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第22週「ふるさとに響く歌」#高原列車は行く

昨年12月から今年の2月にかけて、福島民報社が「あなたが選ぶ古関メロディー ベスト30」のアンケートを実施しました。2万票近くの投票から1位に選ばれたのが、今回紹介する「高原列車は行く」です。2位の「栄冠は君に輝く」3,168票の倍以上となる8,141票を集めました。数多くある古関メロディーの中でブッチギリの1位になった理由として考えるのは、やはり地元・福島県を舞台にした歌というのが一つあるのかもしれません。

 「高原列車は行く」のモデルは、福島県猪苗代町を走る沼尻軽便鉄道。これは作詞した丘灯至夫のエピソードによるもの。福島県郡山市よりも東、田村郡小野町の旅館の息子として生まれた丘灯至夫は、少年時代体が弱かったそうです。よく家族に、猪苗代町にある中ノ沢温泉に湯治へ連れられていたそうですが、そこへ行くために磐越西線・川桁駅から分岐していたのが、沼尻軽便鉄道。その記憶が、「高原列車は行く」の歌詞を創り出す形になりました。

 沼尻軽便鉄道は通称だそうで、正確には日本硫黄耶麻軌道部、戦後は日本硫黄沼尻鉄道部に名称変更されました。会社名が示す通り、当初の目的は磐梯の沼尻鉱山の硫黄鉱石輸送。旅客輸送はその片手間で、夏と冬に観光客がやや多かったという話のようです。いずれにしても、硫黄輸送がメインと考えると、実際の風景は決して爽やかではなく、ゴツゴツしたような印象のようにも思えます。

 この歌詞を渡された古関裕而が最初に思い浮かべたのは、アルプスを走る登山鉄道。もっともこちらも、ヨーロッパで走る鉄道という説もあり、日本のアルプスと言われる箇所を走る小海線という説もあるようです。いずれにしても、美しい山々を思い出させる爽やかなメロディー。ですので、メロディーが加わった楽曲を聴いた丘灯至夫は、最初相当驚いたのだとか。
歌手は既に「白い花の咲く頃」「あこがれの郵便馬車」などで人気を博していた岡本敦郎。2012年に亡くなるまで、何度となくコンサートやテレビ番組でお馴染みの代表曲となりました。

 楽曲のモデルとなった沼尻軽便鉄道は会社の倒産により、1969年に廃止となります。ただ鉄道との縁は現在も切れていません。福島駅では、2009年から在来線ホームの発車メロディとして一日中流れています。
東口の駅前広場にある生誕100年記念モニュメントとともに、古関裕而の功績は永遠に受け継がれていくのでしょう。
(文:ミュージックソムリエ:柏井要一)

NHK連続テレビ小説「エール」                  (NHK総合月〜金 朝8:00〜8:15、12:45〜13:00)
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*放送予定 3月30日〜9月26日
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