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予備知識ナシでも楽しめる歴史小説

恋愛群像ヒストリカ」は、歴史小説でありながら、固有名詞をほぼ一切出していません。

(唯一出しているのが、過去の哲人として登場する「ソクラテス」のみ。「ダモクレスの剣」は故事扱いのため固有名詞にカウントせず。)
 
それはこのシリーズの目標が「歴史の予備知識が無くても楽しめる歴史小説」だからです。
 
1つ1つの物語が短い「短編小説」となっているのも、その一環です。
 
「世界史なんて難しそう」「知識も無いし、分からないんじゃないかな…」という読者様でも読んでいただけるよう、いろいろ工夫しているのです。
 
そもそもヨーロッパ史というものは、人名のバリエーションが少ないため、非常に「ややこしい」のです。
 
子が父や母の名をそのまま受け継ぐ(○○1世、○○2世…etc)のはもちろん、嫁ぎ先に同名の親族がいたり、敵対する者同士が同じ名前だったり(マティルダVSマティルダetc…)、同時代に同じ名の王が別々の国に複数いる挙句「二つ名」まで同じだったりするのです(14世紀後半、イベリア半島にはポルトガル、アラゴン、カスティーリャの3人の「残酷王ペドロ」がいました)。
 
<関連記事→外部ブログ「ネット小説の作り方|小説資料調べで苦労すること~西洋史はややこしい~」

その辺り、どんなに上手く書いても混乱は必至でしょうし、読者の頭を「人名や固有名詞、歴史用語を覚えるだけでいっぱいいっぱい」にしたくはなかったのです。
 
なぜなら、個人的に「人間の頭は、一度にそんなに多くの作業はできないのではないか?」という思いがあるからです。
 
(もちろん、人間は「2つ以上のことを同時にやる」とうことを普通に出来るわけですが、その場合、1つのことを集中してやるよりも、1つ1つにかけるエネルギーが減ってしまう気がするのです。)
 
読者の頭が「新しく出て来た歴史用語を覚える」ことに占められてしまえば、ストーリーを楽しんだり、登場人物の心の機微を味わう余裕がなくなってしまう(減ってしまう)気がするのです。
 
なので、このシリーズでは、そういう「知識」はできるだけバッサリ省いています。
 
そして「昔々あるところに…」で始まる「おとぎ話」のように、どこの国ともとれない、いつの時代とも知れない、ある姫や貴族の恋物語…という風に読めるような書き方をしています。
 
こういう書き方をしてしまうと「歴史小説」らしくはないかも知れません。
 
ですが、自分が書きたいのは「どこの国で、いつの時代に、どんな事件が起きた」ということではなく、「どんな国でも、いつの時代でも、誰にでも起こり得る、普遍的な人間ドラマ」ですので、固有名詞や細かな知識は、必ずしも必要ではないのです。
 
とは言え、実はこれ、書く側にとってはなかなか「しんどい」書き方なのですが…。
 
固有名詞を一切出さずに複数の登場人物を「書き分ける」には、それ相応の文章力が必要です。
 
下手をすると、「素直に固有名詞を出していれば良かった」と思ってしまうほどです…。
 
しかし「固有名詞を出さない」が、このシリーズの目標で「実験的試み」ですので、仕方ありません。
 
ちなみに、歴史好きな方が物足りない思いをしないよう、ブログ版下部補足や「もくじ」ページに、それぞれの物語の登場人物や用語の詳細解説を設けています。
 
(何気に、この解説だけでコンテンツとして成立するのではないかというくらい、ディープでマニアックな解説コーナーになっています。)





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