戸田パラダイスにて「オフ」の大切さを思う
あまりにヤクルトロスが過ぎて、戸田に行ってきた。これ以上のロスが進むと現実生活に支障が出ると思ったからである。たぶん息の仕方とかを忘れ始める。
遠い松山では鬼たちの指導のもと、どうやらハチマキを巻いて勉強合宿が行われているらしい。目指せ現役合格。なんの話だっけ。
そんなことを知ってか知らずか、とにかく戸田には平和な空気が流れていた。ぐっちは比屋根と談笑し、松岡さんはやたらとハンサムなノックを打っている。秋吉は心なしか気をつかうようにそれを受けている。平和だ。実に平和だ。
ぐちびきみわちゃんの三人は、仲良くノックを受け始める。びっきーが「坂口あんま無理すんなよ」と言う。私としてはぐっちどうしたのかなと思いながらもそれはさておきとりあえず「びっきー今のもっかい言って」と思う。
世界中の人に届けたい。びっきーの「坂口あんま無理すんなよ。」これでご飯三杯はいける。三杯のご飯を食べるノルマを課せられている松山組はみんなこれを聞けばいいと思う。
みわちゃんは「エラーしたら(うしろで練習をしている)ラグビーの試合出てもらう」と言われた直後にミスをする。(ちなみにびっきーもミスをしてみわちゃんに「ラグビー行ってこいよ!!」と言われていた)ぐっちがえらくうれしそうに「あーーー!!」という。みわちゃんはラグビーチームの人たちに土下座する。「タックルお願いします!タックルでひざ小僧お願いします!」とぐっちが叫ぶ。ラグビーチームの人たちも笑っている。
びっきーが練習を終え、次にぐっちが終え、最後はみわちゃんだけになる。
隣でトンボを掛けながら、ぐっちはみわちゃんの練習を見守る。うまいことボールを処理したみわちゃんに、ぐっちが「マーシー頼むソフトバンクいかんといて!」と言う。次のボールを処理してコーチに「うまい!」と言われたみわちゃんは、得意げにぐっちに近づいて何かを言う。
ぐっちは思わず吹き出して「浅村かワシ(みわちゃん)入りました」と笑う。
それを聞いていたびっきーが「丸か、浅村か」と言い、ぐっちは「あいつらの動向次第やな」と言う。
トンボをかけながらぐっちは、「浅村が外野できますかいう話や。浅村があのヒリついた場面でバントできますかいう話や。」と笑う。
選手の声が届くというのは、なんともうれしいものだ。
みわちゃんの土下座劇場を見ていたオットが笑いながら、みわちゃんもプロなのだからあれはきっとわざとなのだ。と言う。天才だなみわちゃんは。と私は言う。
もちろんそれは冗談だけど、みわちゃんもぐっちもびっきーも、チームの雰囲気が良くなるようにというのは当然のことながら、見ているお客さんが楽しいように、というのも頭にあるんじゃないかなという感じがした。そういう形で楽しませてもらえるのはもうもちろん最高だし、見ているこちらとしてはパラダイスである。ありがとう野球の神様。(もう神のなせる技だあれは)
プロの世界は本当に厳しい。ぐっちとにこやかに会話していた比屋根は、もうすぐその練習着を脱いで新しい挑戦をしなければならない。チームはなかなか強くはなりきれず、ミスをしたり3分スピーチが喋れず10秒で終わったりノーノーされたり・・いやもうそれはなんにもない。とにかく、山のように厳しい試練が待ち受ける。松山の鬼コーチたちの鬼ノックは終わりを知らない。そして練習をしてもしても、致命的なミスが出ることだってある。少なからずそれは見ている人を落胆させたりもする。
だけどそういった厳しい中にユーモアがあるというのは、何事においてもすばらしいことだ、と私は思っている。戸田で、みわちゃんを囲んだあらゆるところで笑い声が起こるのを見ながら、それを改めて思った。
96敗したって、ノーノーされたって、例えば戦力外を受けたって、たくさんたくさん苦しんで悩んだ後は、何はともあれ笑っていたいじゃないか、と思う。辛いことばかりが人生じゃないのだ。というか辛いことだってあるからこそ、ユーモアを持って笑っていたいのだ。雰囲気が良いことというのは、どんな時も、何よりも強く大切なことだ。
それは見ている方にとっても、あの時の悔しそうな顔を知っているからこそ嬉しいものなのだろう。サードにコンバートされたびっきーの思いが、あの日エラーをしたみわちゃんの思いが、ノーノーの日に土を蹴り上げたぐっちの思いが、伝わってきていたからこそ。
人生にはバランスが大切で、きっと野球選手の一年にとってもバランスは大切で、こういうオフの期間も、大切な意味があるのだろうなと、戸田の練習を見ながら思った。まあそれはそうとして、明日朝起きるとシーズンが開幕していますようにとは思うけれど。
たまには戸田へ行って、noteも更新したいなと思った週末でありました。
しかし私はぐっちになでられていた犬になりたい。
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