感想 哲学の蠅 吉村萬壱 とにかく強烈なんで勇気のない人は読むべからず。ある意味、これは人生を揺るがす名著です。
強烈でした。エッセイということですが、私小説でしょう。そこに哲学を絡ませている。自ら哲学に絡まりにいっている。混沌というのか汚というのか、衝撃的な読書体験でした。
冒頭、激しい異常な母親の虐待からはじまり、よくありがちな子供による虫殺し、犬殺し。大きくなってからは、女をまるで物みたいに扱い。変態行為の数々。この人芥川賞作家で、元教師。しかし、その実態はヤバい人。とてつもなくヤバい人でした。しかし、そこで語られる哲学というか生き様や考え方はとても面白かった。この本と出合えて良かったと思います。
o君という友達をいじめた吉村少年の異常さを示すこの文章が怖い。
母親の虐待が、吉村少年をサイコパスにしたのだった。
学生時代に先生に言われた言葉が、吉村少年の精神性の背景になったのは確かだ。
二-チェとの出会いも彼を変えたと思う
ありのままの赤裸々な自分を友の前でさらけ出す
そういう考えにも反発する
これも二-チェの影響かな
ありのまま人間なんか、それは醜悪でしかない。
人は誰かといる時、それに適した仮面をかぶっているもので、そうすることにより円滑な関係性が保てるわけであり、小さな暴君に付き合う暇人などこの世界には存在しないのだと吉村さんは二-チェから学んだ。
吉村さんは、フランクフルの夜と霧のような悲惨な文学作品や映画をたくさん見たり読んだりした。
普通は、嫌悪感とかを暴力に感じるのだが・・・
これは幼少期の屈折がもたらしたものか。
友達にこんなことを言われる
この言葉がとても印象的だった。
吉村さんのこれも名言です。
これは深い言葉です。
知らないのに知ったふりしているような人が、どんなに多いことか。
知らないのなら学べばいい。聞けばいい。
でなければ沈黙すべきだ。
教員養成大学の学生の時に一人旅行した感想も面白い。
これはカミュの言葉だ。これも印象深い話しだ。
人は自分の価値を他者からの評価で確定している。それは他者に依存した価値である。それは自分の価値ではないと吉村さんは言う。
フォロアーの数とか、勤めている企業の名前とか、お金持ちとか
他者から誉めてもらえなきゃ自分に価値がないとか、そんなのおかしいということです。
大切なことは自分に固有の価値の創造ですと作者は言う。
いきなり、社会の教師をしていた時の話しになり
自分の変態ぶりを開陳するところがある
まるで不良少年ですね。やってはいけないことをやることで自分は他者とは違うと示す。
これが俺のアイデンティティーですみたいな。それを社会人になってからもしていたのが変。
私小説を描くことについての芥川賞作家の車谷さんの話しは面白い。
このエッセイじたい。この車谷さんの引用文の私小説そのものであり、それは狂気に近いと思う。
人はみんな、世間体とか常識に囚われている。
それについて作者が述べているところが面白かった。
この発想も面白かった。
馴染みのある の ですら油断すると意味不明な記号になってしまう。だから力づくで当たり前を維持し続けなくてはならないと思っている。
何かまとまりのない私小説であり、哲学でもある。
インパクトは強烈。
やたらと僕の心に爪痕残していきました。
また、再読したい、そんな本でした。
2022 3 19
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?