見出し画像

感想 テスカトリポカ  佐藤 究  圧倒的な筆力と残酷性。これぞ犯罪小説という感じでした。

画像1

主人公が移民です。
メキシコ。ルーツにアステカ文明がある。
アステカの神話を祖母に聞かされていたバルミロ
彼の父は、麻薬の密売集団にはめられて殺され会社を奪われた。

医師の末永。
彼は、日本で挫折した医者である。

この二人がジャカルタで出会った。


日本の川崎に住む土方コシモ
父がヤクザで、母は亡命メキシコ人
この母の口癖が・・・


「どんな悪い男だろうと、メキシコの麻薬密売人よりはましだわ」


バルミロと末永は、心臓移植に目をつける。
臓器売買だ。

フリースクールを乗っ取り、無国籍の子供たちを保護する。
その子らから心臓をえぐり取り売るのだ。
臓器売買。

その発想の背景には、アステカ文明の テスカトリポカ という神があった。
アステカの人たちは、神に生贄を差し出していた。
神は人の心臓を食らうのだ。
その対価として人々に平和をもたらすのである。

人の皮を黒曜石のナイフではぎ、心臓を抉り出す。
人皮を被り儀式を行う。

人の世は、常に生贄を求めている。それが神の意思だ。

バルミロにしても、バルミロの下で働くコシモにしても、このアステカの神を求めている。
まるで子供が母親を求めるかのようである。

子供たちを切り刻み生贄にすることを少しも疑っていない。
それに罪悪感を感じていない。

これは、アステカの人身御供の儀式を現代によみがえらせたということだろうか。
それが目的なのか。

バルミロもコシモも助けを求めている。
もしかすると、二人は神に近づこうとしたのではなかろうか。
いや、バルミロは自らが神になろうとしたのかもしれない。

神になどなれるものか。
そもそも神など存在するものか。

とにかくめっちゃ面白かった。
グロい描写ばかりだが、暗黒小説というのは、こういうものなのでしょう。
この作品に直木賞を与えた選考委員は見る目があるなと思った。



2022 12 18
* * * * *


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?