デジタル音楽配信サービスは一体どこを選べばよいのか?レーベル運営の一助になる話
もしあなたがオリジナルな音楽を作っている人なら、自分で作った楽曲をきっと誰かに聴いてもらいたくなるのは当然でしょう。その楽曲を誰かに聞いてもらう方法として、世の中には大きく2つの方法があります。ひとつは誰かがやっているレコード会社やレーベルへ自分のデモを送ってリリースの契約をする方法。もう一つは自分でレーベルを作って、世界中のどこかにいるであろう、その楽曲を気に入ってくれる誰かを見つけて届ける方法の2つです。
最近では、FacebookやTwitterなどのSNSの普及でミュージシャンとファンとの距離が縮まり、直接コミュニケーションでき、口コミがされやすい環境があります。また、テクノロジーの発達で自分の曲をファンへ届けるのに、昔ほど手間やコストがかからなくなっています。こうした時代の移り変わりのなかで、ミュージシャンは必ずしも誰かが運営するレコード会社やレーベルと契約せずとも、自分1人の力で、世界中のどこかにいるであろう、あなたの音楽を気に入ってくれる誰かを見つけて、直接届けることができるようになってきています。
今回は、そんな1人で頑張ろうとしているミュージシャンのために、どのような手段で世界中の人へ届けると良いかと言うことについて書きます。
筆者プロフィール
エレクトロニックミュージックのウィークエンドミュージシャン。
2002年、Zombie Nationの変態エレクトロレーベル、DEKATHLON Records(ドイツ/ミュンヘン)から”Hsart ep”でデビュー。 その後、国内外問わず様々なレーベルから作品をリリース。2007年夏には、石野卓球氏が主宰するレーベル”Platik”初のコンピレーションアルバム”GATHERING TRAXXX VOL.1″へ参加。 2008年はじめには自身のレーベル”CODONA“を立ち上げ、レーベルワークも精力的に活動を展開。 DJとしてはヨーロッパなどでも精力的に活動し、国内ではWIRE出演で知られるダンスパフォーマンスチーム迷彩が主催する”MITTE”や、フェティッシュ系パーティーの”Tokyo Decadance”でレジデントを勤めるなど、幅広く活動している。 2011年1月末には1stアルバム”STRATUM”をリリースしDOMMUNEでのライブも好評を博す。また、W2X名義ではChiptuneを作り、スクウェア・エニックスが公式で出すファイナルファンタジーのピコピコアレンジコンピに参加などの経歴を持つ。
生業は、写真を扱うベンチャーの事業成長が任務。創業当初から関わり、カジュアルフォトブックという低価格帯のフォトブックの新規市場開拓に尽力。頭の天辺から足の爪先まで気を配りながら運営を行い、サービス・アプリの企画、設計からUI・UXなど多岐にわたる業務に携わります。
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ミュージシャンのビジネスモデルとは
ミュージシャンのビジネスモデル(売上や利益を生み出す仕組み)はどんなものでしょうか。ミュージシャンのビジネスモデルを上図に表してみました。なお、わかりやすくするためにかなりシンプルにしてあります。もしあなたが金銭的対価に興味がなかったり、ボランティアで音楽をやろうと思っていたりする場合は、ここを読み飛ばしても良いでしょう。
ミュージシャンが対価を得る方法は大きく3つあります。
1. 楽曲を作ることです。楽曲は録音してCDやレコードなどの物にする方法と、デジタルデータをダウンロードやストリーミング配信にしてファンへ届ける方法の2つがあります。
2. 作られた楽曲をライブ演奏することです。ライブ演奏も実際にファンを会場に集める方法と、インターネットを通じてオンラインで配信する方法の2つがあります。
3. 最後は物販で、ミュージシャン自身、楽曲や演奏に関わるものを商品化することです。例えば、楽曲を譜面にするとか、ライブ演奏の録画映像をDVDにするとかなどです。
この他、上図には書かれていませんが、楽曲が映画に使用されるとか、ミュージシャン自身がドラマに出演するとかなどの方法もあります。
多くのファンへ楽曲を届ける方法
