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感想 塞王の楯 今村翔吾 石垣作りの職人たちが主人公という視点もいいし、臨場感がたまらない。


本書の魅力は二つ。
視点の面白さと、臨場感だった。

テーマは、矛盾。
石垣作りの集団の長である塞王と呼ばれた男を養父に持つ若き天才の物語だ。
彼は最強の盾を作ることが目的だ。
人の生命が奪われない城

「世の戦を絶えさせたい」
「そのようなこと……」
 玲次が呆れたように言うが、匡介は想いを吐露するように続けた。
「何度攻めても、兵を損じるだけならばどうする」
「それは……もう攻めようとしないだろうな」



それに対して、最強の矛を作る国友衆の鉄砲鍛冶集団の長の養子
こちらが彼のライバルである。

最強の盾と最強の矛の闘い
だから、臨場感がたまらない

とくに、大津城を水城に変えた工夫とか
西軍四万の大軍と3000の兵で戦う様
大砲を至近距離で撃たれる
それも国友衆の最新鋭の大砲です
それに対して、彼らは石垣で邪魔をする
壊されても、作り直す
その繰り返し
その執念がたまらない

この臨場感を支える細部の描写が秀逸
鉄砲の知識、石垣作りの知識
すごく面白い。

隠されたモチーフとして、武田信玄の名言「人は石垣、人は城」があると感じました。
ようするに人なのです。

直木賞に相応しい作品だと思います。




2023 925



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