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【ランニング日記】『クララとお日さま』を一気に読む 【5/2(日)〜5/7(金)】

5/2(日)

なんと、日曜日だというのに走っている。日曜日に走るなんて、大会に出る以外では初めてではないだろうか。それくらい、日曜日に私は走らない。(断言。)

でもまあ、今週はホテルに引きこもっていることもあり、ほんっとうに動かない。そしていつもと違う景色なので、走るのがちょっと楽しい、ということもあり、しぶしぶ6時に起きて(それでもいつもよりもゆっくりなので)、のろのろと走っている。

今日はいつもとコースを変えて新しい道を走った。海までの道、別の海岸線を走る。

新しくできた道なのだろうか、前に来た時はなかった気がする。すごく気持ちの良い道だ。おじさんが朝から釣りをしている。釣り好きの人っていうのはほんと、どこにでもいる。

ゆっくりゆっくり、景色を見ながら走る。途中、誰もいないところで休憩をする。普段は「歩かない、止まらない」がモットーだけれど、いつもと違う道や新しい道は別だ。その道を、景色を楽しむことにする。だから立ち止まって写真をとったり、なんなら寝転んだりだってする。

本があればなあ、と、思う。こういう新しい景色、なんにもない場所は、ただ本を読むのにうってつけなのだ。私はほんとうに、本さえあればどこでも生きていける気がする。

音楽を止め、ただ波の音を聞く。シンプルであること、自由でいること。私はそれをやっぱりいつだって、大切にしていたい。複雑に絡み合う世界と思考の真ん中で、私はできるだけ、こうしてしんと静かな時間を持って生きていたい。なにもないことも、大事にしたい。

いつまでも寝転んでいるわけにはいかないので、ゆっくり起き上がり、またゆっくり走り出す。誰と争うわけでもない、誰に認められるわけでもない、誰に見られるわけでもない、私だけの時間を、今日もまた、走る。

5/3 (月)

今日は別のホテルに移動なので走らず。日曜日に走ったからよしとしよう。

5/4(火)

雨が少し降る。そんなにきつくないけれど、風が強くて、肌に当たる雨粒が痛い。でもまあ、それもよしと思いながら走る。心が広くなるらしい。

ホテルが変わったので、新しい道をグーグルマップで確認しながら走る。海を目指し、橋を渡って折り返す。目の前に広がる海が、驚くほど美しい道だ。ここでずっと走り続けていたいと心底思うけれど、ずっとここで走っていたらなんかダメになってしまう気もする。「まあいっか」が占める割合がどんどん大きくなっていくのだ。まあ、いいんだけど。

5キロくらい走るか、と重いながらだけど結局8.5キロを走る。ホテルのお庭もなかなか立派で、その周りも走る。最後は海に面したベンチで休憩をする。

いつもと違う場所、違う景色。でもとにかく走る、そういうことを大切にしていたいなと思う。

5/5(水)

今日も同じコースを走る。帰り道、海に抜ける小道を見つけ、えいっと入ってみると、そこには誰もいないビーチが広がっていた。

テトラポットに登れば絶景が見えそうだったのでよじ登ろうとしたら、朝の雨でそれはつるつる滑るようになっており、思いっきり、滑り落ちた。

足も手もどろまみれの血まみれである。これ、息子がしょっちゅう作ってくる傷とまったく同じである。10歳児と同じ怪我をする37歳児。やばいでしょそれは。

痛みがひくまで休憩することにする。音楽を止める。波の音だけが聞こえる。人生を思う。

今日は一緒に走る!と、張り切って出てきた夫は1キロくらいで脱落していた。私はそういうとき元気にほったらかして走るタイプの妻なので、元気にほったらかして走る。1キロくらいゆっくり一緒に走っただけでもえらい。

5/6(木)

昨日、ホテルの部屋で遅くまでカズオ・イシグロの「クララとお日さま」を一気に読んだ。

読みおわってしばらく起き上がれず、ベッドに入るのもすっかり遅くなってしまった。

文体はいたって優しく、文章もわかりやすく、一見やわらかい読み物なのに、一冊を読み終えた時に与えるその衝撃は思った以上に相当大きかったようで、目がさめてからなんだか重たいものが心に残っているのを感じた。こういう本はまあ結構あって、それを消化するにも時間がかかる。私は本はどれだけ暗くても救いがなくても読めるのだけれど、こと映画(映像)となるとそういったものが一切見られなくなる。これは本では読めるけれど、映像では見られないタイプの物語だな、と、起きてからようやく思う。

でもものすごく面白い本です。あまり難しいことを考えず読むのが良いと思う。難しく考えなくてもなぜか心の奥底に、重たいものが残る本。

さて、そんなわけで重たいままの身体をなんとか起こし、それを軽くするためにも走る。こちらに来てからなぜか走るハードルは少し低くなった。こどもたちの学校が休みということもあるかもしれない。(タイムリミットがないので少しゆっくり寝られる。)朝の時間帯の気候がちょうど良いというのもあるかもしれない。

あとはホテルの1階の部屋なのですぐに外に出られる、というのも大きい気がする。マンションって、エレベーターに乗って外に出る、というその一連の流れのハードルが、一軒家よりもどうしても高くなる気がするのですがどうだろう。

まあそんなわけで、起きて顔を洗って比較的すぐ、外に出て走り始める。

ところが今日は道を間違ったらしく、遠回りしていつもの橋にたどりつく。まあ、距離が伸びる分にはいいのだけれど、今日はやたら気温が高い。毎日少しずつ走る時間が遅くなってしまっていたので、日も上がり始めてしまっている。あっつい。落ちる汗を拭いながら走る。

この道を走るのも、とりあえず、今日までだ。私はここをまた、去る人だ。でもいつかここに住むことができたら、と、思っている。

「移り住み」と、村上春樹は言った。私はいつも旅に「使いみちのない風景」という本を持っていく。何度も何度もそれを読み返す。私の心のどこかに潜む、その使いみちのない風景を思いながら。

旅と人生はいつも、思い通りになんてならない。ものはなくなるし飛行機は遅れるしヤクルトは負ける。だけどきっと私はまた、旅に出る。ここに当たり前にあるのに、いつも自分の周りにはないものを、そっと求めて。

5/7(金)

昨日夜遅くに自宅に戻ってきたため走らず。まあいつもの連休よりは走ったということで良しとしましょう。また来週からいつものコースのランニング、がんばります。

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