前述のミュージシャンのビジネスモデルの項目では、楽曲をCDやレコードなど物にする方法(フィジカル)とデジタルデータをダウンロードやストリーミング配信(デジタル)にする方法の2つがあると書きました。ここではより具体的にファンへどのように楽曲を届けられるかについて書きます。
CDやレコードなどフィジカルにする場合は、まずそれぞれのメディアに合わせたマスタリングが必要になります。マスタリングが済んだら、CDやレコードならプレス工場で生産をします。実際に物ができあがるとあなたの楽曲を販売してくれる店舗へ届けられ店頭へ並びます。そしてファンはようやくあなたの楽曲を手にとることができます。
ここで、もしあなたがレコード会社へ所属していないのならば、工場での生産や各店舗などへの物流の手配は、すべて自分で行わなければなりません。もしあなたにCDやレコードなどのメディアにあったマスタリング技術がなければ、その道のプロへ依頼するといったことも行う必要があります。また、あなたの音楽を広く聴いてもらいたいと望むなら、自分の足で楽曲を置いてくれる店舗をみつけるよりも、店舗を束ねた流通網を持っているディストリビューターと契約する方が早いでしょう。ディストリビューターとの契約には、あなたの楽曲がどれくらい売れるかや、今後どれくらいリリースする計画があるかなど、厳しい目でみられるので覚悟が必要です。
フィジカルのメリットはその物がファンの手元にあるということが一番強く、デジタルに比べてファンとの絆を強固なものにしてくれます。また、1つあたりの価格がデジタルと比べて高いので、売れた時の実入りのインパクトが大きいです。デメリットとしては、物を作るためにある程度初期投資が必要になるので、元手が少ない場合にはどんなに良い楽曲ができたとしても、ファンへ届けられる数に制限がでてきます。また、売れなかった場合に在庫を抱えるというリスクもあります。最悪自分の部屋が在庫でいっぱいになってしまうというようなこともあります。この他、昨今スマホの普及でCDは手軽に聴きにくいという面があります。もちろんそれが良いと言う人もいますが、レコードに至ってはさらに聞き手に手間がかかります。
一方、ダウンロードやストリーミング配信などのデジタルの場合、気軽に聴ける分、フィジカルとは反対にファンとの絆が希薄になりやすく、SNSなどを利用してファンとコミュニケーションを取る必要があります。しかし、実入りのインパクトは小さいですが利益率は高く、デジタルで完結するので、物を作るための初期投資や物流網が不要です。売れ残って在庫で部屋がいっぱいになる心配もありません。
さて、ここまで読んであなたは駆け出しのミュージシャンが取るべき手段はどちらだと思いますか?私は断然デジタル配信をオススメします。その理由は初期投資額も小さくできますし、リスクを低く始めることができるからです。なんなら思い立って始めた結果、もし失敗しても失うものはほとんどありません。ここで悩んでいるなら、今すぐ始めた方が良いでしょう。成功してからでもフィジカルに挑戦するのは遅くありません。
デジタル配信サービスの検討
ただ単にあなたが自分の楽曲を聴いて欲しいだけであれば、YouTubeやSoundcloudなどのサービスを使って楽曲を簡単に配信してインターネット上で聴いてもらえるでしょう。その際、あなたが決めた最高のレーベル名でアカウントを作れば、あなたにとって唯一無二のレーベルが爆誕します。
しかしミュージシャンならば、丹精込めて作った楽曲をApple MusicやSpotifyなどのメジャーなサービスで聴けるようにしたいと誰しも一度は思うでしょう。前述の方法では対価を一銭も得ることができませんが、後述の有料コンテンツに記載の方法なら対価を得ることができます。また、このハードルは近年だいぶ下がったと思います。
ここから先は、有料コンテンツになります。有料版をご購入いただくと、以下の内容をご覧いただけます。
・デジタルディストリビューターをみつけるポイント
・主要な17のデジタルディストリビューター仕様一覧
・どのデジタルディストリビューターを選べば良いのか
・デジタル配信をする際おこなう事前準備は何か
・どうやってプロモーションしたら良いか
・何を重要な指標として、どう結果と向き合うべきか
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