見出し画像

書評 100日後きみのいない春が来る。 miNato  難病ものは、主人公のキャラが、いかに純粋かによって成否が別れるのです。

ダウンロード (22)

臆病な「ふう」と人気者だが難病にかかっている「千冬」の恋愛もの。
難病ものです・・・。

主人公の女子高生「ふう」がよく描けていた。

嫌われたくなくて誰にでもいい顔をしてしまう。余計な波風が立たないように相手に合わせて穏便にすませようとする。


「ふう」は空っぽだ。
母親が病弱な弟ばかりかまっているのもあり
自分の存在価値が見いだせない。
だから、自分に自信がない。無意識に他人と調和しようとする。典型的な無気力な少女である。

「千冬」はサッカーの元人気選手でクラスの人気者。
他人に嫌われることなど気にしない。

「ふう」と「千冬」は真反対だ。
二人は子供の頃からの知り合い。幼馴染であり、ふうにとっては初恋の相手
現在進行系の片思い中

「ふう」が空っぽになったのは、どうやら大好きな絵を母親に否定されたからのようだ。

絵なんか将来なんの役にもたたないじゃない

子供の可能性を潰すのは、たいていは無知な大人だ。
ふうは、そんなこともあり絵を辞めていた。
そんな彼女の絵を好きだと千冬は言う。

母親によって潰された自我が
想い人によって復活していく
これは「ふう」の再生の物語でもあるのだ。

その様は、とても心地よく
それをたぶん、僕たちは自立と呼ぶ。
その先に広がる景色は澄んだ青空のような景色だ。

嫌われたくないから、気持ちを語らない
それは解決方法にはならない
相手にとって都合の良いだけの存在なのだ。
そんな存在の人間に相手が敬意を払ってくれるわけはないじゃないか。

ふうが、母親に反抗した場面
あそこが新しいふうの始まりに思えた

それは「ふう」が「千冬」によって
彼を好きになり彼と接することで変わったからだと思う

にしても、難病ものは切ない・・・
死ぬとわかっていても胸が苦しくなる
思わず「ふう」よ、頑張れと励ましたくなる。
そんな物語だった。

2021 5 31




この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?