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#95 スラッシュ『オージィ・オブ・ザ・ダムド』

服部さんへ

 トリー・ケリーの新作紹介、ありがとうございます。まったく知らなかったのですが、1曲目で、ひと聴き惚れしました。「トムズ・ダイナー」の使い方といいい、カッコいいですね。
 かと思えば、M-5(歌っているのは客演のキムさんのほう? 区別がつきません)やM-15では、アリアナ・グランデを思わせる可憐な歌声を聴かせてくれるわ、M-9では僕が最近恋に落ちてしまった(気持ち悪いでしょ、はい)タイラを思わせる、たおやかでしなやかな歌唱で魅せてくれるわで、実に悩ましいのであります。
 でも、一番のお気に入りは、M-7の「oceans」。弾き語りの控えめにして雄弁なギター演奏と、高みへと昇りつめるエモーショナルな歌いっぷりが最高で、完全にロック的な文脈で聴き入ってしまいました。いい出会いを、ありがとうございました。
 さて、悩みましたが、僕が今回取り上げるのは、14年ぶりとなるスラッシュのソロ名義作です。

スラッシュ『オージィ・オブ・ザ・ダムド』

 ブルース愛好家の知人が、B.B.キングやバディ・ガイ、ジェフ・ベック、ミック・ジャガーらが米ホワイトハウスで競演&共演した(オバマさんもマイクを手に!)ライヴ映像作品を、「めちゃくちゃいいから」と貸してくれた。これが本当に素晴らしくて、ブルースのライヴっていいな〜と思っていたら、スラッシュがブルースをカヴァーしたとのこと。しかも、実際のライヴではないものの、スタジオでのライヴ録音アルバムなのだとか。
 ブライアン・ジョンソン(AC/DC)、スティーヴン・タイラー、イギー・ポップほかゲストも豪華なら、パフォーマンスも聴きどころだらけなのだが、個人的なお気に入りは、ホワイトハウスでも名演が光ったゲイリー・クラーク・ジュニアとの「クロスロード」だ。

 くだんの知人が、クラプトンはもう「レイラ」のあのリフは弾けないと言っていて、もしや「クロスロード」も? と一抹の寂しさを覚えていたところに、こんなにも胸のすくギターとヴォーカルが聴けてうれしい限り。
 話題性で言うなら、ブライアン・ジョンソンが歌い、スティーヴン・タイラーがハーモニカを吹いた「キリング・フロア」だろう。映像も必見!

 イギー・ポップのブルース歌唱は超レアだし、クリス・ロビンソン(ブラック・クロウズ)の、まさに燻し銀のヴォーカルも聴き逃せない。意外なところでは、デミ・ロヴァート。こんなに歌える人だったとは、お見逸れしました。
 今作に関するインタヴューで「音楽、もしくはギターで、エモーショナルなレヴェルで人に訴えかけることができるということは、素晴らしい。今のメインストリームに、そういうものは少ない」と語っていたスラッシュ。まったくもって同感であります。
                              鈴木宏和

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