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『三宅雪嶺人生訓』一六

https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/933730/1/21

〇順逆風と無風
 事業は力の発現にして、力の発現は概ね人に益す。正義の力あり、邪悪の力あれど、帆船々長の最も苦むは無風にして、順風を喜ぶは勿論、逆風とて利用するに道あり。逆風を利用し得は技倆に乏しきなり。

『日本及日本人』、『三宅雪嶺人生訓』六~七頁

【現代語訳】
〇順風・逆風と無風
 事業は人の力を発揮することであって、人の力を発揮することは大概人に利益をもたらす。正義の力がある一方で、邪悪の力もあるが、帆船に乗った船長が最も苦しむのは無風であって、順風を喜ぶのはもちろんであるが、逆風であっても利用する方法はある。逆風を利用できないのは技倆に乏しいのである。

【補説】
邪悪の力・逆風・逆境は人生につきものだが、それをどう利用するかに、その人間の真価が表れる。

ただ、逆風の利用の仕方は学校では教わらない。
船長のような人の背中を見ながら、見様見真似で試行錯誤することでしか逆風を利用できるような技倆は身につかないだろう。

ちなみに、「技倆」という語はキーボードで一発変換ができない。
頭でっかちな世界では、この身体性に基く言葉はもはや理解できない死語になりつつある。

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