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感想 黄金蝶を追って 相川英輔 発想豊かなSF短編集。優しいタッチが好み。


発想力豊かなSF短編集でした。
もしも・・・の世界を描いた奇妙な話しです。

もしも日曜の次の日が“自分だけの一日”だったら?
買ったマンションに前の持ち主が“同居”していたら?
描いたものが動き出す“魔法の鉛筆”を手に入れたら?


中古マンションを購入したら、前の住民の霊が出没するようになったという設定の ハミングバード
この作品はアメリカで書評を紹介されたという話しでした。

ただ、この作品よりも表題作の黄金蝶を追ってが素晴らしく
子供の時、学校の壁画作成の時間に素晴らしい黄金蝶の絵を描いた友達に、書いたものが実体化する鉛筆を貰い。彼が過激派に、主人公が絵の仕事につきつつも文通を繰り返し、主人公は過激派の友に励まされるという話しなのです。主人公は、あくまで絵の上達のために鉛筆を使います。悪用しないのがいい。この優しい交流が素晴らしい。

他に、日曜日の翌日はいつもという作品もいい。
オリンピック候補の水泳選手が主人公です。
彼にだけ日曜日の翌日の日があるという無理設定。
典型的なもしもの世界です。

この作品が、この作品群の中では秀逸です。
女子マネージャーの女の子との交流が微笑ましく
二人で夜を越すと、二人とも休日の世界に入り込んでいきます
彼女のために、ストイックに、この休日を使い水泳の特訓をする様もよく
最後は、この世界から抜け出せなくなり、それでも水泳を続ける
そして、ついに日本のタイムレコードを超える
その瞬間、声がかかる。
それは、たぶん彼女だと思うんです。


2023 9 10



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