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「安心、安全」オリンピックの舞台裏

 オリンピック期間中、空港でオリンピック関連業務に従事したため、安全性、感染対策がどこまで機能していたかという観点から、体験したこと、見聞きしたことを記しておく。これがバブル方式と言えるのか、魔法の呪文「安心、完全」が威力を発揮しているのか、何方か分析して頂きたい。

場所・・・競歩とマラソン開催都市近くの空港。

業務内容・・・オリンピック関係者、とりわけ海外メディアへの対応、通訳、無線連絡。とりあえず到着した関係者が、然るべきバスやタクシーに滞りなく乗れるようにする。

前提・・・ワクチン未接種。熱が出たスタッフもPCR検査なし。仕事の前に、札幌市ワクチンコールセンターに接種可能か問い合わせたが、年齢と優先接種に該当しない場合、いかなる場合も不可とのこと。ボランティアは接種出来るのに、同様に大会関係者と接触する人達には何の補償もない。

1、バブル方式と言えるか?

チャーター機で到着した選手は、完全に通路を分けられており、大会関係者及び空港関係者以外とは接触せず、バスに乗り込む。空港内の状況に限って言えば、チャーター機利用者はバブルから出ていない。

一般客と一緒に到着する選手、関係者は、同じ旅客機に一緒に乗っている時点でそもそもバブルとは言えない気がするが、一般客と混ざって到着ゲートから出る。14日ルールがあるため、入国14日経たない関係者には、アテンドが付く。コンビニに入りたいという関係者に、組織委員が14日経っていないので駄目、と説明していたが、既に他の旅行者とミックス状態なので、今更コンビニくらい何なのかと突っ込みたくなる。基本的に選手、重役到着の際は、到着ゲートから柵で分けられた通路を通っていた様子。

メディアは14日ルールに則って、14日経たない海外メディアは専用のメディアバス、または指定されたタクシーを利用。しかし、14日を経た行動自由のメディアも、同様のメディアバス、または自己手配や流しのタクシーを利用できる。従って、メディアバスの中で、14日ルールの両者が混じり合う可能性があり、そうなった場合バブルは意味をなさない。

14日ルールに当てはまり、専用バスを待つ場合、一般客と一緒に同じロビーで待つ。アテンドと一緒で監視されながららしいが、バブルの中とは言えない。これは目撃していないが、他のスタッフから聞いた話。

これらは空港での話なので、ホテルなどでどういった状況が繰り広げられていたかは知らない。

2、疑問だらけ

至近距離で海外メディアと会話をするにも関わらず、事前にワクチン接種は受けられなかった。選手や審判、役員には、大量のアテンドが付くが、不意にやって来る海外メディアには、対応する人がいない場合もあり、警備員や運転手との意思疎通が難しく、急いで駆けつけないといけない状況も。こういうところに、仕事の無くなったボランティアを配置すれば良かったのに。そもそも通訳業務までやる羽目になったのは、他にやる人がいないから、言語が堪能なスタッフで手分けしてやっているだけ。

関係者がバスに乗車可能かを判断するため、関係者のIDを確認するよう言われたが、そもそもパスのどこに注意して確認するのか説明がなく、仮に偽物を見せられても全く見分けがつかないと思う。これはテロなどの対策的に、よろしい状況とは思えない。

不意にやって来る海外メディアに対し、14日ルールの確認や、タクシーに乗る際の判断を、たいして説明も受けていないスタッフでやる場合も。選手や役員などは、組織委員でしっかり管理されていたよう。

予想通りだけれども、オリンピックに関わる場所は、どこも人だらけ。空港も選手到着の際は、人が集まる。ずっと空港勤務のため、競歩とマラソンは直接知らないが、無観客ばかりの中で間近で見られる競技に人が集まるのは当然。これで規制を厳しくし、もし罰金でも課そうものなら、それが入場料のような役割を果たして、ますます堂々と人が集まったかもしれない。オリンピックの「安心、完全」の魔法呪文により、用心する必要はなくなってしまったよう。オリンピックと感染は無関係と言い放ったどこかの政治家さん、自分達は安全な場所から現場の状況も見ず、よくも断言できますねえ。

3、労われるべき人々

この感染状況の中、仕事とは言え、選手、関係者の移動を引き受けているバス、タクシー運転手の方々には頭が下がる。ほとんどの場合、ドライバーに伝えられるのは、配車時刻と指定場所、時には乗客の名前など、最低限の情報のみで、なかなか乗客が現れず途方に暮れている場面にも出くわした。14日ルールの後は、関係者が予約なしでタクシーを利用することもある。この感染爆発中のオリンピック最前線は、ドライバーによって支えられている。一般の人々が直接関わることを禁じられているような状況で、感染リスクを承知で、最も近くで働いている。本当にお疲れ様です。

4、バッハ会長、橋本会長、森元会長その他

空港のオリンピック専用レーンを担当中に、重要人物の到着に立ち会う。バッハ氏の時は警察車両も含め8台ほど集結。しかし、空港で働く警備スタッフには何の情報も知らされていないよう。セキュリティのためなのか、最低限のオリンピック関係者にしか伝えない模様。そして情報が来たのも2時間前。車両レーンはシャットアウトしていても、空港利用の一般客は普通に通路を歩いて行く。いくら警官が大勢いるとは言え、これはテロ対策的にどうなのか。もし殺意を持った人物が待ち構えていたら、簡単に実行出来てしまいそうに見えたが。それにしても、バッハ氏は背中の曲がった小柄な老人で、権威は人を大きく見せるのだとつくづく納得。

以上、安心、安全なオリンピックの舞台裏からでした。





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