理想ではなく現実を 善ではなく悪を
私には善が分からない。私は自分が欲している未来など存在しないことだけは理解している。
人々は「世界中の人間が幸福になった世界」を理想像に置きたがる。だが、私が想像する「世界中の人間が幸福になった世界」の中に、私という人間はいない。私は人間の不幸が好きだ。自分の不幸が好きだし、他の人の、他の人自身の不幸が好きだ。当人の不幸は尊重されるべきだ。
しかし私には、彼らの言う「世界中の人間が幸福になった世界」以上に魅力的な理想像を描き出す能力が欠けている。どれだけ自分の望む世界