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書評 ぐるり 高橋久美子  これはタレント本なんかじゃないよ。小説として普通におもしろいよ。

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本の表紙に注目
奈良美智さんですよ。
インパクトありますよね。

そして、西加奈子さんの紹介文

鳥の目線ではなく、もちろん神の目線でもなく、もしかしたら作家の目線でもない。まるっきり人間の目線で、人間のすぐ隣にいながら、これを書いている。

――西加奈子

新人作家高橋久美子って何者?

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そう、女子ロックバンド チャットモンチー の元ドラムの人ですよ。
シャングリラあれは名曲だった・・・

その高橋さんの小説です。
短編集で、1つ1つの話しはシンプルで短い
話しの登場人物が他の話しと繋がっていて
それで相乗効果のようなものを出しています

良かった作品は、「柿泥棒」
これは東京に住む平凡な主婦のところに田舎の親友が泊まりに来て
近所で柿がいっぱいなってるの見つけるのです
それを高枝切り鋏で切って盗みます

誰にも相手にされない都会の柿はそのまま朽ち果てて地面の養分になるだけでした。
その柿は主人公の比喩なのだろうと思う
それを盗みに来た親友
盗みというタブーを犯すことで
彼女の平和な日常にさざ波がたつ
ものがたりのオチは切れ味抜群でした。

美くしい人 という話しも面白くて
しごとをサボって入った名曲喫茶に横顔がきれいな美しい人がいた
その人は妻に似ていたが、家に帰って妻を見ると・・・
別の話しに、私の狂奏曲 というのがあり
この名曲喫茶にいたのが、その人の妻とわかる
彼女には、昔、そこでちょっとしたロマンスがあったのです。
さらに、最後のほうの話しでラジオで、その妻の想い人が音楽家として成功してて
今度、その名曲喫茶に行こうと思っていると・・・・

こんな風に、物語が別の物語と後で絡んできたりして面白い。
他にも、指輪物語なんかもおもしろくて
とにかく、話しは多岐にわたっていて
ミステリーに、ノスタルジー、近未来SFと楽しい。

私の彼方 という作品に面白い言葉が・・・


ちゃんと顔見なきゃ。捕まえてないと、自分のこと。簡単に変わっていっちゃうからさ。知らないうちに知らない自分になっていることってあるんだよ

人は常に変化していて、それは他人だけでなく自分も。
それを忘れてしまうから駄目なんです。
大切な人の愛情を失う時、姿形だけでなくて心も常に変化している
そのことを忘れているからだと思います

そのことを問題定義していた小説群でした。


読んで損はないと思います。

2021 5 24



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