見出し画像

感想 きょうのできごと 柴崎友香 普通の一日なんだけど、もう二度と出会えない一日がそこにあった。



あの時代、普通に過ごしていた時間が、実は、もう二度と訪れることのない宝石みたいな時間だったと、この小説を読むたびに感じる。
たぶん、僕は三回はこの小説を読んでいます。

友達の引っ越し祝いでみんなが集まり騒ぐ話し
その前後を5つの短編でつづっている きょうのできごと と、その続編です。

厳密に言うと、きょうのできごと ではない。
24時間の出来事です。3/24と3/25の二日にまたいでいます。
0時を過ぎると次の日です。
でも、パーティの途中で時間なんか気にしない。
時間を気にするのは大人の感覚です。
学生の感覚だと、これは きょうのできごと なのです。

時系列がバラバラなのが良い。
この構図が後で響いてきます。

好きなエピソードは、はじめて会った名前もよくわからない緑色のセーターの人
恋人の友人なのですが、彼の頭を酔って散髪しハチャメチャにしてしまうところ
続いて、イケメンの男の子も散髪するが、こっちは丁寧にやり成功する

モチベーションの問題なんだけど、こういうのはありなのです。
好き嫌いで態度を変える。
そうでした。学生時代はそうでした。

そのイケメン君が動物園デートする話し、これはパーティの数時間前
串カツを食べることを期待していた恋人に、これから京都に行かねばと告げ喧嘩になるのですが
そのちょっとしたエピソードが微笑ましい
あの当時は、僕もくだらないことで喧嘩をよくしてました。
それが妙に懐かしい。

パーティの後、車で帰宅。その車中で、けいと が好きだった豊野君のことを思い出し
彼が和歌山に今から行きたいと言い出した話しも面白かった。
どこに行きたいと聞くと、彼は暑いから梅田のコンビニと言う。その後、和歌山に行きたいって突拍子もないことを言うのです。
懐かしくなり通っていた高校の近くを散歩したりする。
こういうのって、この時代しかできない気がする。

きょうのできごとのつづきのできごと という短編にある
けいとの言葉が好きだ

好きじゃない人が自分のこと気にいっていることもなんか気持ち悪い。それに、好きじゃないって思っている人でも、いっしょにおるうちにちょっと好きになるかもしれへんやん?


だから、付き合う人は自分が好きになった人だけで
相手から告白されても拒絶する

好きでもなかったのに、一緒にいると良く思えてくる

理由は説明できないけど感覚として気持ち悪い。


僕も学生時代はこういう感覚だったのを思い出した。
知らない女の子が知らない間に自分を好きになっている見つめている
そういうのが気持ち悪かった。

でも、そんなのは大人になると感じなくなる。
懐かしい失われた感覚
忘れてしまった良い記憶です。

この本を読むと、昔の自分を思い出すことができる。
だから好きです。

2023 2 17



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?