています。



この記事が参加している募集

世界史がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?