バランス

世の中がすっかり変わってしまったのに社会的に大きな騒ぎもなく、皆さん、少なくとも見たところ平常運転なのはすごいなぁと思ってしまう。

もちろんちっとも平常ではなくて、会社や職を失った方も目に見えないながら少なくないのではないだろうか。わたしは自分の人生経験から、そういうことがある日突然自分の人生にやって来るのを知っている。けどたぶん、多くの人は絵空事だと思っているに違いない。倒産、失職などが大きく取り上げられない、経済が悪くなっていることが大きく取り上げられない。そしてそれをあたかも知らない顔をして微笑んでいる人たちがわたしは少し怖い。

今日ツイートされていたけれどこの騒ぎ以前にGDPは-7.1ポイントだった。わたしは安倍さんには厳しいなと思っていた。そこから日本経済は今回スタートしている。いま経済活動は活発に回っているとは言えない。

経済活動を回すために、消費税を0にするべきだとそのツイートでは括っていたが、今回は賛同しかねる。欲しいかどうかは別にしてアベノマスクの費用、国民一人あたり10万円の経済支援。もちろん予算は組み直しだ。みんなが知っていることだけれど、日本の国庫は常に赤字。いきなり消費税を0にしたら? 大幅な出費プラス財源不足。それで損をするのはわたしたちだ。なぜなら国庫とは政治家たちのものではなく、わたしたちのものだからだ。

わたしだって消費税が上がってから家計のやりくりが難しくなったと感じている。しかし、10万円ももらって「いまこそ消費税0」は有り得ないだろう。

と、そんなことを思いつつTLを見ている。最近、フォロー切られたんじゃないかと疑心暗鬼になるくらいツイートが減ったなぁと思う。いままで暇つぶしに見ていたTwitterもため息が出るばかり。

一部学校、会社での白マスク指定(?)という未確認情報について夫と話し合った。今ある柄物を含めた枚数の確認をして、夫も色指定なんて今の状況じゃないでしょう、と言った。それでもやっぱり母としては不安で、白い布と糸はたくさん買ってあるのでゴム紐とダブルガーゼがあれば白いマスクがたくさんできるという話をした。

「根を詰めすぎだからやめなさい」と言われてしまった。

もしも色無地指定になったら、学校でも教育委員会にでも掛け合うから少し休みなさいと。縫ってる方が落ち着くのかもしれないけど、と付け加えられて。

そうなんだ、実は縫ってる方が気持ちが落ち着くのだ。しなければならない対策をしている感がある。そして俗に言う、手を動かしていると気が休まる。こういう時は頭だけ動かすより、体の他の部分を動かした方が絶対的に精神的にいい効果をうむ。ミシンをかけて、端の糸をハサミで処理して、なんてやっているのが心にある種の安定をうむ。

ただ、それが絶対的にいいことかと言うとそんなことはなくて、自分の立ち位置を見失う。たとえば小説を書くひとだったわたしは夢の彼方に消えて、ミシンを毎日かけるのが仕事のお母さん、あるいはハンドメイドが趣味の人になってしまう。立ち位置が揺らぐとたちまちアイデンティティの崩壊だ。

ミシン糸の糸巻きの形がかわいらしくて、糸がなくなっても容易に捨てられないんだけど、いまのわたしは積み木のように重ねておいた糸巻きの上に立っているようなものだ。間違ったら転げ落ちる。

それで脆弱なアイデンティティを固定しておくために、Webで見切り発車の連載でもしようかなぁと。最終回まで書かないと載せない、の方針は捨てて、自分のためになにかを書こうかなぁといま考えている。書けないだけでアイディアだけはあるので、なにかしら物になるのではないかしら?

と思っていたら、カクヨムでげえるさんという方の小説がすごく良くて、朝方だったのでレビューコメントつけずに帰ってきてしまったんだけど本当に良くて、この、なにも確かなもののない時代にほんの小さなきらめきでも『希望』があるんだということを感じさせてくれる短編だった。無断だけど貼っちゃえ(笑)。すみません、げえるさん。


鬱屈とした世の中に必要なのは、こういう小説なんだ。自転車の二人乗りは絶対いけないけど。ギャグとかコメディーではなくて、わたしなら『青春もの』に分類する。

げえるさんは男性なんだけど、若い女の子を書くのがとても上手い。このひと、中身は女子高生なんじゃないのっていうくらい上手い。そしてそこに、男の人にしかわからない女の子の「かわいいポイント」を入れてくるのでたまらない。今回もヒロインが素直なところがかわいい。本当に短いので、空き時間にちょこっと読んでほしいです。おすすめ。

念の為……わたしの作品ではないです。わたしの陰鬱な作品とは違うので安心して読んでください。

この作品のように、いま世界に求められているのは希望の光のように感じる。わたしは無宗教だけれども、大いなる存在に人類を肯定されたいと思っている人は多いんじゃないだろうか?

今回の件を『大事』と捉えるのか『それほどでもないよ』と捉えるのか、捉え方で見え方は変わってくると思うけれど、『希望』が必要なくらいには『不安』が蔓延しているのではないかと思う。

こういうこと書くと、「不安を煽ってる」って怒られちゃいそうですね。

そうだなぁ、個人的には静かすぎて怖い。M.ナイト・シャマラン監督の『ハプニング』みたいな。これはちょっと渋いかな? 見てない人多いかも。ヒタヒタと怖い系映画。あの張り詰めた静かな画面の中の登場人物のひとりに自分がなってしまった気がするのだ。

それがわたしの、いまの不安の形。

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