見出し画像

ZZ TOP / Fandango 1975

前半ライブ音源、後半スタジオ録音の2部構成

1975年にリリースされたアメリカのブルース・ロック・バンドZZ・トップの4枚目のアルバム。
ロックンロールとブルース・クラシックのカバーのライブ15分弱(アナログ盤だとA面に相当)後半は、ライブのレパートリーになっている曲も含み、完成されつつあるアンサンブルといった初期のバンドの総括的な音が聴けるB面相当の15分。

合計30分弱、全体に1曲の時間が短くコンパクト。それぞれ分かりやすいブルース&ハード・ロックをカロリー高めにグイグイくる快感さがあり、ZZ TOPの入門編的な作品となっている。


メンバー

ビリー・ギボンズ ギター&ボーカル
ダスティ・ヒル ベース&ボーカル
フランク・ビアード ドラム

曲目

Thunderbird
Jailhouse Rock
Backdoor Medley: Backdoor Love Affair; Mellow Down Easy; Backdoor Love Affair No. 2; Long Distance Boogie
Nasty Dogs and Funky Kings
Blue Jean Blues
Balinese
Mexican Blackbird
Heard It on The X
Tush

曲目感想

Thunderbird
Jailhouse Rock

ライブ音源は会場の歓声が70秒近く収めており、秒数が徐々に経過するごとに会場の緊張感が上がってくるのが分かる。
1曲目のThnderbirdからバンドの圧が高めのブギ・ナンバー。予想通りに耳を身構えた状態で爆音でスタート。
ギターもベースもブーミーに楽器の音が潰れる手前の音割れギリギリに歪んだサウンド。複数台のアンプ群を最大限の音量にして歪みを稼いでいる。

1曲目の縦ノリのブギが終わり一瞬ブレイクし、ギターのナチュラルなフィードバックを残しながらE7のジミヘン・コードを使用した「監獄ロック」に突入し、鳥肌が立つ。

エルヴィス・プレスリーのクラシック・ロックンロールを破壊力マシマシに
声帯がイカれそうな絶叫シャウト、それとバンドの演奏がきっちりハマっている。
ギターソロはフィードバック入りの爆音状態からのフレーズが少なめのスライド・ギターのソロ。爆音&フィードバックのコントロールが秀逸。2分も満たない演奏だが強烈に記憶に残るパフォーマンスを繰り出す。


Backdoor Medley: Backdoor Love Affair; Mellow Down Easy; Backdoor Love Affair No. 2; Long Distance Boogie

3曲目にして最後の10分弱はメドレー・ナンバーであるが、1stアルバムに収録している Backdoor Love Affairを土台に他の曲を部分的に付加した構成になっている。
緩急を入れて歌詞ではテンポを変えて変化をつけていく。中盤は、アドリブのスキャットで時折観客とのコール&レスポンスを混ぜながら、締めにジョンリー・フッカーのブギを混ぜ、Aのコードを基にしたブルース、ブギのメドレーで終わる。

このライブ音源を味わうポイントは、息の揃った生々しいアンサンブルとオンリー・ワンのバンドの音圧。爆音だが基礎がしっかりとしたフィンガリングとピッキングで粒立ちが良い音で「会場を魅了し楽器の音をしっかりと聴かせる」点だ。


Nasty Dogs and Funky Kings

2分40秒ほどの短い曲で、印象に残るギターのイントロのフレーズからソリッドなベースとドラムとのアンサンブルがピッタリで自然と説得力が伝わる。
後半スタジオ1発目のナンバーは、ZZ TOPのハード・ロック・サウンドが確立されたと実感して聴ける。演奏の基礎に安定感がある演奏は安心感を聴き手に与えてくれている。

Blue Jean Blues

これまでライブ音源の前半からひたすら攻めの音で続いてきたが、Bマイナーの完全スロー・ブルースが現れる。
音量と音数はテンポのために減らし、「間」という空間を活かしている。つまりギターのトーンで勝負している。ギブソンのハムバッカー系のサウンドのスロー・ブルースもフェンダーのストラトキャスターと違って粘りのあるトーンが聴きどころでもある。

そして落しどころも無くフェイドアウトしていく様がクール。

Balinese

イントロのボトム弦のギターの瞬間的なフレーズ。。さりげなく盛り込でいるが聞き捨てならずカッコいい。そこからザクザクとリズムを刻んでいく。このリズム感の進行具合がZZ TOPの持つ永遠のカッコ良さでありトレードマークだと思う。無駄のない簡潔で完璧なトーンのなギター・ソロはきっとライブ映えするであろう。ZZ TOPの中でも最上位に入る名曲。

