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96敗した監督の言葉に思う、「失敗」はそこで終わりじゃないということ【2/9ヤクルト浦添キャンプ】

真中さんのトークは今日も(というかテレビで編集されたものの数百倍)冴え渡っている。(ちなみに写真は真中さんではありません)

自身もヤクルトファンだという浦添市長が、子どもの頃野球中継が巨人しかなくて、みんな巨人ファンになる中、自分はヤクルトファンになったと話す。そこから巨人の話になり、真中さんの話は、その辺のヤクルトファンなのか?というくらいファン目線になっていく。

そう、ファン目線がとてもうまい人だなあと思う。もちろん、リップサービスも含めて。

でもそんな中で、真中さんはふともらした。

「それでもやっぱり(96敗の)あの年は辛かったですよ。どうしようもなかった。球場に行くのも少し辛かったですよ。もちろん口に出しては言わないですけどね」と。

(でも、「そんな中でもヤクルトファンはめちゃくちゃあたたかかった。ヤジなんてほとんど飛ばなかった、マスコミがたまに書いてたけど、あれはたった一人のヤジを大きく書いていたようなものだから。基本的にヤクルトファンっていうのはすごくあたたかいですよ。ありがたいことです」とも言っていた。フォローは絶対忘れない、それが真中さんの素敵なところだ)

たぶん私たちファンが思うよりずっとずっと、真中さんのそのプレッシャーや抱えていたものは大きかったのだろうと思う。

プロ野球選手になり、活躍をし、さらに監督という立場になり、そしてチームを優勝にだって導いた。でもそれでも、その監督の最後の年は、つまりユニフォームを脱ぐその年は、96敗という成績だったのだ。それはもちろん屈辱的で、不甲斐なさや、申し訳なさや、批判にさらされる怖さや、そういうものでいっぱいだっただろうと思う。そりゃそうだ。96敗を経験したヤクルトの監督は真中さんしかいないのだ。すごいな。

それはたぶん真中さんの人生の中でもとても大きな「失敗」だ。

でも真中さんは今日浦添で、爆笑のトークショーをして、お客さんをめちゃくちゃ楽しませていた。

どんな失敗も、時間が経てば、笑うこともできる。どん底にいる時は、そんな日がくるだなんて思えないけれど。たくさん笑う人は、たくさんの痛みを知る人だ。

監督として96敗してしまったとしても、もちろんそれがどれだけ不名誉なことだとしても、そのチームのファンにこれだけ愛されて、笑顔にすることができるのだ。

真中さんは言っていた。「ドラフトのくじのあれはめちゃくちゃ恥ずかしかったですよ。でも正直今、あれのおかげでめっちゃ仕事くるんですよね」と。

失敗はいつか、もっと大きな成功になることだってある。真中さんはそれを身をもって教えてくれる。もしかしてそれを教えてくれるためのドラフトだったのかもしれない。ちがうけど。

紅白戦では、若手たちの活躍がとてもとても頼もしかった。やたら赤くてぴかぴかしていたなおみちのレガースくらいは頼もしかった。

高梨くんと太田くんの活躍には、ぐっときた。14と46を背負う、その後ろ姿を見ながら、どうか、シーズンが始まっても活躍できますようにと祈った。

荒木のホームランは、やっぱりちょっと別格だった。慣れない球場ですらそれは、打った瞬間にホームランだこれは、と思うくらいの迫力があった。

でも誰かが活躍すると、その影に隠れる人が出てくる。紅白戦は、ファンにとっては敵も味方もどちらもヤクルトなわけで、そうすると、誰かが打つということは、誰かが打たれるということで、誰かが抑えるということは、誰かが打てないということなのだ。光と影の、両面を私たちは目の当たりにする。

成功も失敗もそこにはある。誰かの失敗が、誰かの成功につながることだってある。勝負の世界だから、勝つ人がいて、負ける人がいる。

でも、負けた時、そこで全部が終わるわけじゃない。今日影の側に立った人が、いつまでもそこにい続けるわけじゃない。何かのきっかけで光が当たる時は、必ず来るのだ。例えば、扇風機のように。

負けた人はどうか、96敗してユニフォームを脱いだ真中さんのことを思い出して欲しい。勝手に思い出そうではないか。ごめんね真中さん。

それは、終わりじゃない。もしかしたら、始まりなのかもしれない。例えば、扇風機のように。

もうすぐシーズンが始まる。オフシーズンには期待しかなかった毎日が、少しずつ、あらゆる現実味を帯びてくる。でもそれでも私たちは、その現実を求めるのだ。それがどれだけ辛いものであったとしても、それでも、いやたぶん、辛い現実の分、喜びが大きいことを、知っているからこそ。

どうか大きな怪我なく開幕を見られますように。ぐっちが首位打者とりますように(まだ期待の時期が終わらない)。

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