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書評 人間であることをやめるな  半藤 一利   今年の1月に亡くなられた半藤さんのエッセイ。歴史に学べという著者のスピリットを感じる。

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今年1月になくなった著者の遺作

──ことし1月12日に長逝された半藤一利さんが生涯の最後まで訴え続けたこと。それは「歴史に学べ」ということでした。本書は半藤さんがものした数多くの文章や講演から、そのエッセンスを集約したものです。      明治人のリアリズム、大正期の石橋湛山が示す理想のパワー、昭和天皇の懊悩、そして宮崎駿の投げかける問い。昭和史研究の第一人者が残した軽妙にみえて重い言葉です。


 坂本龍馬、司馬遼太郎の小説、日露戦争、石橋湛山、昭和天皇と戦争、宮崎駿と内容はバラエティーに富んでいた。
 気になった話しを少し紹介したい。

「歴史を俯瞰する」
この見方がおもしろい。歴史をビルの上から景色を眺めるように見るイメージ。この司馬遼太郎の視点を半藤さんは好んだ。大切な視点だと思う。

 日露戦争というと日本海海戦だ。東郷平八郎が丁字戦法で世界最強のロシアのバルチック艦隊を撃破したと司馬遼太郎も小説に書いているし、いろんな本の中でも紹介されている。僕も丁字戦法がすごいと思っていた。しかし、実際はそれだと全滅できないので違う作戦をとったのだそうだ。

 日露戦争は日本では華々しい勝利だと報道されていたが、本当はギリギリの勝利だった。
 それを政府は国民に隠した。
 その後の日本の拡大主義は、この事実をきちんと報道されず変テコな幻想を国民に抱かせた、これが関与しているのではという考え方賛同する。

 石橋湛山は名前だけは知っていた。小日本主義とか、そういう話しだが、これは帝国主義の否定。大日本主義の反対だった。具体的には、帝国主義の否定だ。第一次大戦の時、日本は敵国のドイツ領の中国の租借地青島を攻めて自分のものにした。これや清国に対して行った対華21箇条の要求を、いかにも自分勝手な帝国主義と非難している。帝国主義は弱肉強食だが、それはいけない。そういう視線を石橋は持っていた半世紀先の視線を持っていた人だった。

 新聞で満州事変を知った天皇の側近が、それを天皇に報告したという文章が残っているらしい。
統帥権とか形だけで、すべて軍部が事後報告していたのが伺える。

2021年 5月 18日



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