Mexican Blackbird

グッとテンポを落とし、曲が気だるく、挿入されるスライド・ギターはスワンピーな泥臭さな空気を醸成する。
メキシコの乾燥した天候、砂煙が漂うかのような少な目の音数、ブロック・ポジションでのスライド・ギターのソロ。終盤のアンプファイドされた
ブルース・ハープのサウンドもスモーキーでカッコいい。

確信を持った演奏から感じるのはこのバンドの足腰の強さや粘りでありこの点がバンド唯一で好感が持てる。


Heard It on the X

ソリッドで高速なテンポで作品の流れがここで変わる。左右のチャンネルに異なる指板ポジションで弾くギターのリフ、前のめり気味のベースとどっしり構えるドラムが中央に位置する。
実はこのフレーズ、実際にギターを弾いてみると、2フレットと5フレット
2弦と3弦を行き来するストレッチ・フレーズで安定して弾くには難易度が結構高い。加えてこのクールなリフ、よく発明したなと実際弾いていると感心
しきりだ。

ブレイクしてからの挿入されるスライド・ギターもあり実際の演奏は難易度高いストレッチ・リフもあって割とあり作業量が多く複雑だ。さらにここから音色がワウ・ペダル、続いて空間系のフェイザー(だと思う)が追加されこの曲唯一、装飾的に音色が加わっている。注意して聴かないと逃してしまうがこれが良い味を出している。

ビリー・ギボンズとダスティ・ヒルが交互にボーカルを歌い分けて行き、サビ部分で2人のボーカルが合わさる部分がクール。

この各メンバーのハマり具合。。ライブでもよく取り上げられるが盛り上がらないわけがない。フェイドアウトで2分24秒で終わるがこの先の演奏がバンドのアドリブの応酬で展開するのであろうと想像が出来るからこそ、生のライブで是非とも体感したい。

Tush

Gの3コードに覚えやすいメロディを乗せたブルース・ロック。カバーするバンドも多いので割と有名でこの作品の締めにも相応しいハイライトでもある。歴代代表的ナンバーだ。


総論
前半の美爆音ライブ、後半はそのライブでのコンディションの良さをスタジオでも産地直送状態に反映している。

元々の演奏の基礎がしっかりしているのに加え、前半で聴けたライブを日々無限にこなすことによってでしか得られない「バンドの音」になっている。
各パートの構成ポジションが完璧。エンジニアのテリーマニングの手腕も光る。

3人の基礎がしっかりした存在感と説得力のある演奏。難しいことをやってないので演奏をなぞることも出来るが、ギターに関してはフィンガリングや弾く音、時折混ぜるピッキング・ハーモニクスもコントロール下において絶妙。


バンド初期のサウンドをある意味分かり易く総括した名盤。


終わり


追記
アルバムのジャケットの表がギブソンのフライングVで裏ジャケットがギブソンのレスポールと違うギターが写っている。

しかしよく注目しないと分からないかもしれないが表のVは、身体が横になってベースのダスティ・ヒルを対峙したポーズになっているのでギター全体が写っていない。唯一判断できる点はヘッドの形状と腿にわずかに映るとんがったシェイプでしかない。

そして裏ジャケは、バックステージからのショットなのでバンドのメンバーの背中しか映っていない。並行手的な予想でヘッドの形状でレスポールと判断した。

ビリー・ギボンズは一貫してハムバッカー系(時折グレッチを使うがハム系よりという使用解釈だと思う)のギターを使っている。直言すると「ザ・ギブソン」のサウンドだ。

しかし本作品はライブは2本の聴き分けがブーミーに歪んでいるので分からない。。フライングVにアームがあってアーミングとかすれば分かるかも知れないがそいう箇所も無いので不明。


ダスティ・ヒルの割りと珍しいテレキャスター・ベース
テレキャスター・ベースは1968年にリリースされたベースでギターの1951年のテレキャスターのリリースよりかなり遅れている。
価格帯はプレシジョン・ベースより少し高めでジャズ・ベースより安いので中間価格帯になっている。

ジャケットを見ると1972年以前の製造のリアのシングル・ピックアップなのがわかる。想像だが、見かけたら即買いのような希少性の高い楽器を日々ステージで使用していたことになる。

ギターの音に合わせてブリブリに鳴らしていた訳で、使用頻度も相まって「かなり鳴動する」ベースだったのではないだろうか?

そうなると有名ミュージシャンが弾いた楽器ということもあって盗難のリスクが非常に高かったのではと想像する。よって誰にも預けず、常に肌身離さず持っていたのではないか。それをこのバンドのように全米をくまなくサーキットする日常から、一体どんなリスク管理していたのかなど妄想が止まらない。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?