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書のための茶室(十)起こし絵図完成!

三尋木 崇(以下、崇):お久しぶりです。少し時間が経ってしまいました。
拝見しました、「光る君へ」の題字。素晴らしいですね。
根本 知(以下、知):見ていただいたんですね。有難うございます。
山平 昌子(以下、昌):来年の大河ドラマも楽しみですね!

昌:いよいよ今日は、起こし絵図を見せていただけるということで。
崇:はい、作ってまいりました!
昌:いよいよ・・!

1.起こし図を拝見

わくわく
2つの起こし図

崇:前回の打ち合わせを受けて、「緑の茶室」と「白の茶室」、2つの起こし絵図を作成しました。これを組み立てていきますね。

慎重に組み立てていきます

昌:よく見たらこれ、手書きなんですか?
知:印刷だと思いました・・!!細かくて、緻密な仕事ですね。

すべて手書きで書かれています

昌:どうやって作るんですか?
崇:図面を書いて、それを下絵に和紙に書き写します。美術館などで見る起こし絵図は、厚手の紙の裏表に直接描かれているようなのですが、私は紙の質感を活かしたかったのと、調整しながら作ったので二重にしています。
印刷はきれいですが、線の雰囲気があまりないので敢えて手書きにして、少し揺れる線を演出しました。
昌:もしちょっと間違えちゃったら・・。字とか・・。
崇:作り直しますね。これも何度か作り直しています。
昌:こうした模型は、今の設計の現場でも作るんですか?
崇:もちろん現代の設計現場でも、いろいろな方法で模型は作ります。3Dプリントも行いますよ。でも、こうして平たくたためるできる模型は作らないですね。今回作ってみて、昔の人が茶室を設計する際に、どんなことを重要だと思っていたか、色々と学べました。
知:たまに美術館の展示で、起こし絵図を見ることができますよね。
崇:五島美術館で見た利休や織部の茶室の図や、大阪くらしの今昔館で行われた「大工頭中井家伝来 茶室起こし絵図展」の図もいろいろな試行錯誤が感じられました。図によって露地まで残っているものや、何度も写しがされたような図もあるので、起こし絵図だけでも話が尽きないです。
知:昔の人もこうした起こし絵図を使って、茶室の完成形を想像していたと思うと、わくわくしますね。
崇:茶の湯全盛期は、こういうスケッチがあれば、割とラフにお抱え大工によってすぐに作ってもらえる体制があったのだろうなと思います。今は土地の制約や手続きなど、周辺の問題が多いなぁと思ってしまいます。

2.「緑の茶室」

崇:こちらが草庵風の茶室。前回のお話で、「緑の茶室」としてご提案したものです。枯山水の静かなお庭をイメージしています。
知:ほうほう、こちらから入って、蹲で手を洗ってから入っていくわけですね。
崇:そうですね、ギャラリーを見て感慨にふけった皆さんが、腰掛で連客待ち合わせで集まり、そこから茶室に入っていく流れです。

「緑の茶室」全体像
「緑の茶室」を上から

崇:もともとのご要望にあったように、通常の茶室よりも天井高を高めに、と考えています。その場合に、屋根をどうしようかということを検討中なんです。建物にも格があって、茶室は格としては低い。「真・行・草」で言えば草ですね。
格を落とすために、天井高さをおさえていたこともあるのですが、今回はそれを打ち破る高さが欲しいわけです。しかし「草の真」なんて存在しないので、伸ばした分を天井までガラスにするのが良いのでは、と考えています。マンションの天井(がある想定)と、茶室の屋根の形には関係がないので、この茶室では場所毎に違う高さを自然につなぐことを考えています。草庵の感じが出るのかな。
昌:帝国ホテルのお茶室の、小間席の東光庵のような感じかな。
崇:明るさは似ているかもしれません。ただ、東光庵の天井は照明が入っていましたが、こちらは基本的には貴人口も広いので障子窓で採光しようとは考えています。天井高さだけで考えると大徳寺の大仙院の方丈茶室に近い感じで、高く広く明るく作る茶室ですね。
知:床には畳の目を書いていますね。
崇:少し畳の目が広い龍髭表(りゅうびんおもて)を使うことを想定しているので、それを表すために目を書いているんです。
昌:龍髭表という畳は、一般的なんですか?
崇:床の間用の畳です。いろいろなお茶室で使っていると思います。そうした特別な畳を使うことで、場所に合うデザインで、かつ利用しやすく設計することができるんですね。

よくできているなぁ・・

3.「白の茶室」

「白の茶室」全体像


「白の茶室」を上から

知:床の空間や天井のカーブが、柔らかい印象ですね。天井のカーブが、巻紙のようにも見えます。
崇:そうですね、前回のお話であったように、「繭」に包まれているような、ほっとする感覚を持ってもらうための空間です。こちらはお庭も、シンボルツリーを植えて、瑞々しく苔と飛石の間を茶室まで歩いてもらう、屋内だけど屋外の雰囲気を感じる庭として考えています。
昌:灯りも柔らかい感じにしたいですね。
崇:お点前さんのところは天井を低く、その両側の壁との隙間からふわっと光が落ちてくるような間接照明を想定しています。

知:どちらの茶室もいいなあ~。
昌:両方作っちゃえばいいんじゃないかしら。
崇:今日はとりあえず試作品を見ていただけたので、もう少し手直しして最後にもう一度見て頂ければと思っています。
昌:後はスポンサーだけね。
知:そうですねぇ。ところであそこに見えるのは、マロンシャンテリーで有名な東京會舘「ロッシニテラス」ではありませんか?
昌:あ、本当だ。
知:スポンサーについてはマロンシャンテリーでも食べながら検討いたしましょう!
崇・昌:そうしよう、そうしよう。

マロンシャンテリーを頂きました

得意げな笑顔
満面の笑顔
とっても美味しかったです!

三尋木 崇(みひろぎ たかし)
「五感を刺激する空間」をテーマに、建築と茶の湯で得た経験を基に多様な専門家と共同しながら、「場所・時間・環境」を観察し、“そこに”根ざした人、モノ、思想、風習を材料に“感じる空間体験”を作り出す。 普段は海外の大型建築計画を仕事としているため、日本を意識する機会が多く、そこから日本の文化に意識が向き、建築と茶の湯を足掛かりに自然観を持った空間を発信したいと思うようになり、活動を開始した。 2009年ツリーハウスの制作に関わり、2011年細川三斎流のお茶を学び始めてから、野点のインスタレーションを各地で行う。 ツリーハウスやタイニーハウスといった小さな空間の制作やWSへの参加を通して、茶室との共通性や空間体験・制作のノウハウを蓄積している。
GWは友人の茶事に行きました。そこで知り合ったお姉さまと茶室や建築のことで文通しています。

根本 知(ねもと さとし)
かな文字を専門とする書家。本阿弥光悦の研究者でもある。2021年2月、「書の風流 ー 近代藝術家の美学 ー」を上梓。2024年NHK大河ドラマ「光る君へ」の書道指導および題字を担当。
GWは、仲良しの陶芸家の工房兼お宅へ家族で伺いました。修善寺の自然を満喫し、夕食は外で海鮮焼を楽しみました。

山平 昌子(やまひら まさこ)
茶道を始めたばかりの会社員。「ひとうたの茶席」発起人。
GWには、コロナの間会えなかったレバノン人ピアニストの追っかけをしていました。

(文・写真:山平 昌子)





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