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感想 心臓の王国 竹宮 ゆゆこ 自称アストラル神威。彼は『せいしゅん』するために越して来た留学生。彼らの濃厚な青春を目撃してください。

評判どおりぶっ飛んでいて楽しかった。
中身はほぼなし。
エンタメです。


うーちゃんを処刑したくなりました。




なんかやばい話しに思えたかもしれませんが
処刑とは、抱きしめること。
うーちゃんは心臓に重篤な病を持った七歳児

彼の兄は高校生 鬼島剛太郎。
スイカ畑でのバイトの帰り橋の上で、自称アストラル神威と出会う。
思わず自分を、にしうりうれたろう  と名乗ってしまう。


彼は『せいしゅん』するために越して来た留学生だった。

本書は、彼らの濃厚な青春物語だ。

ツボエピソードがある。

ガリクソというあだ名の優等生の女子がいる。
この子は、剛太郎といい関係になる女子だ。

母親が難病で、妹が難病の剛太郎と同じ境遇だった。
かわいそうな奴と二人は自分たちをカテゴライズしている。

そんなガリクソが、私はもてたいと言い出す。
次の文化祭に病気の母が来る。だから安心させたいのだ。

で、クラス全員で盛り上げることになる。

出し物は合唱だが、その間に男子全員から彼女は告白されるという企画だ。

担任の提案で、ネルトンという番組が昔あったらしく
その形式を取る

告白し、異議がある人が、ちょっと待ったと名乗り出てくる形式で
ガリクソをもてさせるという企画

全編がこういう感じの、おバカなアオハルものですが

このアストラル神威が実は臓器牧場の羊だったとわかる
片目がない、腹には多数の手術痕

ここまでくると、何が何だかわからないのですが
後半は、かなりシリアスモードな展開です。

気楽に下品な高校生たちの恋や友情を楽しむという視線で読むといいと思います。
臓器移植についての意見とかは、あまりピンとこなかった。

誰かの痛みを正面から受け止めてしまう無防備さをアストラル神威は持っています。
それは無意識に臓器を提供していたことからくるのもある。
誰かの役に立つために生きる子。
でないと生きる価値がないと洗脳されている。

彼は純粋です。
そういう壊れやすくて、とても貴重なものを、無自覚に持っているのです。

だからこそ、ガリクソを救いたいとか本気で考えます。

そのキラキラしている感覚が本書の魅力です
読んでいて、何か自分が失ったものとか発見できるかもしれません。
僕は、この作品が好きです。


2023 8 20



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