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書評 惡の華 押見修造  インパクト強烈。変態とは何なのだろう。ちょっと考えてしまう・・・。


映画を見るために再読しました。
文章だけより絵があるほうが、やはりインパクトが強い
衝撃的な作品です。
当然ですが、映画より原作が圧倒的に上。


冒頭、嫌味な教師に仲村さんは暴言を浴びせかける

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うっせー、くそむしが


中学生の春日高男はクラスメートの佐伯さんに憧れていた
放課後、彼女の体操着を盗むところをクラスメートの仲村さんに目撃され
奴隷みたいにされる
佐伯さんの体操着をきたままで彼女とデートしろ、キスしろと命じられるが
彼は告白してしまいokを貰うが
罪の意識から教室で自分の犯罪を暴露するも
その落書きの名前のところだけわからなくなっていた
だが、そんな彼の悪事は佐伯さんにバレてしまう
しかし、彼女はそんな彼に嬉しいと・・・

前半のあらすじだけ書くとこんな感じ・・・

絵がきれいで読みやすい。
かなり過激、インパクトの強いシーンが続いて行く
後半だれていくイメージです。

この作品のタイトルの悪の華は明らかにボートレールの詩集からの発想だが
僕は中学の時に読んだので忘れてしまった。

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この作品の場合は
悪の華は、好きな女の子の体操着だと思う

これを盗んだこと・・・
それが悪のはじまり

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それを目撃された
最悪なのは、この目撃者の佐伯さんがド変態

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どんどん深みにはまっていく・・・
デートの時、彼女の体操着を着ろと命令されて
そうする

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このシーンが一番すごいな
普通やらん

告白しOkもらうが、ばれるのですよ
体操服を泥棒したこと
なのに、彼女はこんなことを言う
許す

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嬉しかったって言うんです。

僕の友人に好きな女の子の飲みさしのジュースを持って帰ろうとして
それがばれた奴がいる
なのに、彼女はその変態行為を
愛。深い愛と解釈し
そんなに好きでいてくれるなら、私も君を好きになると
二人は付き合い始めたのでした。

つまり愛は理不尽
悪も理不尽

変態という言葉を佐伯さんは連呼する
変態が見たい
春日君は変態だと

しかし、変態とは理解不能な何かを表現するための都合のよい概念みたいに思えるのです。


ずっと叫び声をあげてた  私の下の方の変態が
私にはわからないコトバで叫び声をあげていた


この仲村さんの台詞の中に、彼女の抱え込んでいる
誰にも言語化できない想いがある。
分かって欲しい。共感して欲しいと彼女は叫んでいるのだ。

人間の中には、正義だけでなく、逆な部分も存在して
友達が失恋したら、楽しいみたいなダークな感情もあるし
春日みたいな、好きな女の子の体操着に触れたい持ち帰りたい
そういう悪も存在する。
でも、普通の人はその感情に葛藤する。
混乱する。声にできない声に悩み続けて自分を世界の不適合者などと烙印を押したりするのだ。

春日くんにはねかえって 私その叫び声の言っていることがわかった 聞こえた。「出たい」 「出せ」 「出して」 「どこ?」 「出口はどこ?」 「向こう側はどこ?」でもわかった  向こう側なんて無い こっち側もない 何もない。
クソムシも変態もない もう・・・何も無い。

自分のことも、感情もよくわかんない。

自分の中にある腐った部分と向き合うと
とても辛い
自分だけが他人と違うのではと思ってしまう

大人になると理性で抑圧し欲望を解放などしない
それはいけないことだからだ。

でも、そういう感情がどこかに存在していて
それをこの物語は示している
それは悪なのか。
好きな女の子の持ち物に触れたいという欲求は
悪の種子だったのか。
それは開花し、最後には祭でのあの事件へと発展していくのである。

2021年3月7日



















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