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【9/29広島戦○】ぐっちを応援できた時間が、宝物だ

息子が学校へ出ようとする直前に、ぐっちの引退のニュースに気づいた。「うそぐっち引退って…」と絶句する私に「え…ほんと?」と、息子が心配そうに言う。学校を出る直前の時間には、できるだけ動揺させるようなことを言わないでおこうといつも思っているのに、さすがについ話してしまったことを反省しつつ、「いつか来るって、それは今年かもって、いつも思ってたけど、やっぱつらいね」と、言いながら送り出す。

自分のnoteを、「ぐっち」で検索してみると、あほみたいな量の記事が引っかかった。「ほんとうに好きなものについて書く」というのは、難しいといつも思っているのに、それでもやっぱり、好きなものについては書かずにはいられないみたいだ。

消化できない気持ちを抱えながら、一つ一つ記事を読み返していると、なんだか少しだけ、気持ちが落ち着いてきた。私はなんでもすぐ忘れていってしまう人間だけれど、書くことで、その時の、その瞬間の気持ちを残し続けていた。ぐっちがヒットを打った日、お立ち台に上がった日、ホームランを打った日、チャンスで打てなくて悔しがった日、死球を受けた日、離脱した日、二軍で打ちまくった日、一軍に上がった日、そして日本一の瞬間、神戸でレフトを守った日。

それは、私がぐっちを応援してきた軌跡だった。ああ、こんなにいっぱい応援してきたのだ、と思った。ぐっちを見続けてきた、と。

好きなものについて書くというのは結構、難しい。好きであればあるほど。だけど振り返って今、その好きの気持ちを残していてよかったのだと、改めて思う。その感情の軌跡を。ある人にとってそれは写真かもしれない。ある人にとっては、心の中の記憶かもしれない。そして私にとってはそれは、書くことだったのだ。

「宝物」だとぐっちは言う。野球人生で出会った人たちはみんなすばらしく「宝物」なのだと。私はぐっちを応援できたその時間を、宝物だと思う。こんなにすばらしい選手を知って、そのプレーを間近で見て、応援できたそのことを。そして、いつだって言葉にならない感情を、なんとか言葉で紡いでいく、その原動力となってくれたことを。

今日もまた、ぐっちがいない試合が始まる。そこでは塩見が走り、コータローが打ち、松本くんも打ち、丸ちゃんも打つ。そしてオスナが逆転ホームランを打つ。新しい、若いヤクルトの姿が、そこにはある。

でも今のヤクルトは、「ぐっちがいたヤクルト」が作り出したチームだ。7年間、みんながぐっちさんの背中を見ながら、育ってきたチームだ。私はそのチームが、いつだって大好きだ。

ぐっちが去ったあとも、きっと私はヤクルトを好きでいると思う。いつか、ぐっちと一緒にプレーした選手がいなくなったとしても、たぶんそれでも。だけど、「ぐっちがいるヤクルト」を応援できた私のこの6年間(私がヤクルトを好きになったのは、ぐっちが来てくれたあとだった)は、特別だったのだと、そう思う。それはとても、とても幸せな時間だったのだ。

いつだってぐっちのその姿に励まされてきた。何度でも這い上がろうとするその姿に、背中を押されてきた。言い訳しない姿勢に、何度もはっとした。スポーツとあまりに縁遠かった私が、野球の素晴らしさを知ったのは、ぐっちがいたからだ。

今日、ぐっちがいない試合で、ヤクルトはしっかりと勝った。全然打てないな…と、やきもきさせながら、最後にひっくり返して、勝つところを見せてくれた。いつだってベンチから飛び出しそうな勢いで、先頭に立って喜んでいたぐっちの姿を思い出す。そしてそれは今、楽しそうにプレーしている若手たちに重なる。これからもこのチームが持つ空気が、ずっと続いてゆくといいなと思う。そしていつかまた、ヤクルトのユニフォームを着たぐっちに、会えるといいなと、そう思う。

それまで私も、ぐっちみたいにまっすぐ生きていよう。言い訳せず、まっすぐに。


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